短編 心霊ちょっといい話

お稲荷さまの勧請(かんじょう)にまつわる話【ゆっくり朗読】5587-0101

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うちのじいさん(婿養子)の実家の山に伏見から借りてるお稲荷さんの祠がある。

でもじいさんの家の人たちはみんな神様とか信じない人たちだから、祠にお供えどころか祠までの道が荒れ放題っていう状況だった。

自分のばあさんが異常に信心深いのと、母さんが信心深くはないけど、霊感みたいなものが強いおかげで、自分はお稲荷さんの存在を知ってたし、じいさんの家の墓参りついでにいつも参ってたんだ。

母が言うに、お稲荷さんは長いことずっと「伏見に帰りたい」って言っていたらしい。

だけど祖父母は離婚してるからばあさんは「〇〇家(祖父)のことはあたしには関係ない」って取り合ってくれないし、じいさんに相談しても何が神様だって笑われておしまいだし。

実家も祠も山の中過ぎてじいさんの車に乗せてもらわないと行けないのに、じいさんが年で車の運転ができなくなってしまった。

だから、最後のお参りの時に母さんがお稲荷さんに「もうここには来れない」ってお稲荷さんに言ったんだそうだ。

自分だけはそんなこと知りもしなかったから、無邪気にいつかお稲荷さんを伏見に返してあげたいって思ってた。

それから五年くらいして独り暮らしも始めた。

あるときばあさんが京都に旅行に行くっていうからそれにくっついて伏見に行くことにした。

その時に自分じゃ全然気が付かなかったけど、ずっと自分のそばにいたらしいお稲荷さんが、電話越しに母さんの方に行って、母さんがいわゆる「狐憑き」状態になった。

母さんは人に弱みを見せるのが嫌いなせいで、狐憑きで実際に何がどうなったのかはよくわからないんだが、一日中涙が止まらなくて、「たすけて」ってお稲荷さんの言葉が絞り出すように口から出たらしい。

じいさんの親族は神様なんて信じないし、ばあさんは他人事だし、母さんはもうここには来られないってあきらめてしまった。

もうこのお稲荷さんを助けてあげたいと思っているのは世界中であんただけなんだよ、って母さんに言われた。

神様が泣くっていったいどんな惨事だよ、って思いながら、その話聞いてものすごい使命感に駆られて、どうやったらお稲荷さんを伏見に返すことができるのか色々調べて、何とかお稲荷さんを伏見に返すことができた。

お稲荷さんを伏見に返す瞬間、物凄い号泣してた。

今までじいさんたちの家族を見守ってくれてありがとう、って、そういう気持ちで送り出したかったんだけど、個人的な感情ではこの人はもう自分と縁のあるお稲荷さんじゃなくなっちゃうんだな、ってすごい寂しかったな。

本当はもっといろいろあったんだけど、簡単にまとめるとこんな話。

うちのお稲荷さんを返せたのはすごくよかったんだけど、これを思うと、どこかの地方の田舎の山奥とかで、忘れられて祟り神になっちゃってるお稲荷さんってもしかしたらいるんじゃないかって、ちょっと怖い。

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167:本当にあった怖い名無し:2014/07/03(木)18:08:00.95ID:NzJV2dwxO.net
読みながら涙があふれてしまったよ……

放置なのが悲しいんじゃなく、誰からも信じられない、必要とされないのが一番ツラい気がする。帰りたいのに契約(?)で縛られ帰れないなんて、狐さん可哀想過ぎる……

あなたが願いを叶えてあげて良かった。家を守る役目は終わっても、あなたとの縁はずっと繋がり続けると思う。

ほんと、あちこちの放置社から御霊返し(みたまがえし)出来たらね……

168:本当にあった怖い名無し:2014/07/04(金)08:21:35.63ID:1NzBgax+0.net
へぇ、興味深いお話ありがとう。

「自分では帰れない」って本当なんだね。人間にできないあれこれができるのに、世話してくれなくなってつらいのに勝手に帰ることはできないっていう、ようわからん神様界のルール。

それにしても稲荷神にも性格の違いがあるんかね。荒々しいのだと関係者がヒドイことになるらしいじゃん。それに比べたらなんて温和な神様だ。あと、電話で移ったっておもしろい。

しかし*勧請は本当によほどの覚悟が必要なんだね。
※勧請(かんじょう):神仏の分身・分霊を他の地に移して祭ること等。

なにが起こるかわからない無常の世の中、社会はどんどん核家族化、経済不況で結婚すらできない人も増え、一方で科学万能で信仰心の全体的な衰退化(すいたいか)。

今困ってる派遣先の神様方も勧請した方も、当時はまさかこんな風になるとは考えもしなかっただろうしねえ。

169:165:2014/07/04(金)13:44:09.99ID:srlW4gb6X
ありがとう、身近にこんな話できる人がいないから、受け入れてもらえてすごくほっとしたよ。

神様なんているわけないだろうって言ってたじいさんも、後から話を聞けば小さい頃は兄弟達と山で遊んでる時に祠の前を通ればお辞儀とか、軽く拝むとかしてたって聞いた。

そんな子供たちが大人になるにつれて、どんどん忘れられていくのが身に染みて感じられたのかもしれないなあ。

>>168
こちらこそ読んでくれてありがとう。

本当に簡素に書いたから、「ん?」って思ってくれた部分にも全部理由があると思う。神様界のルールはほんまによくわからん。

>稲荷神の性格の違い
これはどうかわからない。うちのお稲荷さんも元はもっともっと気性の荒い人だったっぽい。

あんまり教えてもらえてないけど、母が小さい頃から守ってやってるのに、お礼もないとは何事だっていうのはあったらしい。

母いわく、あんなにしおらしくなってしまったのは、あのお稲荷さんが助けを求めるべき場所が、ウチではないことをお稲荷さんがよく理解していたからで。

じいさんは婿養子で実家を出て、弟さんが家を継いでるし、当方祖父母も離婚しているし。

それでも、ウチにしかわかってもらえる人がいないから、だからあんなにひかえめに助けを求めてたのかもしれない。

わたしも、地域の人にきちんと信仰されているお稲荷さんに遊ばれたことがある(笑)から、お稲荷さんって基本的に気性が荒いんじゃないかな。

>電話で移る
霊的なものは基本的に電波に乗れる。電話とか、テレビとか。

170:本当にあった怖い名無し:2014/07/04(金)16:12:44.49ID:A+zvkYsX0.net
私も、母の実家のお稲荷さんのお世話を叔父に頼まれていたんだけど、親戚に阻まれてできなくなってしまった。

一緒にお祀りしていたご先祖様が夜な夜な夢に出てきたよ。

ご先祖様が「お屋形様のところに戻してくれ」というときに、ドンと丸に十字の家紋が出て来たので、必死で調べて鹿児島稲荷神社にお返ししました。

自分じゃ動けなくて、母や親戚にお願いしたんだけど、無事にすんで安心しています。

171:本当にあった怖い名無し:2014/07/04(金)19:09:46.88ID:7XlSwsijO.net
>>170
おお、島津の殿様の家来だったのかな?うちもそうなんです(かなり下級だけど)島津と稲荷は縁がありまくりだもんね。お返し出来て良かった良かった。

と、思う反面、長年派遣先から帰ってきた狐さんたちに居場所あるのかなぁ。こんなに祭られなくなってしまって、仕事ない狐さんたち多いのかな……

(了)

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