ネットで有名な怖い話・都市伝説・不思議な話 ランキング

怖いお話.net【厳選まとめ】

中編 集落・田舎の怖い話

貝殻地蔵【ゆっくり朗読】2000

更新日:

Sponsord Link

当時毎日欠かさず書いてた日記の中に、今でも忘れられない、怖い体験が詳しく書き込まれているのを最近見つけたから、投下しようと思う。

小説風に気取って書いてた日記をそのまま投下するのはあれだから、少し手直しして。

といっても、小説風なのには変わんないんだけど。

高校二年生の夏、高校生活も中盤に入って、かなり中弛みして調子に乗っていた時期の話。

高校は違えど、幼稚園の頃から付き合いが続いてる幼なじみ三人(憲作・和嘉・郁人)と俺で、海に行くことになった。

郁人の父親の社宅、といっても10階建てのマンションの一室を借りることができたのだ。
前々からみんなで海に行きたいと話していたので

「宿代がタダで海を堪能できるなら行くしかないっしょ!」

的な軽いノリで、海に行くことは決まった。

テンションが上がりまくりだった。行くことが決まったその日のうちに、話題は何泊するかに。

しばらく話し合った後、結局、三泊四日することに決まった。

ここで少し、憲作・和嘉・郁人の話をしておく。

憲作は家も隣同士の一番の仲良し。友達想いで優しい奴。

不正とか悪口とか、そういうのが大嫌いな今時珍しい、絵に描いたような正義漢。

ちょっとうざい。顔も良く、総合的なスペックは高い。勿論嫉妬。むかつく。

和嘉は眼鏡掛けて長身な電車オタク。

そりゃもう、かなりのオタク。

電車のことはこいつに聞けば間違いない。

そして何かと真面目な奴で、今回のプチ旅行の計画もほとんどこいつに任せっきりだった。

郁人は垂れ目で、性格もおっとりしている。心が無駄に広く、まったく怒らない。

怒ったところを見たことがない。身長が四人の中で一番小さい。

ちなみに俺はネット大好きな人間。なんか全てにおいて平凡。

あ、陸上部部長。

昔から、何かと一緒だった。

四人でつるんで色んなことして遊んだ。当時俺と憲作には彼女がいた。

話戻します。

なんだかんだで旅行スタート。

旅行一日目。

現地には正午をちょっと回った辺りに到着した。

千葉県の、山に面した有名な砂浜……から3kmほど離れたところに、郁人父の会社の社宅はあるらしかった。

有名な砂浜までは電車を何本も乗り継いで行き、その砂浜からは、歩き。

大量に荷物を持ってきていた俺達には地獄としか言いようがなかった。

炎天下の中、干からびかけながら、延々と続く道を歩いた。

左手は海のはずなんだけれど、その道沿いには鬱蒼とした林があって、海を眺めることすら出来ない。

というか、歩き始めて1kmくらいで気付いた。

周りに本当に何もない……コンビニすら見当たらない、ガチの田舎じゃないか。

俺「夕飯とかどうすんの……?」

憲作、和嘉「現地調達」

俺、郁人「マジで?」

和嘉「いや、調味料とかは持ってきたけど。釣り具とかモリ持ってきてるし、色んなもん捕まえてきて、食おうぜ」俺「その計画、穴だらけじゃない?大丈夫?お前に任せて大丈夫?」

