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■崩れゆく家族の受験戦争

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むかし見たテレビドラマ

102 :怖いお話ネット:2024/06/16(日) 14:32 ID:84ht5

ある団地に住む一家、父・母・息子の三人家族がいた。

父親は典型的なサラリーマンで、部下たちに気前よくおごる気さくな上司。
母親は穏やかな主婦、息子は小学6年生の元気な少年。
普通の家庭だった。

しかし、受験戦争が過熱し始めた。
息子は周りの友人がテストでいい点を取るのを見て焦り始め、
「今時、塾に行かなくてどうする?」と友人たちに突っ込まれ、その焦りは増していった。
母親も団地の奥さまたちが塾や受験の話題で盛り上がるのを耳にし、
ようやく息子の受験勉強に気を使い始める。
しかし塾の費用は高額だった。
入塾代も必要で、家計に重くのしかかる。

息子は「母さん、僕、塾に行きたい!みんなに置いていかれるのはイヤだ!」と涙ながらに訴えた。
その言葉に母親は心を動かされ、家計を削ってでも塾に通わせることを決意する。

一番の犠牲者は父親だった。
今まで十分に与えられていた小遣いは減り、外食もできず、
新聞も電車の網棚に置かれたものを拾う始末。
部下たちは「ダサーイ!」と陰口を叩く。
母親もパートを始めたが、塾の費用は仮模試代や夏期講習代などで家計を圧迫。
父親は会社から借りられるだけの金を借り、家計を支える。

しかし、夏の2週間合宿の高額な費用に「こんなにお金は出せない」と言うと、
息子は「僕は可哀想だ!こんな家の子供に生まれて!!」と泣き叫ぶ。

その言葉が両親の胸に突き刺さり、息子を夏期合宿に参加させることを決意する。
さらに、息子が望むなら塾の特別講習を受けさせるために、母親はサラ金にまで手を出し、父親も追い詰められていった。

そして、合格発表の日。母親と息子は緊張した面持ちで会場に向かう。
努力と苦労の結果を知る瞬間だった。
息を詰めながら番号を探し、息子は見事に合格。
涙を流しながら抱き合う母と息子、これまでの苦労が一気に報われた瞬間だった。

しかし、その頃、父親のもとに警察が向かっていた。
父親は受験費用のため、会社の金を横領していたのだ。

このドラマの後味が悪かった。
せっかく苦労して合格したのに、全てが無駄になってしまったのだから。
入学資金はどうするつもりだったのか。
母親がどんどん老けていき、息子は受験に一心不乱。
その構図が何とも恐ろしかった。

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