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短編 山にまつわる怖い話

わらび採り【ゆっくり朗読】2700

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祖父は近くの山にわらびを採りに行くのを日課にしていた。

小さい頃は私も祖父と一緒に行ったりしていた。

中1の夏休みも祖父と一緒に山に行った。

その山には昔から神隠しがあるって言い伝えがあった。

そんな山に入るのは、当時の私にとっては怖いよりもわくわくするものだった。

祖父といつものように(といっても年に一、二回くらいしか私は行かないけど)奥に奥にわらびを求めて入って行った。

祖父は慣れた様子でぐんぐん奥に入って行った。

私はだんだん怖くなってきた。去年はこんなに奥に行っただろうか?。

私は祖父に、まだ奥に行くのか?と尋ねたら、祖父は大丈夫とだけ言ってきた。

元々無口な祖父だけど、それでもそのときはなんだかいつもよりそっけない気がした。

私は少し不安になりながらも祖父についていった。

けれど、いくら歩いても祖父は止まることがない。

私もだんだん疲れてきて祖父から離れそうになって、慌てて追いかけて、また疲れて離れてを繰り返していた。

とにかく祖父からはぐれないことで必死だった。

気が付くと、祖父も私も崖の上に立っていた。

祖父は崖に近づいていく。

私はハッとなって必死で祖父を止めようとした。

けれど、祖父は考えられないくらい尋常じゃない力で(祖父は小柄な方で力はあまり強くない)私を振り払おうとした。

私はとっさに持ってた水筒の冷たいお茶を、祖父に頭から思いっきり掛けた。

そうしたら、祖父はハッとしたような顔で私も見た。

祖父はなぜそこにいるのか分からないし、初めてきたところだとも言った。

正気に戻った祖父とともに私はあたりを歩きまわって、なんとか祖父が知っている場所まで行くことができた。

私たちはそのままわらびは取らずに祖父の家に帰った。

そしたら、母にかなりの剣幕で怒られて、そのあとすごく泣かれた。

私たちが山に入ってから丸一日が経っていたのだった。

けれど、私も祖父もせいぜい数時間程度だと思っていたから、それを聞いてすごく驚いた。

母は私たちがいなくなってる間、近所の人とともに、山とその周辺を探し回ってたのだった。

だけど、どこにも見当たらなくて警察に言おうとしていたところに、私と祖父が帰ってきたのだった。

もしかしたら私と祖父は神隠しにあっていたのかもしれない。

(了)

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