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死神停留所の幽霊バス|大幽霊屋敷~浜村淳の実話怪談27

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第27話:死神停留所の幽霊バス

京都市はバスとタクシーの利用者が多い町だ。

特に、他の都道府県に比べバスの利用度は高いように思う。

全国各地から観光に来た人も、京都市営バスを利用される方は多いだろう。

薄いグリーンのボディーのワンマンバスは、京都の顔でもある。

各々のバスの前、後ろには番号がふってあり、その番号を見て確かめれば様々な観光名所に行くことができるのだ。

”観光地”

”いにしえの都”

そういったイメージを持つ華やかな京都にも、裏の顔は存在する。

無数の心霊スポット……怪奇現象の起こる寺……そして妖怪伝説……

それでは魔界とも呼ばれる京都にて一人の青年を襲った、恐ろしい出来事をお話しよう。

その青年は私の友人で、京都市のある街で下宿生活をしている大学生だった。

入学当初はどこに行くのもバスを利用していた。

しかししばらくすると、もっぱら原付バイクを使うようになっていた。

先輩に言われたように、京都はバスも便利だけど、原付バイク程重宝するものはないというからだ。

渋滞の網をくぐって、買い物、通学などなんでも手軽にこなす。

そんな彼は、京都では珍しくない普通の学生だった。

その夜、彼は原付バイクで河原町での飲み会に出かけた。

河原町は居酒屋やカラオケボックスが立ち並ぶ、学生たちの天国である。

彼はみんなと待ち合わせのあった居酒屋でだいぶ飲んだ。

お開きの時間がきた。

彼はまだ少し酔っていた。

そのままバイクを運転しては帰れそうになかった。

事故を起こさぬためだ。

友人と一緒にカラオケボックスやゲームセンターへ行って時間をつぶし、酔が覚めるのをしばし待つことにした。

三時間くらい経過して彼の気分もすっきりしてきた。

顔のほてりもとれ、クラスメイトと明日の授業の話などを出来るようになったころ、時刻はすでに3時をまわっていた。

それじゃあまたな、と彼は少々急ぎ足で河原町を後にした。

夏とは言え深夜は夜風が寒い。

そんな京の夜道を一人、原付バイクで走る。

暗い夜道に彼のバイク音だけがこだましていた。

そうしてしばらく走っていると、彼はあることを思い出した。

こんな真夜中に、学生の間では『出る』と騒がれている”D寺”の横を通らなければいけない事だ。

「嫌だな……行きはよいよい、帰りは恐いかぁ……」

と彼は心の中で思った。

しかし下宿へ帰るにはそこを通らなければならない。

問題のD寺の塀が見えてきた。

思い切って寺の横丁の路地へ曲がろうとした時、寺の前のバス停のベンチに一人の男がぼんやり座っているのが見えた。

もう停留所の電灯も消えている……

そんな暗い停留所に一人じっと腰掛けているのだ。

「変な奴……こんな時間にバスなんか無いのに……酔っぱらいか?」

と彼は思いながら、ちらりとその男を横目で見た。

するとその男がジーッと彼を凝視してくる。

彼のバイクからその男が座っている場所までは、いくらか距離がある。

しかし彼は、まるでその男が真正面にいるように、強い殺気を感じた。

その男は、ひげ面の30ぐらいの男だった。

頬骨がやけに出ている。

口を閉じているのだろうが、二本の大きな前歯がのぞいている。

笑ってるのか怒ってるのか、なんともわからないような表情だ。

そして目が……真っ白なのだ。

黒い瞳の部分がないのだ……

しかし、こっちをじっと見ているというのがわかるのはなぜだろう……

「ひいいっ……気持ち悪い野郎だ……早く行こう」

彼はアクセルを少し絞り、路地へ入っていった。

ところがである。

確実にその場から離れていくのだが、彼にはまだ後ろからあの男が凝視しているような気がしてならない。

ちらりと後ろを振り返ってみた。

後ろにはなにもいない。

彼はまた進行方向へ首を向け直した。

前方には暗い路地がどこまでも続いている。

そしてそれと同時に彼は妙なことに気づいた。

ベンチにいた男の凝視する真っ白い目。

その目が彼の視界を遮るのだ!

