ネットで有名な怖い話・都市伝説・不思議な話 ランキング

怖いお話.net【厳選まとめ】

短編 r+ 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

手配 r+2037

更新日:

Sponsord Link

これは、とある予備校時代の友人の体験談だ。

彼の後輩、仮に「タケ」としようか。そのタケは、身長185cmと長身で、かつては80kgほどあった体格も立派な男だったが、二年前、彼の生活は一変した。

親が亡くなり、同時に仕事のトラブル、恋愛の破局と、不運が続いてタケは職も彼女も失った。その後、あまりのストレスで精神的に限界に達していると聞いていたが、久しぶりに再会したとき、その姿は別人だった。50kg台にまで体重が落ち込み、顔色も悪く、挙動不審にキョロキョロと周囲を見回していた。

待ち合わせの駅で再会した後、二人で昼間から飲める店に入った。そこでタケは職場の元カノについて語り始めた。嘘を撒き散らし、タケをストーカーのように周囲に見せかけ、職場にいられなくしたという。その彼女が今も、タケの再就職を邪魔し続け、さらには監視までさせている、と。

「それも彼女の手配だ」

意味がわからずに心療内科の受診を勧めたが、タケは拒否した。

その後も異常な話は続き、帰り道、タケが「ここ、いつも人が多いんです。俺がここを通るときはいつもなんですよ」とつぶやいた。ふと見渡すと、花壇の手入れをする業者、そして身体障害者とその付き添いが二十人ほど、信号待ちをしている。言われてみれば、たしかに人が多い。

「ここを通るとき、必ず〇〇運送のトラックが通るんです」と、タケが言ったその瞬間、目の前をまさにその会社のトラックが横切った。まるで、それが「仕組まれている」かのようなタイミングに、背筋がひやりと冷たくなった。

アパートに戻り、飲み直そうと準備をしていると、今度はタケが「ピアノの音が聞こえてくるんです」と言い出した。半信半疑のまま耳を澄ますと、確かに、遠くからピアノの音が流れてきた。タケは涙を浮かべて、異様なほど静かな声で囁いた。

「おかしいと思うでしょ。でもね、もう逃げられないんです。引っ越そうとすれば工事が始まって、追い出されないようにしているんです」

あまりの出来事に混乱しながらも、タケの部屋を後にした。その後、彼について調べると、交差点近くには障害者施設があり、通学や散歩で頻繁に訪れるのも日常の光景らしかった。〇〇運送のトラックも、通りの先に運送会社のターミナルがあるため、通るのが当然のこと。ピアノの音も、数軒先の家がピアノ教室だったのが原因だとわかった。

だが、合理的な説明がついても、胸の中の不安は消えなかった。

後日、近所のスーパーへ買い物に出たとき、再び奇妙な光景に出くわした。交差点でふと目にしたのは、花壇の手入れをする業者、そして障害者の一団。さらに目の前を〇〇運送のトラックが通り過ぎていくのを見た瞬間、血の気が引いた。

スーパーで必要なものを急いで買い終え、部屋に戻り冷蔵庫に物を詰めていると、どこからともなく、ピアノの音が流れ始めた。

三年間、この部屋に住んで一度もピアノの音など聞いたことがないのに。

偶然のはずだ。そう自分に言い聞かせても、その異様な既視感に耐えきれず、ついに心療内科の予約を入れた。自分の判断力がまだ残っていることを、確かめるために。

だが、いまだに答えは見つからない。果たして、これは偶然なのか。それとも、自分もまた、見えない「手配」に囚われつつあるのか。

(了)

[出典:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1433425141/]

Sponsored Link

Sponsored Link

-短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2024 All Rights Reserved.