短編 都市伝説

ジンクス

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私の通っている大学で体験した恐ろしい話です。

ある時、学内にあるリフレッシュスペースという休憩室のような部屋で、私は友人の加奈子と共に提出期限が明日に迫っているレポートを必死で書いていました。

しかし、予想以上に手こずってしまい、気がつけばすっかり日は暮れて、リフレッシュスペースには私と加奈子しか残っていませんでした。

二人で雑談を楽しんでいるうちに、よくあるパターンで雑談はいつの間にか恋愛話になっていたのですが、加奈子が突然こんなことを言い出しました。

「先輩が教えてくれたんだけど、誰でも恋愛が必ず成功するジンクスがあるんだって」

ジンクスという単語はマイナスの意味で使われるほうが多いんじゃないか?という疑問がありましたが、愚直ながら誰でも恋愛が成就するという内容に興味を引かれ、加奈子の話に聞き入っていました。

「7号館の近くにある表現棟って知ってる?体操部が活動しているところなんだけど、あそこにある人体模型に願い事をすればいいんだってさ」

学校にまつわる噂話は色々と聞いていましたが、その話は初耳でした。

人体模型なんかに神頼みのようなマネをするのは想像するだけで滑稽でしたが、その場の雰囲気もあって加奈子と表現棟に行ってみることになったのです。

表現棟は学内のどの建築物よりも古めかしく、地震が起きたら簡単に崩れてしまいそうな感じでした。

加奈子の方を見ると、先ほどの恋愛話でのテンションの高さが嘘だったかのように黙り込み、表現棟の二階のある部屋をじっと見つめていました。

さすがに気味が悪くなってきたのですが、加奈子は「行こう」と言うなり表現棟にスタスタと入っていきました。

しかし私はその時の加奈子の後ろ姿を見て、とても不気味な感じがしました。

既に階段を上り始めていた加奈子に、「怖いからやっぱり帰る」と告げると、加奈子は

「わかった、じゃあね」とだけ返事をして、さっさと上ってしまいました。

私は外で待っていようかとも思いましたが、そこにいるだけでも嫌で仕方なかったので加奈子にリフレッシュスペースで待ってるという旨のメールをしました。

30分ほど加奈子が戻ってくるのを待っていましたが、なかなか帰って来ません。

加奈子は多少ルーズな面もあるので、表現棟を出て違う所に行っているのかもしれないと思い、今どこ?とメールをしてみました。

すると、すぐに返信がきました。

《全然ダメみたい、説得できなくて……あんたも早く来て手伝ってよ》

文意が掴めない内容でした。肝心な場所についての答えがありません。

私はそのおかしなメールが怖くなって、

「すぐに戻ってきて!リフレッシュスペースにいるから」と加奈子にメールしました。

すると返信が。

《すぐには戻れないよ、説得に時間が掛かるから。表現棟の二階だから早く来てよ》

……恐ろしくて体が震えてきました。

話は通じているけど、明らかに言ってることがおかしい。

冗談で私を怖がらせようとしているのかと疑いましたが、文面にはいつものふざけた感じが全くなく、サークルや仕事での事務的なメールを受信した時と似ていました。

加奈子は人体模型を説得するのに手こずっているから私の手を借りたい、と言っているのだろうか。

私は《もう帰らなきゃならないからごめんね。また明日》とメールを送り、それ以上は深く考えないようにしました。

その後、加奈子からメールは来ませんでしたが、翌日、学校に行くと加奈子はいつも出席している1コマの講義にいませんでした。

心配した私は、加奈子の携帯に

《大丈夫?昨日あの後で何かあったの?》

とメールを送りました。

返信はすぐに来ました。

《ちょっと体調崩して家で寝てるだけだから平気だよ。気遣ってくれてありがとう》

普通の反応に安心しましたが、立て続けに加奈子から2通目のメールが来ました。

そのメールを見て、私は加奈子に返す言葉が見当たりませんでした。

《実は今朝、彼氏が自殺したんだ。今も警察とか色々大変みたい。意味分かるよね?説得できたんだよ、すごいでしょ。私自身が怖いくらいだもん》

それ以来、加奈子とは一度も関わりを持たないようにしています……

(了)

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