そんな感じの他愛もない会話をしてるうちに、社宅に到着。

なんというか、いかにも昔に建てましたみたいな、古臭いマンションだった。

玄関のところに蟹。エレベーターの中にも蟹。

やべえ、田舎凄ぇ!とかみんなで話してた。

俺達が借りた部屋は八階の角部屋。

せまいエレベーターで八階まで行き、部屋の中に入ると、古臭いながらもめちゃくちゃ広い部屋だった。

ベランダからは、マンション裏に広がる海が一望できた。

詳しく書くと、ベランダから見えるマンションの裏は広い磯で、その向こうが海。

磯ではシュノーケリングや磯遊びが存分に出来そうだった。

俺達は全員砂浜で遊ぶより磯で遊ぶ方が好きだったので、凄くテンションが上がった。

テンションの上がった俺達はすぐに海パンに着替え、意気揚々とマンション裏の磯辺に向かう。

マンションの玄関を出て裏へ回ると、舗装もされていない獣道と言っても過言ではない道とても細い道が、林を経由して、磯へと伸びている。

ここを通らなきゃ磯には行けないらしい。

俺達はその道を雑談しながら進んでいった。

俺「なに、これ?」道の脇に、お地蔵さんが置いてあった。

脇、と言っても、道の三分のニは占領している。

そして妙なことに、地蔵の首周りにはボロボロの御札が何枚も貼り付けられていた。

ボロボロなんだけど、余りに貼り付けられ過ぎていて、首周りの地肌がまったく見えない。

そしてお地蔵さんの手前には、様々な『貝殻』が、うず高く積まれていた。

異常に量が多い。土台から溢れて道に散乱してるレベルだ。

「なんだこれ……気味悪いな」

憲作の言う通りだった。林の中というシチュエーションも重なってか、結構不気味な雰囲気を醸し出している。

みんなで地蔵を観察したけど、海で遊ぶ方が地蔵を見つめるよりよっぽど重要だったから、すぐに道を進みだした。

地面に散乱した貝殻が、踏まれてパキパキと鳴った。

……そこから歩いてすぐに磯には出れたのだが、道の終わりに、なんか、真っ赤で巨大な鳥居があった。

そこをくぐって磯に出る、みたいな。

その時は、気味悪いというよりは、なんでこんなところに鳥居が?地蔵ならまだ分かるけど、鳥居っておかしくね?みたいな気持ちが強かった。

まぁ、そんな気持ちも頭からぶっ飛ぶくらい、その日は遊びまくった。

周りに俺達以外誰もいないし、ちょっとしたプライベートビーチ……みたいで、超楽しかった。

一日目終了。

二日目は砂浜行ったりでまた楽しみ。

それは三日目の夜に起こった。

三日目の夕飯は憲作が台所で見つけたバーベキューセットでのバーベキュー。

具材は地元民に教えてもらったスーパーで買った肉と磯で捕った魚、蛸、サザエなど。

問題は、その夕食の、後。

磯に持って行ったバーベキューセットとかを片付けて、マンションに戻る途中。

お地蔵さんのところで……和嘉が。

右手に持っていたバーベキューセットを纏めたバッグを、お地蔵さんの頭にぶつけてしまった。

勿論悪気はない。

なにしろ、道が狭い。

予期せず当たってしまった。

……と、その瞬間。

ぽろりと、お地蔵さんの頭が地面に落ちた。

うわ、へし折っちゃったの?と、みんな口々に呟き、和嘉がやっべー、罰当たる、みたいに言いながら苦笑してたのをよく覚えている。

やべえよこれどうすんだよ、と俺は慌てて頭を拾い、元の場所に戻そうとした。

その時、違和感に気づいた。

俺「ん?これ、元々頭とれてたんじゃねーの?それをお札でぐるぐる巻きにしてたっぽいぞ?」

地蔵は神聖なものだから、普通のガムテとか接着剤じゃなくて、お札でとめていたんだろうか?とりあえず、さっきのぶつかった衝撃くらいでぽろりといくもんじゃないだろう。

そういう結論をみんなで出して、なんだ、最初っからとれてたなら焦って損した、と笑いあった。

和嘉が頭を手にとって首の位置に戻し、というか乗っけて、手をぱんぱんと二回叩いて、「すみませんでしたぁ」と言った。

郁人「お地蔵様に手って叩いていいの?」

俺もそれは思った。

和嘉「大丈夫じゃね?行こうぜ」

和嘉はそのことに関して大して気にせずにまた林の中の道を歩き出した。

部屋へ戻ると、みんなここまでの疲れが出たのか、布団も引かず畳に突っ伏して寝てしまった。

それを見ていた俺も急に眠くなって、壁に寄りかかって、寝た。

不意に目が覚めた。今何時だろうと思って壁に掛けられた時計を見てみると、時計が八時半あたりで止まっていた。

バーベキューから戻ってきたくらいがそんくらいの時間だった気がする。

とりあえず携帯を見ようと携帯に手を伸ばしかけて、風呂や歯磨きをしていないことに気づいた。

周りのみんなは爆睡している。

みんなは寝てるしなんとなく暗闇が怖かったから、部屋の電気をつけようと思って電気のスイッチを押した。

……明るくならなかった。

はあ?停電?と思ってしばらくパチパチ押すのを繰り返していたけど、無駄だとわかって、じゃあ風呂は諦めようと思った。

暗闇の中のシャワーとか怖すぎる。せめて歯だけでも磨こうと思って、俺は洗面台に向かった。

Sponsored Link

ところが、そこで異変に気づいた。

洗面台の排水溝に、物凄い量の髪の毛が詰まっていたんだ。

こんなに髪が長い奴は俺達の中にいない。

気持ち悪いと素直に思った。生理的に無理。恐怖を感じた。

なんだよこれどういうことだよ……必死にその場で考えようとしたけど、恐怖の方が勝って、とりあえず、みんなが部屋に居る部屋に戻ろうとした。

その瞬間ばあんっっっ!!と玄関に何かがぶつかったような音が響いた。

心臓が口から吐き出されるかと思ったほど俺はびびった。

そしてまた、

ばあんっ!!

