短編 怪談

目を見るな~コンビニ店員シリーズ03【ゆっくり朗読】371

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11月は塩事件からは何も無く、今のところ数日間は無事に過ごしている。
ので10月中旬にあった洒落にならん話を。
正確には出来事は去年で、当時は気に止めてなかったんだが、Mに話したら洒落にならん話にされた。

俺があるマイナー漫画雑誌を探しに電車で出かけていたら、同じ車両にMが学校帰りらしい格好で居た。
スルーしようとしたがあえなく掴まり、ダラダラ会話する事に。
しかし、そこで思わぬ事態に。
なんと俺が買いに行こうとしていたマイナー雑誌を、Mも買いに行くと言うではないか!何イイ!お前もか!
思わず手を差し出しそうになったが、それは気が早い。
その雑誌の中でも何を読んでいるかが重要なので・・・
とまあこの辺りは置いといて、意気投合する俺とM。(しかし、俺はMの電波っぷりにやや距離をとっている)
そのうち、この間の塩事件もあって、会話が恐怖系に入ってきて、生き生きするM。キモイ

ただ安心したのは、そう滅多に家に入ることはないって言われた事だ。(この直後に塩事件があったわけだがw)
M曰く、「家ってのはそれだけで結界みたいなモンだから」らしい。
つまりあれかww原因は俺かwwwwなんて(冷ややかに)笑っていると、「そう」と肯定されてヘコンorz

その後、唐突に「目を見るな」っつーから咄嗟にMから目をそらしたら、「俺のじゃねえよ」と何故か怒られた。
「じゃあ誰のだよ」って聞いたら、「そっち系の」とか言いやがるから、
そっち系ってなんだ、あれか、ヤーさんとかウホとかかとオブラードに包んで聞いたら、「馬鹿か」と返される。
会話の流れから、つまりアレ。幽霊とかそういうモンだと理解。
「でもよ、幽霊の目なんて見えないだろがよ」
当然俺はそう思った。
俺が初めて幽霊経験をしたのは、Mの気をつけて言われた後だし、それ以降も見ていない。
「見えるよ」
Mは俺の常識をサックリ切り捨てた。
はあ?となる俺に、Mが淡々と続ける。

「あの子(こないだ知ったんだが、Mは霊とかを『あの子』って言う)達の中にも種類があって、
こっちにアピる子とアピらん子がいる。
そんで、そのアピる子の大半は目を見てくる。
勿論、目なんかないようなグチャな子もいるけど」
そこまで言ってMは、自分の目を指さした。
「目ってのは脳の一部だろ。
元々動物ってのは脳が重要なわけだが、死んじまえば脳だけになるようなもんなんだ」
ホホウそれは初耳だ。と感心しつつも、やっぱり電波っぷりにちょい右から左ぎみだったわけよ。
しかし、突然Mの話が変わった。
「今まで見覚えの無い人間に、やたらマジマジ見られた事あんじゃね?」
うん?見覚えの無い人間に「気をつけろ」言われた事はあっても、そんな体験は…
あったっつーか、それくらい誰にでもあるもんじゃないのか。

それは去年の冬。学校帰りにラッシュに遭って座る事も出来ず、もみくちゃになっていた時の話だ。
いきなり手を握られた。
オワア痴女か?!痴女なのか?!と少し期待する俺。
しかし、苦しい車内の中で俺の手を握れる位置にいる女性は、明らかに手が塞がっている。
大体の位置を予想して顔を見ると男(゚Д゚≡゚д゚)エッ!?
人違いされとる?!俺の前にいる可愛いOLさんと勘違いしとる?キモ!
とか思って手を振り払おうとするが、狭くて上手くいかない。
しかも、2度目に顔を上げると、かなりの至近距離(間に可愛いOLさん/かなり小柄)で超凝視してくる。

ウホか!ウホなのか!と焦りつつも、必死に自分に、
最近髪切ってねえし、もしかしたらゴツい女だと思ってるのかもしれんしな、人の好みは人それぞれだし、
なんて言い聞かせた。
そのまま下車駅までがっちり手を掴まれていたんだが、それよりも視線が不気味だった。
あんな至近距離(推定30センチくらい?)で、他人に凝視されるなんて体験した事が無かった。
世の中にはそんな人もいるさと、心の広い俺は家に帰って妹に話したりして笑い飛ばし、その日まで忘れていた。

「いやー見られるくらい誰だってあんだろうよ。知り合いに似てたり」
とか言い返している時に、マイナー雑誌の置いてある書店の最寄駅に到着。
「あんまり間近で見られてたら気をつけたほうがいいかもな。2回目は洒落にならんぜ」
とか満面の笑みで言ってきやがった。
「ぅおい!俺これからその線に乗って学校に行くんだけど?!」
なんて問い詰めても、Mはニマニマ笑うだけで答えない。
気付かずに1年使ってたんだから大丈夫だとは思うが…
これからは何があっても、満員電車で目の前の人間の顔を見ないようにしよう…と心に決める俺。
そういや握られてた手が、満員電車だったのにやたら冷えていたなとか、
思い出さなくていいことまで思い出してしまった。

ついでに、俺が心に決めている間に、某雑誌最後の一冊はMに買われましたとさ。

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