短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

山の墓【ゆっくり朗読】

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石じじいの話です。

39 :本当にあった怖い名無し:2018/09/13(木) 22:30:04.35 ID:d20U3ZPj0.net

日本では墓は、寺の周辺、畑や田んぼの近く(中)など、里に近いところにあるのが一般的でしょう。
じじいが住んでいた当時(戦前)の朝鮮では、墓の多くは里から離れた山の中にあったそうです。

仕事で山道を降りているとき、1つの墓に行きあたったそうです。
山中の墓など別に珍しくはないので通り過ぎようとすると、その山道を朝鮮人の親子が登ってくる。
じじいは朝鮮語で彼らに話しかけてみました。
その父親と思しき男性とすこし世間話をして、その周辺の地理について尋ねたりしたそうです。
そうして話が一段落すると、男性は微笑みながら「あなたは日本人ですね」と言ってきたそうです。
じじい:わかるか?
朝鮮人男性:わかる。発音がちょっとおかしい。しかし、あなたの朝鮮語はたいしたものだ。最初は平壌の方の街の人かと思った。
別に敵対心をあらわにするわけでもなく、その男性は上手な日本語を喋り、
また、息子だという男の子も流暢な日本語を話したそうです。
男性が言うには:
これから山を下ると夕方になるから、山をおりた家(彼らの自宅)によければ泊まれば良い。遠慮することはない。
今日は死んだ父親の墓参りに来たのだが、用事を済ませてすぐ帰るから一緒に山をおりよう、ちょっとまってくれ、と。
そして男性はじじいに、朝鮮の墓を見たことがあるか?ときいてきました。
じじいは「まあ、ある」と答えたのですが、男性は詳しく見せてあげよう、と言ってじじいをうながしました。
うながされてじじいは一緒に墓にいったそうです。

墓には窓があって、そこから中(すなわち埋葬された遺体)を見ることができるようになっていたそうです。
当時は朝鮮では土葬でしたのから、埋葬が最近ならばその遺体の骨を見ることになるのです。
男性はじじいに遺体を見るようにとすすめたりはしなかったのですが、そのしくみを説明してくれたそうです。
その窓を開けて中を覗き込んでいた男性は急に驚いた表情になり、彼の顔がくもりました。
じじいがどうしたのか?と尋ねると、男性は、これは良くない!と言って狼狽し始めたそうです。
どういうことかと男性が説明するに、
遺体は骨になっているが、その骨の色が真っ黒だ。骨が真っ黒になるのは供養が良くなかったからだ。
たぶん、墓の場所の選定に間違いがあったにちがいない。
そういって、じじいにもその中を見せてくれたそうです。
残っている骨は真っ黒でした。
男性は、親戚たちと相談しなければならないといって、供物をそなえてじじいといそぎあしで山をおりたそうです。
家に帰って、男性は息子や他の家族のものたちをあちこちにやり、人が来ていろいろ騒がしくなってきました。
呪い師のような人物も来て、今後の相談をしているようだったと。
じじいはその様子を見て、その日の宿を遠慮しようと申し出ましたが、それは問題ないから、といって男性は引き止めます。

騒ぎ(一族会議?)が一段落すると、その男性(家の主人)はじじいに無作法を詫て、その件について説明してくれたそうです。
ここらでは人が死んだら、その遺体を焼かずに呪い師に頼んで良い位置を選定してもらって、そこに墓をたてて埋葬する。
これは一時的な埋葬で、そこで遺体が骨になってしまうのを待つ。
そして、完全に骨になってしまってから、その骨を集めて壺に入れてあらためて埋葬する。
骨になったかどうかを定期的に確認して、そのときに骨の色をしらべる。
遺体の骨の色が黄色みを帯びた白色になっているのが最良であり、死んだ人が「成仏」している証拠だ。
(埋葬方法は別に仏教ではありませんが、じじいは、『成仏』と表現したようです。メモにそうあります)
しかし、骨が黒色になるのは、その埋葬場所が間違っていたからであり不吉だ。別の良い場所を見つけて改葬しなければならない。
のだと。

翌日、じじいはその家をあとにしましたが、弁当を作って持たせてくれたそうです。

『あれからあのひとらはじょうずにええ墓をたてさったろうかのう。
日本でも「墓相」いうもんを気にするひともおんなはるが、まあ、そういうもんやろうかなあ』

その墓の詳細な構造はメモにないのでわかりません。
朝鮮で人の病気や生き死にに呪術師が関わってくることについては、じじいがいくつかの例を話してくれました。

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