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見えない何かが囁く1R

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都内の一人暮らしの物件選びは慎重に

数年前、都内の1Rに一人暮らしを始めた。その物件は線路沿いの踏切近くにあり、1階の奥の角部屋で家賃は6万円ほどだった。路地を少し入った場所にあるため、窓を閉めれば電車の音は全く聞こえない静かな場所だった。しかし、大きな仕事に携わることになり、急いで引っ越すことになった。そのため、物件の下見も不十分で、一人で決めてしまったのが失敗だった。

契約時には「一人で住まわれるんですよね?」と確認されたが、単に契約確認だと思い深く考えなかった。放置されたベランダ先のバイクが気になったが、撤去されるという話だったので気に留めなかった。

引越し当日、友人たちが「なんか…暗くない?」と言ったのを笑って流したが、確かに今思えば入居前と比べて暗く感じていた。

入居して1ヶ月が経ったある夜

寝ていると「地震が来るよ」という楽しそうな声に目を覚ました。空耳かと思ったが、直後に激しい揺れが襲った。東北の大地震だった。この地震の影響で、勤め先のプロジェクトが中断し、仕事を辞めることになった。天災だから仕方ないとはいえ、次々と起こる異常な出来事が頭をよぎった。

室内では視線を感じたり、シャワー中に歩く気配を感じたりすることが増えた。特に台所の天井付近が異様に暗く、気味が悪かった。照明を取り外しても変わらず、風呂場の換気扇を常に回すようにした。

入居して3ヶ月経つと、新しい職場で働き始めた。家に帰ると「おかえり」という声が聞こえたが、誰もいなかった。気味が悪くなり、家にいることが怖くなってきた。妹や友人が週末に遊びに来るようになり、怖さや不安は和らいだが、泊まると必ず怖い夢を見るというので妹はたびたび飛び起きた。

やがて、隣の一軒家の解体が始まり、新築工事の騒音がひどくなった。日中は家に居たくなく、半年の工事日程が書かれていたが引っ越したばかりで困惑した。

入居して半年が経過すると、仕事で会社に泊まることが多くなった。

都内で遊びたい妹は泊まりに来るが、連泊は嫌がった。「あれさえなければ良い部屋なのに」とよく言われたが、俺は幽霊の夢や見えない何かについて深く考えないようにしていた。

食器が割れることが続き、プラスチック製に変えても落ちることがあった。放置バイクは依然として庭にあり、持ち主は名乗らなかった。共有玄関の自動ドアが開きっぱなしになっていることに気づき、同じマンションの住人に聞くと、たまに開かなくなるためOFFのままにしているとのことだった。翌日、財布を無くした。

入居して一年経つと、定期的に食器が割れ続け、プラスチック製のものが落ちても問題はないが、原因はわからなかった。台所の上の空間を開けると、前の住人の持ち物が出てきた。掃除がずさんだったことに呆れた。

職場の同僚から事故物件サイトの話を聞き、自宅は該当していなかったが、周囲にはそれなりにあった。お守りやパワーストーンを買って置いたが、笑ってしまうほどよく無くなった。

入居して2年が経った頃

視線や気配を気のせいとしてきたが、終電で帰宅して寝ていると明け方にドアチャイムが鳴った。不審に思って覗くと真っ暗で何も見えなかった。

深夜にゲームをしていると、ドラムか洗濯機のような音がすることがあった。友人が「よく平気だな」と言うが、俺には気にならなかった。外にいる時のような不安感はなかったが、心底早く引っ越したいと思った。

入居して2年半が経ち、部屋の配置を変えると腰を痛めて動けなくなった。幽霊のような白い人影を台所に見た時、初めて恐怖を感じた。視界の隅から黒い影に包まれ、激しい嘔吐感と悪寒が駆け上がった。

和菓子職人さんには悪いが、餡子入りの和菓子は今でも美味しいと思えない。餡子入りの和菓子を食べることで幽霊が見えるようになるという記事に辿り着いた。動けるようになって同僚に相談すると、お祓いを勧められた。お参りに行くと効果があり、徐々に和菓子を食べなくても大丈夫になった。

入居して2年半と少し経ったある日

帰宅すると家内安全のお守りが外れかけていた。視線を感じるようになり、自宅の雰囲気が一層暗く感じた。高熱が続き、餡子入りの食品を中毒のように買い占めて食べる日々が続いた。病院でも原因不明で、気分が滅入り、死にたいと思う日が続いた。ドアが勝手に開くなどの現象も頻発した。

退去することを決め、引越し業者に支えられて辛うじて立てた。その日、自宅のそばの踏切を渡ると卒塔婆が並んでいた。事故証言募集の貼り紙がいつも貼られていたことに気づいた。踏切事故が多発している駅の近くに住んでいることに気付いたのは、退去した日のことだった。

入居前には、近くの踏切や噂などもよく調べることをオススメしたい。幽霊なんて見たことがない人もいるだろうが、曰く付き物件に住むと確かに何らかの悪影響があることを実感した。怪我や災難をすべて曰く付き物件のせいにするつもりはないが、どこまでが気のせいだったのかを客観的に知りたい。

和菓子職人には申し訳ないが、あの時だけ美味しいと感じた餡子入りの和菓子は、今では美味しいと思えない。幽霊が見えるようになるために餡子入りの和菓子を食べていたのかもしれないが、今は和菓子のきんつばが好きになったことくらいだ。

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