これで二回目。

ばあんっっ!!

三回目。

ばだあああんっ!!

一際大きい四回目。

……そして静寂。

もう俺は何がなんだかわかんなくなっていた。

気持ち悪い。吐き気すらする。

恐怖で叫び声を上げることすらできなくなっていた俺は、泣きそうになりながらじりじりと後退りし、みんながいるところまで戻ろうとした。

なぜ、後退りか?玄関から目が離せなかったんだ、怖くて。

すると、その緊張感をほぐすかのように、かかか、かん……というような音を立てて、みんながいる部屋の電気が……ついた。

憲作「なんだよ今の音……」

和嘉「うるっせえな……」

郁人「なに……?」

それと同時に、みんなが起きる声がした。

良かった、これでかなりほっとした……そう思って玄関から目を外し、俺は振り返る。

俺「今……」

意味分かんねえことが起きたんだよ、と言おうとして俺は言葉を失い、顔面の筋肉が凄い勢いで引き攣った。

この瞬間を俺はこの先一生忘れることはないんだろう。

みんなが座っている部屋の中央に、俺に背を向けるようにして、女が、立っていた。

伸びまくって床についているひじきみたいな髪の毛。

和服のような、とにかく汚いズタボロな服。

腰に鈴がいくつもついていた、と高二の俺は記述している。

そこで俺は気付く。

俺に対して背を向けてるんじゃなくて、和嘉を見ているんだと。

和嘉「なんだよ、そんなとこに突っ立って口あけて、何してんだよ、お前」

俺に向かって怪訝そうに言う和嘉。

その鼻から、鼻血が流れ出していた。

和嘉「え?鼻血?……ってか目が痛ぇ。目。目が」

その目は、人間ってこんなになれるんだと思うほど充血してて。

「目が!!」

和嘉は急に騒ぎだした。

首から上がいつの間にか真っ赤になっていて、うっ血してるようだった。

鼻血からの展開が急すぎて、なんか俺もついていけない。

ってか、その前に恐くて一歩も動けない。

和嘉から目を離して憲作を見ると、憲作は、鼻血を流しながら女を動揺した顔で見上げていた。

郁人は、「和嘉どうしたんだよ、大丈夫!?」と至って普通な反応。

どうやら、憲作と俺にしか女が見えてないらしかった。

こいつは人間じゃないっていうその事実を飲み込むのに、数瞬かかった。

というか、さっきから、女がブツブツと何かをつぶやいている。

『 ソワカ  シキソ ンミッタ ソワカ カシコミカシコミマモウス 』

聞き取れれたのはこれくらいだけど、ぶつぶつ呟いてた。

《そわか》と《かしこみかしこみまもうす》だけは、はっきり聞き取れた。

そのうち自分も鼻血を流していることに気付いた。

拭ったところで、動かなきゃという思いに駆られる。

だけど、足がすくんで助けに行くことが出来ない。

そこで、俺は「憲作!!」と、叫んだ。

叫んだといっても、自分でも驚くほどぱっさぱさに渇いて掠れた声で、だ。

憲作は俺に呼ばれてハッとしたようで、「郁人、来い!」と郁人に声をかけると、かなり素早い動きで和嘉をお姫様抱っこして、女の横を素早く通り抜けこっちに向かって走ってきた。

