石じじいの話です。
131 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/11/20(金) 13:25:22.43 ID:HcO4NhD40.net
じじいは一人息子でした。
当時は一家族に子供が非常に多かったのですが、じじいの家は例外でした。
それで貧乏だったのか、貧乏だから子供を多く持てなかったのか?
じじいが子供の頃といいますから、かなり昔。村には電気も水道もガスもありません。ラジオもなかったそうです。
村のなかの一軒の農家が山際にありました。
それほど田畑を所有しているわけではありませんでしたが、かなり裕福だったということです。
その家は集落の他の家とあまり交流せず、親からもあまり行くなと子供じじいは言われていたそうです。
或る日、じじいは山で遊んで、その家の裏山に下りてきました。
そこから、その家の奥座敷(北向きの部屋)の障子が開いているのが見えました。
そこには、じじいよりも二つ三つ年上の女の子が、寝間着を着て座っていたとのことです。
じじいに気がついたその女の子は、手招きをしてきました。
親の言いつけを思い出して躊躇したのですが、じじいは部屋の前に近づきました。
女の子はじじいに、どこから来たのか?と尋ねて、のどが渇いていないか?と問うて、甘い飲み物を勧めてきました。
じじいはそれを美味しくいただいたそうです。
彼女が自分の事を説明するに、
「自分は病弱で外に出られない」「こうして毎日、小さな裏庭と山を見ているのが唯一の楽しみだ」と。
彼女はやせていて顔色も悪かった(紙のように白かった)ので、さもありなんとじじいは納得しました。
それからたまに、彼女のところへ裏山からいくようになりました。
その家の人はじじいが「通ってくる」ことを知っていたのかもしれません。
別の日、じじいが彼女と話をしていると、彼女はいきなり激しく咳き込みました。
近づいて懐抱しようとするじじいを手で制して彼女は咳き込み続け、
その後、げほっ!と大きく咳をすると、何か小さなものをはき出しました。
それは、小指の先ほどのもので、畳の上をころころと転がりました。
じじいの方に転がってきたので、それをよく見てみると、それは青い丸い石でした。
ものすごくきれいだったといいます。
落ち着いた少女は、ちょっとほほえみながらその石を拾い上げて懐紙にくるみ、座机の上に置いたそうです。
「こんなことがよくあるの」
その後も彼女は、話しているときによく咳き込みましたが、毎回必ずなんらかの「石」を吐いたそうです。
吐く石の色は青、緑、赤とさまざまでした。
さらに、あるとき、「黄金」を吐いたそうです。鈍く輝く金色の小さな塊です。
そのような「黄金」を吐くことはよくあったと。
彼女はじじいが話す外の世界の話(村や町、野山の様子)に楽しそうに耳を傾けていました。
彼女は当時では珍しい本をたくさん持っていて、それを読み聞かせてくれたそうです。
じじいは兄弟姉妹がいなかったので、彼女を姉のように慕いました。
じじい、ガキのくせに「恋」しちゃったんですね。
彼女は「いつものようにw」吐いた、きれいな金色の石をじじいにくれました。
「親切にしてくれたから、これをあげる。お金になるから、こまったら売ったらいいわ」と。
或る日、彼女が激しく咳き込んだときに、家の人がふすまを開けて部屋に急に入ってきました。
じじいは部屋に上がり込んでいたので、ばつの悪いことこの上なし!
しかし、家の人はじじいをとがめもせず、少女を懐抱した後、白米のにぎりめしを持ってきてくれて、じじいに食わせてくれたそうです。
そのことがあってから、なんとなくじじいは彼女のところに行きづらくなったということです。まあ、子供ですからね。
彼女は家から全くでなかったので、じじいが訪ねていかないと会うことはありませんでした。
そうして半年ほど過ぎた時、じじいが尋常小学校にあがろうというときに、その彼女が死んだということが親から聞かされました。
じじいは喪失感と深い悲しみに襲われて、山に走り込んで泣きに泣いたそうです。
そのあと彼女の家に行きましたが、座敷のは雨戸で閉ざされていて、そこの主がいなくなってしまったことを痛感しただけでした。
「からだから石がでるとはのう……いろんな石がのう……ふしぎなことよのう」
じじいは遠くを見ながらつぶやくように、その話を締めくくりました。
「さあて、どらいぶはおわりじゃ。もうかえらんと、くろうならい。またのせちゃるけん」
じじいは8000円トラックの助手席のドアを勢いよく開けましたが、ぐぎごっ!という音がしてドア全体が外れました。
ドアのない車に乗ったのは、そのときが初めてでした。