同僚の奥さんがそこそこベテランの看護師さん
83 :病院の名無しさん:2019/08/07(水) 19:43:01.42 ID:d75bCX6q0.net
飲み会とかにも顔を出すので聞いた話をかなり脚色して書いてます。
病室
誰もいない病室からナースコールがかかるのはよく聞く話だけど、何も鳴ってないのに同僚が慌てたように飛び出していく事がある。
で、青い顔色で戻ってきて、何があったのか聞いても「別に」とか「トイレ」とかしか言わない。
彼女自身が心療内科で診てもらった方が良いと思う、と言ってた。
便所1
入院病棟は便所がナースセンターから見える場所にあるんだけれど、夜中に患者さんが入って行ってなかなか出てこない。
仕事なんで仕方なく様子を見に行くと誰もいない。
便所2
入院病棟の便所のある一室のドアにときどき赤いマジックか何かで『アケルナ』と書いてある。消しても、忘れた頃にまた書いてある。
まあこれはオカルトとは違うけど。
霊安室1
スズメバチに刺されて亡くなった患者さんがいて、もう亡くなっていてすぐに霊安室に行ったのだけれど、
しばらくの間スリッパのようなもので壁を叩く音が聞こえていた。
霊安室2
ご遺体が時々寝返りをうつらしい。
心電計
完全に亡くなった患者さんなんだけれど、他の急患が入ってバタバタしていたので心電計を外すのを忘れていた。
後でたまたま記録を見たら、時々だけど反応があった。でもとても身体機能を維持できるレベルではない。
慌てて先生に報告したら、困ったように「ああ、時々あるんだよね」「なんていうか、死んだ事が自覚できてないっていうか。みたいな」
患者
ある暴力団の幹部だか組長だかが入院していて、こういう場合アニメとかだと組員が廊下で見張ってるんだけど、実際ザルなんだそーだ。
行ってみると分かるけど病院って部屋が分かってればほぼフリーで行けるし、素人は「病院だから安全」って思ってるからね。
で、被害者の遺族かその関係者か知らないけど病室に侵入されて、まあ、リンチされたらしい。
個室だったから他の目も無かったし。
口をガムテープでぐるぐる巻きにされて声を閉じられ、色々されたらしい。
これもオカルトではないな。
窓
病院の窓は全然か、ある程度以上には開かないようになってる。
これはホテルとかも同じなんだけど飛び降りるのを防ぐため。
でも、どうやってもすり抜けられないはずの隙間をくぐりぬけて飛び降りた患者さんがいたんだって。
最終的にあまりにも説明がつかないから屋上から飛び降りたという事にしたんだけれど、屋上へのドアの鍵は閉まっていた。
かつら
かつらの患者さんの脳外科手術があって、当然かつらを外して処置したんだけど、手術後にいくら探してもそのかつらが見つからない。
まあ謝ればいいや。命の方が大事なんだし。てことで済ませたんだけど、次の巡回でまだ全身麻酔で寝てるのにかつらをかぶってた。
湯沸かしポット
看護師だって病院で12時間以上(へたしたら24時間以上)働くわけだから腹もすくし喉も乾く。
その病院にはコンビニも併設されてるんだけど、湯沸かしポットひとつあると何かと便利。
で、ある日コーンスープにお湯を注いでいると、なんでかコーンスープの色がオレンジ色に染まっていく。
ポットの蓋を開けると真っ赤。匂いを嗅ぐと明らかに血の匂い。(彼女は吸血鬼ではないが)
便所3
その病院のトイレは手をかざせば水が出るタイプ。
なのに時々蛇口を回す音が聞こえる。
便所4
その病院には旧館があって、今は立て替えられたんだけど昭和の後期までなんとボットン便所だったらしい。
立て替えられるぎりぎりまで建物自体は使われていたんだけど、トイレだけ平成に入る前に水洗になった。
まあ衛生上の問題だと思うけど、何かあったんじゃないかと彼女は言う。
便所5