離れてくれないといったほうがいいだろう。

彼の目の前に、ずっとその”白い目”が張り付いている!

それはまるで、暗闇で急に眩しい光に遭遇した時の現象に似ていた。

光が消えさったあとも、視界には光の幻影が残る……

彼は目をこすりながら、バイクを走らせた。

そして5分程走っただろうか、前方にあるはずの無いものが見えてきたのだ。

なぜかそこには、またバス停があった。

大通りならまだわかるが、こんな路地にバス停があるはずがない。

それに彼は今走っている道を熟知している。

「なんで、こんなとこに……」

そしてベンチが見えてきのだが、なんとそのベンチにはあの男がポツリと座っている!!!

そしてジーッと、彼を見ているのだ!!

「うわああーっ!!!!!」

彼はパニック状態だった。

彼は急ブレーキをかけた。

その場を通りすぎたかったが、その男がバイクに飛びついてきそうで恐かったのだ。

そしてその停留所の少し手前にバイクをとめた。

するとその男がスックと立ち上がり、彼にこう言った。

「もう……バスがクルゾ……バスがヨォ……」

呆然と立ち尽くす彼。

すると路地の向こうから、何かが走ってくる。

バスだ!!

無灯火、そして無人のがバスが、猛スピードで彼の方に走ってくるのだ。

彼にはそのバスには運転手が乗っていない事が一瞬でわかった。

バスの中も真っ暗である。

そんな不気味なバスがすごいスピードで彼の方に走ってくるのだ!!

バスは彼の目の前まで来た!

「ぶつかるっ!」

そう彼が思った時、そのバスは彼のバイクにぶち当たる直前で、スウっとかき消すように消えてしまった。

不思議なことに、あの男とバス停も消えていた。

彼は酔ってなんかいなかった。

意識ははっきりしていたはずだ。

幻覚を見たとは思われない。

彼は恐怖のあまり家へフルスロットルで帰り、布団をかぶって横になった。

しかしその晩、彼は突然の高熱にうなされつづけることになった。

明くる日、彼は学校には来なかった。

気になった私は、前日の飲み会の写真を現像した帰り、様子見がてら彼の下宿に寄ってみた。

私は一晩高熱と戦ってグッタリした彼から一部始終を聞いた。

彼の表情は真剣そのものだった。

しかし、ふうん……と私はあまり相手にしてなかった。

「無事に帰ってきてるから、それでいいじゃないか」

私は彼にそう言った。

私は、何枚か彼の写っている写真を渡して、すぐにそこを後にした。

家に帰ってきた私は、昨日の写真を一枚一枚見ていた。

そして、一枚の写真に背筋を凍りつかせたのである。

一見それはなんでものない普通の写真のように見えた。

ゲームセンターで撮った写真だ。

彼がVサインをしてゲーム機に座っている。

その後ろはガラス窓になっていて、向こうの大通りが写っていた。

そこである。

そこに彼の話していたあの男が写っていたのだ。

それは、彼が言っていた特徴通りの風貌だった。

その白目の男は、無表情で、大通りの壁から浮き出るように写っていたのだ!

私は、とても嫌な予感がしたので、彼の家に電話しようと居間を出た。

すると、逆に私の電話が鳴った。

私のグループの仲間からだった。

「落ち着いて聞いてくれ。今さっき連絡が入ったんだけど……あいつ……バイクで病院へ行く途中、バスと正面衝突して死んじまったらしいんだ……」

「!!」

後で聞いた噂では、死者だけを乗せてあの世へ連れ去るバスが、この京都を走っているらしい。

何かの間違いで幽霊バスに乗車したら、二度とこの世へは帰れないらしいのだ。

現世の人間には見えるはずのないそのバスが、ふとしたはずみに見えてしまう空間、時間がある。

彼は、望まざるもそのバスに乗車してしまったのだ……

[出典:大幽霊屋敷~浜村淳の実話怪談~]

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