単なる偶然かもしれないし、本当に何か不思議な話かもしれない、そんな話です。
この間買った車、赤のカローラ・フィールダーが納車になり、試運転もかねて地元の神社に行った。
特に全国的に有名な神社ではないんだが、一応は一の宮なので規模もそこそこなんだよね。
昼飯食ってから実家を出発。田舎道を一時間ばかり運転して、神社の駐車場に到着。
車の中でタバコをすいながら休憩してると、妙なことに気づいた。
駐車場に俺しかいないんだよね。
百台くらいは停めれそうな駐車場に俺の車しかいない。
普段なら参拝に来た地元の年寄りの軽トラや、ドライブがてら来たみたいな感じのミニバンがいるんだけど、一台もいない。
何だか気持ち悪く感じて、外に出ることもできず、かといって軽いパニック状態なんで、エンジンかけて帰るって事も思いつかず、ただひたすら
「何かおかしくね?あれ?何で?何かおかしくね?」って感じでテンパってた。
真昼間なのに何か凄く不気味な感じがした。
何分ぐらいたったのかわからんけど、ふいに一台の白いセダンが駐車場に入ってきて、俺の車から少し離れたところに停車した。
角ばったボディに四つ目のなんとも古めかしい車なんだけど、古い感じがしない。
古い車って塗装がボケてたり、ナンバープレートの文字が色あせてたり、薄汚れた感じのいかにも古い感じがするけど、そういうのがいっさいない普通に街中を走ってる現行の車みたいだったんだ。
俺以外にも人がいたって思って少し落ち着いたんだけど、もっと人がいてもおかしくない昼間なのに、二台きりってのがやっぱり不気味だし、何だか居心地悪いので、家に帰ることにした。
家に帰って、何気なく神社での出来事を親父に話すとびっくりした顔で「それ爺さんかも知れんぞ」と言い出した。
爺さんは十年以上前に亡くなっているので、車を運転して神社に来るわけがない。
わけがわからないので、詳しく話を聞くと三十年以上前にこんな事があったらしい。
ある日、爺さんがまだ幼稚園児だった俺を連れて、神社までドライブに行くと言って出て行った。
帰ってくるなり「神社に妙な車がいたが、あれは外車か?」と親父にたずねたそうだ。
たぶん凄く印象に残っていたので、車好きの親父にどこのメーカーの車か教えてもらいたかったんだろう。
どんな車かと特徴を聞いてみたが、当時の親父が知る限り、そんなデザインの車はない。
というか、話を聞く限り、当時のデザインの常識からはかけ離れた感じで、どの国産・外車にも当てはまりそうにない車だった。
爺さんが言うには、神社の駐車場に着くと自分の車以外には、釣り目ライトで新幹線みたいに丸みを帯びた、のっぺりとした赤いライトバンが一台停まっているきりで。
そのライトバンもしばらくすると行ってしまい、一台きりの駐車場が何だか不気味で、参拝もせずに帰ってきてしまったそうだ。
当時の車事情をご存知の方ならわかると思うが、昔は乗用車といえばセダンが主流で、ステーションワゴンはライトバンと呼ばれ実用本位の車とされ、乗用で乗る人は少数派。
当然色も白や銀が多かったので、華やかな感じがする赤色でライトバンは珍しかったのだろう。
デザインも箱を組み合わせたようなカクカクの車が多かった。
ライトも角型か丸目で釣り目ライトなんて見たことも聞いたこともない。
爺さんの話を聞いた親父は
「何かの用事で神社に来ていた消防のライトバンだろう。釣り目ライトや流線型はそのライトバンが動いていたから、そう見えたんだ」
と説明したが、爺さんは腑に落ちない様子でしきりと「気味が悪い」と繰り返してたそうだ。
白いセダンと妙なデザインの赤いライトバンだけの何だか気味の悪い感じのする駐車場、それはまさしく俺が体験した状況そのものであり、爺さんが見たライトバンも俺の車に当てはまる部分が多い。
俺が見た白いセダンについても車種やメーカーがわからなかったので、断定はできないが、丸目四灯、フェンダーミラー等、当時爺さんが乗っていたトヨタ・コロナの特徴に当てはまるように思う、と親父は話してくれた。
偶然が重なり合っただけかもしれない。
たまたま参拝客の少ない日に爺さんが何かの車を見間違え、三十年後、なぜか参拝客の少ない日にドライブにきた俺の目の前に愛好家が運転する旧車が現れた。
ただそれだけの話かもしれないが、がらんとした駐車場や、昼間なのに何ともいえない不気味な空気を思い出すと何かが起こって、俺と爺さんが三十年の時間を越えて、神社の駐車場で遭遇した、そうとしか思えない。
699:2012/07/08(日)09:44:03.55ID:dinXwPeA0
欧米の有名な話でも似たのがあったな。
軽飛行機で飛んでいたら、やたらクラシカルな別の飛行機と接触した。帰投してからふざけんなと調べてみたけど、該当機が存在しない。
その後、たまたま立ち寄った近くの格納庫に見覚えのある飛行機があるのを見つけて入ってみると、飛行日記もあったので中を確かめてみた。
すると、そこには自分の飛行機と思われる機体と衝突したことをしるしたページがある。
あわてて格納庫の飛行機を見ると、自分の飛行機のパーツが食い込んだままになっていた。
日記の日付は戦前のもので、もしかしたら自分は時を超えてこの飛行機と出会ったのかもしれない……って話。
この話にはこれを読んだ時と同じ薄ら寒いものを感じる。
(了)