短編 山にまつわる怖い話

モスグリーンのジャンパーの男【ゆっくり朗読】2583

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春の新緑の中、単独で下山していました。

152 :04/01/23 15:25

山は登る時は意気揚々としていますが、下りは虚しいものがあります。

また、単調な下りは疲れるものです。ただ新緑の林の中を黙々と降りて行きます。

気づくと10メートル程先に、自分と同様に単独で下っている人がいます。

人間、単調な中にも目標があると元気づくものです。

よし、追いついて声をかけてみるか。と考え、ペースを少し上げました。

相手もそれに気づいて、ペースアップしたようです。

もう少しペースを上げてみましたが、相手との差は縮まりません。

とうとう疲れて立ち止まり、小休止を取ることにしました。

すると、前にいる人も休んでいます。

顔は見えないのですが、モスグリーンのジャンパーを着ている男性でした。

その時、以前誰かから聞いた話しが頭をよぎりました。

『山に住む霊に付いていくと行方不明になる』という話でした。

聞いたときにはバカにしていた怪談話ですが、このときばかりは、思い出した途端に全身から冷や汗が噴き出してきました。

とにかく出立する事にして、立ち上がりました。

前方のモスグリーンのジャンパーの男も、立ち上がって歩き出そうとしています。

前方の男を見ないようにして、歩き出しました。

1時間以上は歩き続けた頃、前方から人の声がしました。

一瞬ドキッとしましたが、見ちゃいけないと思い、なるべく下を見つめて歩き続けました。

声は段々近づいてきて、何を言っているか分かるようになりました。

どうやら、登山途中の二人連れが声を掛け合っているようです。

顔を上げて声の方向を見ると、ジャンパーの男ではなく初老の夫婦でした。

すれ違いざま挨拶を交わし、何人くらいの下山者と会ったか聞きました。

パーティーが二組、単独は自分が初めてと言っていました。

前方を見ると、もう誰もいません。

時計を見ると、最初にモスグリーンのジャンパーの男を確認してから、10分しか経っていませんでした。

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