今言った旧館なんだけど、1フロアだけ男便所しかなかったんだって。
女便所もあるにはあったんだけど封鎖されてたらしい。「何かあったらしいよ」と、先輩から聞いたって。
ナースコール
ワンカップ大関みたいなああいう小さなプラスチックのカップ、
あれの蓋に穴を開けて、その穴からナースコールのボタンを入れて閉じ込めてるのを新入りの時に見たんだって。(要するにボタンを押させないように)
ベッドは空だったそうだ。
堕胎
あんまり話したくない話だけど、病院だからそういう事もあるよね。
で、私は専門家じゃ無いからどの程度なのか分からないけど、そこそこ育っていた赤ちゃんを、まあ、あれです。
でその後数時間して妊婦さん(元)が凄く痛がりだして、エコーで調べたら、腹部に小さな手の形がうっすらと見えたそうです。引っ掻くような形で。
全身麻酔
全身麻酔ってリスクがあるから身内の同意書が必要なんだって。(それ言ったらどんな手術でもリスクあるやんけ)
で、手術予定なんだけど本当に天涯孤独な患者さんがいて、
本人の蓄えは充分にあったんだけどサインを貰う相手がいませんて言ったら、
先生は立場上「友人でも構わないので誰かにサインを貰って下さい」て言うわけ。
いくら親しい友人でもそんなサインできるわけないやんけ。
かなり遠い親戚なんかいきなりそんな話されてサインできるか?
結局この患者さんは自分の生命保険の受取人をいわゆる街金業者に渡す条件(プラス手数料)でその業者にサイン貰った。
今だったらそういうの専門にやってる会社あるんだけどね。
あ、これ全然オカルトじゃないわ。
中庭
その病院は結構立派な病院で、一番新しい棟(元旧館)には小洒落た中庭がある。
中庭なんでそんなに風が吹き込むとも思えないし、入ったとしても巻き上がるみたいな感じになるはずなのに、なぜか落ち葉が一か所に集まるんだって。
まあ掃除には都合良いだろうけど。
エレベーター
病院のエレベーターというのは遅い。
これは車椅子だとか、あの、人を乗せて運ぶカートみたいなやつとかを使うのに危険があってはいけないからで。(そのくらいは私も分かる)
ただ、ときどきすごく速く動く事があるらしい。
そういう時はいつも中の患者さんが亡くなっているらしい。
コンビニ弁当
これ全然オカルトじゃないから。
その病院にコンビニが併設されてるのはどこかで書いたけど、お弁当の種類がカレーとかペペロンチーノとか匂いのきついものばっか。
聞いたら、「匂いでごまかさないと食欲なんて出ない」とのこと。
「ハンバーグとかオムライスなんて論外」ベテランでもそんなもんなんですね。
ミニカーのお見舞い
40代くらいの入院患者さん、どうしても道路が見える窓際のベッドが良いとの希望で、部屋を調整してあげた。
で、一日中窓から道路を見下ろしている。
「お、スカジーじゃん、懐かしいなあ」「ビートルかあ、好きな人は今もいるんだなあ」話を聞くと無類の車好きで、ミニカーも集めていて20年以上になるという。
ある日雑務で病室に入ったら
「うおおおおおおおっ!!!」
びっくりして「他の患者様もおられますので」
「あ、すいません」目を潤ませて「でも、2000GTですよ、トヨタの」「現役で走ってるのなんて見た事ない」
見ると、確かにスポーツカーみたいな車が病室の下で少しアイドリングして走り去っていった。
大声を出したのは"2000GT"の時くらいで、ほとんどおとなしく道路を見ているだけの手のかからない患者さんだったので好きにさせておいた。
時間が空いた時に一緒に道路を見ていると、消防車が病室の下で止まった。「え...?」でもすぐに走り去っていった。
「やっぱ日野は渋いよね」
今度はブルドーザーを乗せたでかいトラックが止まった。ですぐに走り去った。
「コマツはやっぱかっちょいいよね~。でも高いんだよね」買う気かい!
