短編 怪談

体育館にて

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尾瀬にて。

371 名前:本当にあった怖い名無し[sage] :04/08/06 22:43 ID:jXb56dEq

練習するため、宿から十分ほど脇道を歩き、

宿専用体育館の中で柔軟体操をしていたら(22:00頃)、

ジャリッ

という砂利道を人が歩いたような雰囲気の音がひとつした。

体育館までは、国道から脇道に至るまでが砂利道なので

後から同輩が来たのかな?ぐらいにそのとき思ったのだが

体育館に入ってこない。

だーれも。

怖いという気持ちはなかったので、今度は肘の柔軟をしながら、

体育館の入り口から外を見てみた。

誰もいない。

と。

今度は体育館の倉庫から音がした。

がたん。

ん?

眉をひそめながら、そのまま倉庫のほうを見ていた。

柔軟体操はもうやめだ。

蹴りの練習をしよう。

倉庫のある側の反対側にある壁鏡のほうに歩いていく漏れ。

観音開きの壁鏡の扉を開けた。

そのとき、その扉を開ける音に混じって背後から連続音がした。

ぎしっ。びしっ。きゅっ。

床を踏む音だ。

畳のある部分ではなく床の部分。

鏡に映ったその付近には。。。。何もない。

蹴りの練習をする前に基本の構えを確認し、ステップを軽く踏む。

力が抜けていく。

いいかんじだ。

と。

ピシッと揺れる自分の背中が叩かれたような。。。。?

理性(鏡には私しか写っていない)と感覚が合わない。

妙な感じだ。

まだ恐怖は感じていなかった。

今から思う。

そのとき練習を切り上げればよかったんだ。

妙に真面目な性格を呪いたい。

合宿三日経過した時点で、体育館自体に”活気”というイメージを真っ先に抱き始めていたためだろう。

マジ、何も思わなかったんだ。

自分に集中し、連の前蹴りを百本。

右蹴から始めた。

十、二十、三十。。。。。

薄く汗ばみ始めた額。

前髪が時折視界に入る。

まるで黒い影が視界を横切っているようだ。

五十、六十。七十本目。

と。

頬が強張った。

今のは前髪じゃない。

じゃあなんだっ!!

心が折れた。

ぱっと、後ろに大きく跳び下がった。

そこは畳のある部分。

鏡の前は畳がしいてある部分。

新しくはないが綺麗な体育館の畳が。

サウスポーに構えてステップバックした漏れの後ろに引いた左足。

その左足が

畳 を 踏 ま な か っ た の だ

理性が折れた。

反射的に左足を見た。

畳だ。畳。畳。

畳のしかれた部分は、六Mぐらい向こうまである。

そう、後輩(一年)と俺たちの代(二年)がしいたんだ。

なんだ、そのとおりだ。

なんでもないじゃないか。

だが、まだ心の揺れは止まなかった。

まだある。

視線を前に向けた。

もうひとつの”なんだ?”を探した。

あの影は。。。

まだまだ未熟な漏れだが、心気を澄ませてみた。

体育館を取り囲む木々の音が聞こえてきた。

風で揺れる枝。

葉の立てる音。

次に草達の立てる音か?

小さな雨が降っているかのような低いところから聞こえる音。

集中した耳は、室内をたどり始めた。

体育館の床。

四方の壁。

天井。

音がした。

それは天井の照明付近からだ。

三日目の今となっては聞き慣れた音だ。

バッという音。

先ほどからぴたりと動きをやめた私は、今度は首を、目を動かした。

下から睨むように。

目で追ったんです。

さっきの何かを。

前にはなにもない。

なにも居ない。

足を踏み替えた。

今度は後ろをみるために。

そのとき、足の裏がひどく汗をかいていたことに気がつく。

かなり緊張している自分に気がつきながらも、強いてゆっくりと足を踏み替えた。

動揺を押し殺した。

と。

後ろに引いた右足が。

その足の裏に、畳の感触が、そうではない別の感触を伝えた。

柔道のようなすり足ではないが、摺り足で動くのはうちの流派でも同じだ。

踏むというより、する。

すったその足の裏が、あらぬ感触を伝えてきたんです。

左を向きながら、足を踏み替え、体重移動してその勢いで軽くターンする。

そんなカンジで後ろを向こうとしていた私は、いっきに顔を右足のほうへ向けた。

そのときだった。(前振り長くですみません。。。)

ぱっと動かした視界にひっかかった白い「もの」。

もはや余裕はなくなっていた。

二年続けた不動心鍛錬が効果を失った瞬間だった。

視線をそちらに反射的に向けた。

足が止まった。

上体も。

目も。

止めたんじゃない。

止められたような。

白いその人は、斧を持っていた。

男のような女のような。

なんだか分からない。

漏れはもはや何も思わなかった。

ただ逃げたくないの一心で

コントロールできる全てをやってやった。

目を、大きく見開きそいつをよく見ようとしたんです。

逃げたくなかった。。。。

やつ(彼女?)は、薄れていった。

壁に吸い込まれるように。

徐々に。

足の裏からまるで肉を踏んでいるような感覚がまた、伝わってきた。

でも持っている全ての力を目に集めて、漏れはその感触に振り回されないように

ガッっと見ていた。

それだけを。

汗が背を伝わった。

ふと力が抜けた。

やつが消えた。

足の肉を踏んだような感覚が消えた。

しりもちをついた。

構えていられなかった。

急に体育館の中が明るくなったような気がした。

何がなんだか分からなかった。

ふいに正体を突き止めたくなった。

畳を蹴った。

床面に出た。

入り口に向かった。

いや、行こうとして倉庫をみてやった。

倉庫の扉を一気に開けた。

赤札(なんか書いてあるが、草書体で読めなかった)が

倉庫の入り口すぐの壁の部分に半ばはがれそうに貼ってあることにすぐ気がついた。

畳を出すときには気がつかなかった。

倉庫の照明を点けた。

ないもいない。

畳が少し、器械体操用の器具と大型の扇風機が残っているだけだ。

外からまた、ジャリッと音がした。

瞬時に入り口に向かって駆け出した。

今度は外に出た。

真っ暗な森の中も怖さを感じなかった。

空を見上げた。

また、森を見た。

体育館の裏手に回るには、古タイヤの壁を乗り越えないといけない。

裏手は草天国。

腰ぐらいの高さに草が生えている、本当に森の一部といった部分だ。

また、そちらから音がした。

ジャリッ。

そこまで行くのが億劫に感じた。

立ち尽くした。

.........

これは実話。

去年体験した。

どうにかこうにか体験したことを幹部先輩に報告したときには信用されなかったけど、

今日、事前練習で部室にいったときに、たまたま昔の部日誌をハケーンして読んでたら

同じようなことを体験している先輩がいたことが判明した。

やっぱり、よくあることはあるんだなぁと思った次第。

怪談って根も葉もないと今まで思っていたけど、どこかで誰かが本当に体験したことが

元になっている話もあるんだろうなぁと思っている二十代最初の夏。

尾瀬の方に空手の合宿に行ったときの事。

夜一人で体育館で練習していて、何か妙な感じがしたんですよ。

出ました。

鎌を持った白い人影でした。

そしてすぐに消えたんです。

マジで見るのははじめてだったんで、空手で鍛えているつもりの自分もビビりました。

合宿中に他にも見たという人がいるんで間違いないです。

オカ板の幽霊話もホラ話ばっかりじゃないんだな、と思いました。

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