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短編 人形にまつわる怖い話

紙の人形【ゆっくり朗読】3000

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これは1980年代、僕が小学5、6年生頃の話です。

実話かどうかは、確認しようがない状態なのでなんとも言えません。

その当時ビックリマンチョコが流行っていて、よくシールの交換をする仲間内の一人が友人のジローくんでした。

 

ジローくんはゲーム機をたくさん持っていて、PCエンジンからツインファミコンまで物凄い数のソフトがあったので、遊ぶ時はたいがいジローくんの家に集まりました。

ジローくんの家はおばあちゃんと父親の3人暮らしで、おばあちゃんは常に家にいたのを覚えています。

その日、いつものようにジローくんの家に遊びに行くと、いつもは何人か溜まっているのに、その日は誰もいませんでした。

いっつも居る人間がいないのは、なんだか不思議な感じでしたが、

「コウイチ来てないの?」と聞くと、

「うん、まだ来てないけど、後で来るってよ」

と言われたので、中で待つことにしました。

その当時、ジローくんはファミコンの『くにおくんシリーズ』にはまっていたので、その日もそのソフトをしていました。

 

僕は『くにおくんシリーズ』は苦手だったので、一番強いリュウイチ、リュウジをハンディとして使っていたと思います。

それでもすぐ死んでしまうので、その後は、ずーっと待ってるだけになってしまいます。

それから1時間くらいしても、コウイチは来ませんでした。

相変わらずすぐに死んでしまうので、後は待つだけになります。

コウイチとジローくんはよく話していましたが、僕とはあまり話しませんでしたので、そんな時は、やり場に困ります。

暇だ、暇だ、コウイチ早く来ないかなぁと思いながら、普段は見ようともしないジローくんの部屋を見回したりしました。

そんな時、前から外れていたけど気にもとめなかった、ジャッキーチェンのポスターが気になりました。

セロテープで貼ってあったため、四隅とも乾燥してしまっていました。

セロテープは机の上にあるので、勝手に貼り直そうと思い、四隅の乾いたセロテープを外すと、『バサッ』と勢いよくポスターが落ちました。

その瞬間、僕は凍り付きました。

なんとそこには、お札が貼ってあったのです。

それも大きくオレンジ色で、いかにもな感じのお札だったので、僕はゾッとしました。

しかし、ジローくんは動じませんでした。

「あっ、落としたのちゃんと貼っといてね」と、まったく気にしていないのを見て、益々不気味さを感じました。

それでも、何か言わなくちゃいけない気がしたので、ポスターを貼りながら「これ本物?」と尋ねました。

「ああ、たぶんね」と、そっけない返答が戻ってきました。

僕は震える手でポスターを直し終えました。

それと同時くらいでしょうか。ジローくんもファミコンに飽きたのか、バチンとソフトを抜いて、「ふぅ~」と息をつきました。

すると突然、「面白いもの見せてあげようか?」と、ジローくんが言い出しました。

僕も会話に詰まっていたので、「うん」と返事しました。

そうすると、ジローくんは別の部屋に行きました。
(ジローくんの部屋は離れみたいになっているので、独立していました)

そしてすぐに、20センチくらいの箱を持って戻ってきました。

「これ見てみ」と言うと、ジローくんは箱を開けました。

中には、またしてもゾッとするものが入ってました。

ヒト型と言うんでしょうか、紙で作られた人形でした。

「な、なにこれ?」

震える声で聞きました。

「良くは知らない。でも、俺の代わりになるらしい」とジローくんは言いました。

もう僕は帰りたくて仕方ありませんでした。しかしジローくんは続けました。

「あのさぁ、俺きっと、18歳までに死ぬと思う」と言い出しました。

僕はパニックです。

でもあまりにも淡々と話すジローくんだけに、帰りたくても帰りを切り出せず、「なんで?」と、気のない返事をするのがせいぜいでした。

「母さんが迎えに来るらしい……」

もう僕は、何がどうなってるのかさっぱりわからないくらいパニックになっていました。

「へえ……そうなんだ……」などの、気のない返事しかできませんでした。

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ジローくんはまだ続けます。

「俺が5歳の時、両親が離婚したんだ。
その離婚の理由は、きっと母さんの病気が原因だったと思う。
母さんよく大騒ぎしてたの覚えてるよ、なんでも壊しちゃうんだ。
それで俺は、父さんとばあちゃんと、ここで暮らすことになったんだ。
そしてその半年後に、母さんは死んじゃった……
それから、なぜか毎年お祓いを受けるようになったんだよね。
始めはどうしてかわからなかったけど、父さんのタンスから偶然手紙を見つけてから、その理由がわかった。
それは母さんの手紙だったんだけど、
『ジローが十八歳になったら返してもらいに行きます』って書いてあったからきっと母さん、迎えに来ると思う。
そうさせない様にって、父さんは俺の身代わりに、この人形を毎年貰いに行ってるんだと思う……」

僕はそれ以上何も言えませんでした。もう帰りたくて仕方なかった。

するとその時、「ジローく~ん」と外で叫ぶ声がする。

コウイチだった。

それ以来ジローくんの家に行くのが嫌になった。

なんか、あの時の不気味さがトラウマになってしまったからだった。

そしてジローくんとも疎遠になった。中学は別の中学に行ったので、ジローくんのこともすっかり忘れていました。

今年に入ってコウイチから連絡が入りました。中学卒業以来です。

たわいもない昔の話に華が咲いていたので、ふっとジローくんの話を思い出しました。
それで聞いてみました。

「あのさぁ、ジローくんって元気してんの?」

するとコウイチの声のトーンが急に下がって、

「ん、うん、ジローくんは……植物状態なんだよ……」

聞くと、高校三年の時にいきなり倒れたそうです。

ジローくんが突然こうなったのは偶然かもしれません。

そればっかりはジローくんの意識が戻るのを待つしかありません。

……これで僕の話は終わりです。

なにぶん、実話であるのと記憶が古いせいか、曖昧な部分もありますが、今でも、あのオレンジのお札と、不気味な紙人形の形だけはハッキリ覚えています。

(了)

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