窓から見下ろすと、車はちょうどミニカーくらいの大きさに見える。
「お見舞いに来てたのかな」
階段
病院の階段って絶対手すり付いてますよね。当たり前だけど。
で、夜に階段を下りている時に、念のため手すりを持って降りてたんだけど、突然手すりがグニャッと曲がって危うく転げ落ちそうになったんだって。
タクシー
足の悪い患者さんとか多いので、病院の前には常にタクシーが何台か客待ちしてます。
彼女の同僚が、疲れていたのでたまたまタクシーを使ったのですが、信号待ちの時に
「お姉さん、今日はすぐに家に帰らない方がいいと思うよ」
「人の多いとこ、居酒屋でもパチンコでもいいから少し時間つぶしていったらどうかな」みたいな事を言われたそうです。
警備員
結構大きい病院なので大きな建物が3つあって,病棟と病棟の間に道路があって、
警備員というのか、まあ、交通整理をするおじさんがいるんですよね。
で時々、ポケットから数珠を出して空を見上げて手を合わせるんだって。
「まあ、そういう時はたいがい単なる老衰か突然死だけど」
で彼女が、「じゃあ不審死の時は?」って聞いたら
「わしは知らんよ。わしの責任じゃないから」
手術室
新人の頃に夜、手術室の近くを通ったら
「頼むから、せめて麻酔を打ってくれえ」
という悲鳴みたいなのが聞こえたそうだ。
時間的にオペが入ってるはずもない。
怖くてとても近寄れなかったので翌日同僚が出勤するのを待って、適当な理由でその手術室に一緒に行ったんだけど、別に何の変哲もなかった。
ホスト
彼女ではなく彼女の知り合いの脳神経外科の看護師の話。つまり又聞き。
ある診療内科の町医者の紹介状を持った男性患者が来た。
いわゆるセカンドオピニオンってやつ。
セカンドオピニオンって診察料高くなるし、それより心療内科からいきなり脳神経外科ってどういう事よ。
まあ、ホストで稼いでるのでお金的には困ってないみたいな事を自慢げにちらっと言ってた。
相談内容というのは、端的に言うと「幽霊が見える」という事。
血液検査の結果を見ると肝臓の値が猛烈に高い。
もうこれはアルコール依存による幻覚以外のなにものでもないって、医者でない彼女でも思ったそう。
「ただ」と彼女は言ったそうだ。
「待ってる時間、凄くしんどいから点滴お願いしますって言われて、先生の許可取って、診察室の隣にあるベッドで点滴してたの」
「で、診察の時間になったからカーテン開けたら、見たのよ」
「点滴のチューブがひとりでに動いて、すぽっと抜けるのを」
変な患者さん
同僚から「あの患者さん変だよねえ」という話を振られて、彼女自身そう思っていたので黙って頷いたそう。
何が変かと言うと、6人部屋なのにその患者さんが窓際の片側に居るだけで、他は誰もいない。つまり独占状態。
そんなに寂れた病院ではないし、他の部屋は満室もある。
その患者さんは別に暴れたり喚いたりするわけではなく、ほとんどの時間カーテンを閉めて眠ってるだけ。
ただ、巡回の時にちらっと見るとカーテンを開けて誰かとしゃべってたんだって。
何もない空間に向かって。
うろ覚えなんだけど「悪かったねえ。やっぱりあたしの方が死んだ方が良かったんじゃないか」みたいな。
救急車の幽霊
その病院の本館(元旧館)とB棟は2階部分で渡り廊下で繋がっていて、片側からは中庭が、反対側からは街が見える。
で、その病院は救急外来もあるんで、たまに救急車が入って来るのも見える。
ある時救急車が見えたんだけれど、ピーポー音を鳴らしていない。
単に通っただけなのかと思ったんだけど、外来入口に入ろうとして、そして、そこで消えた。
水虫
水虫とは関係ない話なんだけど、心療内科の友人から聞いた話。