郁人も困惑した顔でこっちに走ってくる。

憲作は俺をこして玄関前まで止まらずに走り、「郁人、開けてくれ!」と郁人に頼み、郁人に玄関を開けてもらって、和嘉を抱えたまま弾かれるように外へ出て行った。

郁人は憲作の後についていこうとして、玄関で俺を振り返り、「早く!」と俺を手招きした。

俺はというと、まだ動けなかった。

なんか、立ったまま腰が抜けた気分だった。

視線を郁人から、女に移す。

……女は、ぶつぶつ言いながら、こっちを振り返ろうとしていた。

その緩慢な動きのなかで、横を向いた女の「首」に……えぐられたような傷跡があるのに気付いた。

グロい。

気持ち悪い。

吐きそうな気分になり……俺は、女がこっち向きになるにつれて、目が痛くなっていることに初めて気付いた。

あ、ヤバい。

そう確信した瞬間、郁人に方を強く引っ張られた。

「行くぞ!!」いままで聞いたこともない郁人の怒鳴り声ではっとし、足が動いた。

そっからはもう、郁人の手を握って引っ張りながら、無我夢中に逃げた。

エレベータまで行くと憲作がエレベータの扉を開けて待っていてくれて、一階まではエレベータで降りた。

そっからは俺が和嘉を背負い、真夜中のランニングが始まった。

とにかく、マンションから遠ざかりたかった。

後日談

マンションを飛び出た俺達は一心不乱に砂浜近くの交番を目指した。

なんとか交番に辿り着くと病院に連れていかれそうになったけれど、お巡りさんに懇願して、近くの山中にある大きなお寺に連れていってもらった。

お寺にいた若いお坊さんに今までの経緯を話すと、祖父に同じような話を聞いたことがあるという。

お坊さんは俺達を本堂に通し、そこに古い文献を大量に持ってきて、俺達に話を始めた。
その話は長いので、箇条書きにする。

・君達が頭を落としてしまった地蔵は俗称で貝殻地蔵と呼ばれるものである

・いつ出来たか不明

・全国各地にあると伝えられる

・貝はお供え物・貝は定期的に集めて埋めなければいけないが、私の父の代でそれが途絶えていた

・その地蔵周辺は良くないものが溜まるスポット

・良くないものを封印しているのがその地蔵・過去に雷で地蔵の頭が落ちた時、災害が起こり、それをとめる為に大規模な封印が行われた。

首周りの御札はその時のもの・君達が見た女は地蔵が壊れたことによって現れた。

恐らく放たれた良くないものの一つで、力が強かったため、君達にも姿が見えたのではないか

・その地蔵の封印には多くの僧侶や神主などが関わってきた。そして封印後に死ぬ人もいた。女が呟いていたのは多分お経や詔。となるとそれらが効かない可能性があり、再封印は難しいかもしれない

・君達がお供え物の貝殻を踏んだのと頭を落としてしまったのが非常にまずかった。けれど、放置していた私達僧侶が一番悪い。すみませんでした……

こんな話を長々とされた。

お坊さんはあの地蔵周辺がまずいだけで、今のところ、俺達に何かがとり憑いたりはしていないと思っているらしい。

勿論半信半疑で聞いていたけれど、気付くと和嘉は普通の寝顔に、俺達は気分が悪いのが和らいでいたので、あぁ、大丈夫なんだと安心した。

日が昇ると、「私が車で君達の荷物をとってくる。

あそこに戻るのは怖いだろう?」とお坊さんが言うので、マンションの場所を教えて、荷物をとってきてもらうことにした。

お坊さんが荷物をとりに行っている間に和嘉は目を覚ました。

困惑している和嘉に憲作が状況説明。

和嘉はつかれたような顔をして、その話を聞いていた。

憲作が話をしている途中にお坊さんが戻ってきた。

出掛けた時より顔が憔悴してやつれている。

「これはまずいことになったなぁ」

お坊さん苦笑。

「ごめんなさい」俺達は全員で深々と頭を下げた。

「いやいや、責めようとしたんじゃなくて」

お坊さんは申し訳なさそうにした。

そして「じゃあ、これ」と言って俺達に荷物を渡してくれた。

「部屋に散らばっていたものは適当に詰めといたよ。何か無いものがないか確認してくれ」

「ありがとうございます」

俺達は中身を開けて……そこで和嘉が「なんだよこれ」と呟いた。

和嘉のバッグの中身には大量の女の髪の毛が絡み付き……そして中身の一番上に、地蔵の頭が入っていた。

「観~自~在~菩~薩~般若波羅蜜多……」

お坊さんはそれを見た瞬間からお経を唱え始めた。

一区切りつくと、

「君達はもう帰りなさい。後は私達に任せてもらって大丈夫だから」

と言って、地蔵の頭を抱えて険しい顔付きでお経を唱えながら、お寺の本堂から出ていってしまった。

取り残された俺達は唖然としていた。

「……帰ろう」

憲作がぽつりと言い、和嘉の荷物の中身の髪の毛を取り除き、俺達は帰路についた。

帰りの電車では誰も喋らなかったし、帰ってからもこの話題はしなかった。

旅行中に撮った写真も怖くて現像出来なかった。

_以上で終わりです。

あんなに強烈な体験をしたのはあの時が初めてでした。

失禁しててもおかしくなかった。

貝殻地蔵を見つけた際には、是非、気をつけてください。

(了)

Sponsored Link

Sponsored Link

-中編, 集落・田舎の怖い話

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2024 All Rights Reserved.