ある患者さん、足の中に虫がいて痒くてたまらないという。
で、皮膚科を紹介する手もあったんだけど別に処方箋を書くくらいは構わないので痒み止めの軟膏を処方してあげたらしい。
心療内科に来る人っていうのは思い込みで言い張るだけで、何か対処してあげれば安心して収まる事が多いらしいから。
でもその患者さん、また来たの。車椅子で。
足を見るとバッサリと裂けた傷口だらけ。
「いくら探しても見つからない」って。
看取り
まあ職業が職業なので患者さんを看取る事は当然ある。
何度も体験して、気付いた事があるそうだ。
親族が何人か来て立ち会う場合もあれば、誰も来ない場合もある。
そういう時は、霊安室に運ぶカートがやけに重いそうだ。
胆石と尿道結石
これはぜんぜんオカルトではないどころかほのぼのした話。
たまたま、胆石と尿道結石の患者が手術待ちで同じ部屋に入院した。(厳密に言うと尿道結石の方は手術とはちょっと違うらしいけど)
そして何故かその晩にほぼ同じタイミングで発作を起こした。
胆石も尿道結石も私は知らないんだけど、想像を絶する痛みらしい。
立っている事も寝ている事も座っている事も何もできなくて、ひたすら神を呪いながら(あるいは救いを求めながら)タオルで脂汗を拭って痛みが治まるのを待つんだって。
で、ナースコールで彼女が飛んで行って見たら、二人がベッドの下にへたり込んんで抱き合ってたらしい。
お互いの汗を拭きながら「痛い、痛い」「私だって痛いのよ」とか言ってるの。
胆石にしろ尿道結石にしろ、痛み止めの点滴を打って、本人の身体が痙攣を収めるか石を排出するのを待てばいいだけなんで、当直の先生にすぐに対処してもらった。
数日後両人とも退院したんだけど、半年ほどして彼女に挨拶しに来たんだって。「結婚します」って。
生まれる子供は二重苦を背負うわけか...
歯医者
歯医者と医者は資格が別で、歯医者は歯以外の治療をしちゃだめなんだって。
でも"歯医者競合区"みたいなところがあって、ある歯医者が患者が少なくて内科診療をこっそりしてたそう。(明らかな違法行為)
でもわりと固定客(変な言い方だ)がついてた。
なんでかと言うと、歯医者は処方箋を出さずに自前で薬を出せるんで、お客にとっては手間が省けるのでありがたかったんだと。
で、ここからが本編。
ある患者さんが急患で担ぎ込まれてきて、まあただの盲腸炎だったのですぐにオペを始めたんだけど、
メスを入れたら患者さんが悲鳴をあげたの。麻酔はかけてたのに。
後から分かった話なんだけどその患者さん、偏頭痛と不眠症を患っていて件の歯医者から薬を貰いまくってたんだって。あとアルコール中毒。
どれも使用しすぎると耐性がついてしまって、身体が通常の薬では受け付けないような状態に進化(?)するんだそうな。
過剰に薬に依存するのはやめましょう。
あ、ちなみに手術がどうなったかは彼女は話してくれなかった。
自販機
その病院の入院棟には自販機があるんだけど、なぜかお茶にしろジュースにしろ紙パックかカップタイプのしかない。
なんでペットボトルないんだろうって昔先輩に聞いたらしい。
先輩は、少し困った顔で「ペットボトルって透明なやつが多いでしょ」「その…液体を通すと見える事があるのよね。なんでか分からないけど」
待合室
ある日、待合室のソファーで比較的若い患者さんが横になって荒い呼吸をしている。
気にはなっていたんだけれども待合室には大量のジジババが居て、順番は順番なんで2時間くらい放置せざるを得なかった。
(むしろ小さい病院の方がそういう場合には融通をきかすらしい)
で、ようやく順番が回って来て耳元で名前を呼んだら
「あ、俺死んだんじゃなかったんだ」
結果はかなり危ない状態の肺炎だったそうです。
採血
採血するのはたいてい看護師の仕事。
ある患者さん、なかなか血管が見つからない。右腕も左腕も。
仕方がないので手のカバーを外して脈動を探しても見つからない。それに異様に手が冷たい。
患者さんの方が恥ずかしそうに
「あのー、いつも首から取ってもらってるんです」
見たところ極端なガリでもデブでもない。むしろアスリート体形。
首から採血なんて初めてなんで慎重に準備しながら、気紛らせに話しかけたそう。
「あの~。余計なお世話かもしれませんが、腕、診てもらったほうがいいんじゃないですか」的な
「ああ、よく言われますし自覚症状もあります」「なんていうか、血が届いていないんですね」
びっくりして「じゃあなんで動いてるんです?」
「気力で」
出産
普通はエコー検査で定期的に状態を確認して適切な指導をするんだけど、若い子なんかはぐずぐず迷ってなかなか病院に来ない事があるのね。
で、突然体調不良を起こして救急車で運ばれて来たりする。
ある年末の頃、かなり若い女の子が運ばれて来て、既に破水してた。
普通は子供の父親か、せめて保護者が付き添って来るもんだけど誰もいない。
職務上問いただすと、
父親はいない。親もいない。って言い張るわけ。
まあたまにあるパターンだし、かなり美人だったから(風俗だろなあ)と思ってたの。
でも保険証確認すると本人のもの。つまり、嘘をついていなければ被扶養家族ではなく自立してるって事。(まあこれだけ可愛けりゃいくらでも客は付くと思うけど、せめて避妊しなよ)
あと名前が"浅野マリア"(仮名)だったので、ああ、ハーフだから美形なんだって思った。
で、色々雑務をこなしてる合間に様子を見に行ったら、お腹が平らになってる。
え!?「赤ちゃんどうしたの?」
「もう済みました」
なんだよそれ、ベッドはそれほど汚れてないし、まさかトイレでやったんか?
すぐにトイレを調べまくり、同僚にも手伝ってもらって部屋の中もフロア中のトイレを調べたんだけどそれらしい形跡がない。
本人に問いただすと
「息子は為すべきことをしに行きました」
なんだよそれ、あ、今日クリスマスか、おいおい
「想像妊娠自体珍しいけど、あんな想像妊娠見たことない」彼女は言ってました。
右腕
人間ドックで一泊してる患者さんが左手で食事してて、
ああ左利きなんだな、と思ってた。
でも細かいものを摘まむときには右手に持ち替えるんだよね。
両利きか?器用やなあ、って思って、世間話のついでにさりげなく聞いたら
「近々右手を失う予定なんで、訓練してるんです」
胎児
若い妊婦さんが早めに定期健診来てたんですね。良い事です。
で、双子だったの。
すごい喜んで、さっそく旦那と名前考えます。とか話してたの。
でも次の検診の時、片方の子が小さくなってたのね。
これは"ヴァニシングツイン現象"と言って、妊婦の栄養が二人分の胎児を育てられない時に、片方を母体が吸収してしまう現象で、本人が気づかないうちに済んでる事もあるからすごく珍しいケースでもないのね。
でもその妊婦さんすごく落ち込んじゃって
「わたしがデブじゃなかったのが悪いんだ」とか言い出すの。
いやいやそれで充分きれいだし、初産なんだからこういうことはよくあるから、みたいに必死に慰めた。
ちなみに双子(元)は姉妹だった。
それで、なんとか頑張って出産を終え、退院する時にぽつぽつと話し出した。
「二人の名前を考えていたんですが」
「はい」
「一人は"さくら"」「でも、もう一人の名前、どうしても思い出せないんですよね」
その時彼女の頭にある単語が浮かんだそうだ。
「もしかして、"もみじ"じゃないですか」
「・・・!」顔に驚きと涙が滲んだ。
彼女曰く
「私別に霊能者でもなんでもないんだけど」「後で調べたら、"もみじ"の花言葉の中に"大切な思い出"っていうのがあった」
子供を背負った見舞い客
「私別に霊能者でもなんでもないんだけど」が彼女の口癖なんだけど、それにしては変なものをよく見る。
ある時、受付で何か聞いて入院病棟に向かった男性がいた。
普通にお見舞いだと思った。
がっしりした体形で長身、髪も長髪、着てるものも高級っぽい。ひと昔言った"ちょい悪オヤジ"って感じ。
ただ、背中に子供を背負っていた。
イクメンなら全然微笑ましいんだけど、背負い紐も無しで子供はしがみついている。
あ、水子だな、と思った。
ちょっと気になったんだけど、自分の仕事もあるし関わり合いになりたくなかったし放っておいた。
でも少し気になったんでそのフロアの同僚にさりげなく聞いたら
「ああ、堕胎したらしいよ」
その半年後くらいかな、またその男性を見かけた。
なんかずいぶん髪がうすくなってた。
で、両肩に二人の子供が乗って髪をむしゃむしゃ食べてた。
晴れ患者
「あの~、なんて言っていいのか分からないんだけど、来て欲しい患者さんがいるのよ」なんじゃそれ?
「晴れ女とか雨男とかあるでしょ。それに近いのかな、その患者さんが診察に来る日はスケジュールがきっちり回ってしっかり帰れるの」
「でもその患者さん、具合が悪くならないと来てくれないの」当たり前だ。
「その患者さん、なんとかうちに入院させられらいかな」
お前は何を言ってるんだ。
ホスト2
「前のホストとは違う話なんだけど」彼女は言う。
看護師の給料なんてさして高いものではない。
けれど基本、家と職場の往復だけなんで貯まるいっぽう。
中にはネットでブランド品を買いあさったり、周りの顰蹙の目をものともせず長期休暇を取って海外旅行に行く強者もいるけど。
先輩の1人が真面目な人で、次の師長候補くらいのベテランだった。
でも、ホストクラブに嵌った。
あるホストに入れあげて入れあげて、おそらく一千万以上はつぎ込んでたんじゃないかと。
そのホストも図々しい奴で、先輩の家(一人暮らし)に入り浸って、そして病院にまで通っていた。まあ肝臓が悪いのは分かるから内科に来てたんだと思う。そこまではまあ良い。(良くないが)
そして、先輩を使って薬の横流しをさせていた。
処方箋というものは先生以外絶対に作ってはいけない。(違法行為)
でも先生から事務局に渡る際に人手を渡る。そこを利用して、処方箋の指示書をすり替えていたらしい。
民間では入手困難な薬を格安で入手し、ネットで売りさばいていたんだと。
で、そのホストに入れ込んでいた(看護師ではない)別の女が、それを薄々気付いていて、ストーカーまがいの事をして証拠を掴み警察に通報した。
これは想像だけど、その証拠をちらつかせてホスト男を自分のところに呼び戻したかったんじゃないかな。
でもイザコザして、結果的に男の手は後ろに回った。
そして簡単にゲロしてしまい、先輩まで警察のお世話になる羽目になった。まあやっていた事は明らかな犯罪行為だけど。
男の方は前科もあって実刑。先輩は執行猶予だったけど、さすがに職場に居られず退職した。
長かったけどここまでが前振り。
これは奇縁というのか、彼女(先輩の方ね)の看護師学校時代の友人がある病院に勤めていて、同窓会的な場所で久しぶりに会ったの。
その病院は警察から委託されて死体の検死とかもやってる病院で、最近お世話したご遺体の話を話していて、件のホスト男だとすぐに気づいたんだって。
「あれはカマを掘られて抵抗して、リンチにあったんだね。でもあそこまで凄惨なのは見たことない」と友人。
「たぶん先輩の恨みが何かを伝ってその場に届いたんだね」と彼女。
女の恨みは恐ろしい。