短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

アンマエ【ゆっくり朗読】

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石じじいの話です。

661 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2016/08/28(日) 20:14:56.55 ID:hHq0qghM0.net

これも朝鮮時代の話です。

じじいは海岸(日本海の;朝鮮では東海=トンヘと呼ぶ人間もいたそうですが)の近くの山を歩いていたときに、幽霊船をみたそうです。
じじいは山を歩いていて、開けた場所から海が見えたそうです。快晴でした。
日本海をみていると、遠くに船が。
彼は日本光学の双眼鏡を持ち歩いていたのですが、それでみると古風な帆船でした。
「ほう!あがいなふねもまだあるんかのう?」と思い、山を歩き続けたそうですが、
夕方になって再び海が見えるところに出たら、その船がさらに近づいていました。
よく見ると船体が真っ黒で、二本ある帆は真っ赤でした。
それがどうも陸地に向かって動いているらしい。
近くの港に入港するのか?と思って、その港町に宿をもとめて下山しました。
町におりて地元にひとに、そのような船が入港するのではないか?と言ったところ、その人々は顔色を変えて大騒ぎになったそうです。
その慌て方が尋常でなかった。
海岸で朝鮮人たちは松明を燃やし始めました。
町の駐在(日本人でした)にその騒ぎについて尋ねると、

「うん、よくわからない。
彼らの言うことには、なにか、恐ろしい船がたまにやってくるらしい。
まあ、ちょうせんじんの迷信でしょう」

海岸には祈祷師のような女性がやってきて、「拝みながら踊っていた」そうです。
ご苦労さんなことよのう、と思ってじじいは宿屋でぐっすりと眠りましたが、
翌朝、さらに騒ぎは大きくなっていました。
地元のもと両班の娘がその夜にいなくなったと。
いちおう行方不明事件なので駐在さん(日本人)も捜査を始めました。
どこにもいません。近くの村・町に電信で通知したそうです。それらしき人物はいない。
村人は海岸に集まって怯えたように海を見ていました。
そこには、沖合に黒々と停泊する例の船がありました。赤い帆を青い空に照らして。
帆をあげているのに船は動かず錨を下ろして停泊しているようでした。
ふたたび双眼鏡で見てみましたが、船上に人影は無かったそうです。

じじいは駐在と話をして、あれは無人の難破船ではないか?と思って村人に尋ねたそうですが、
アレが怖い船(朝鮮語では「アンマエ」と言っていたそうです)だと村人は口々に言いました。
村人は、もっと人がいなくなるのではと恐慌していたそうです。
駐在とじじいが尋ねたところ、アノ船がくると必ず村の人がいなくなる、と。
「よっしゃ、あの船まで行ってみようや!」とじじいが言っても、村人は腰が引けてだれも舟を出そうとしませんでした。
重苦しい空気に包まれて夜になりました。
夜になっても黒い船は明かりもつけずにいたそうです。
村の若いものが数人、勇気をだして警戒するために浜に残ったそうです。松明を焚いて。
じじいは翌朝、大騒ぎで目を覚ましました。
例の若いものがいなくなっていました。一人もいない。松明は倒れて消えていました。
砂浜(それほど広くなかったそうですが)には大勢の人が走り回った足跡が残っていました。
村人や呪術師は、「あれだ、アノ船が人を喰らうんだ」といって青くなっていたそうです。

じじいもそう何日も滞在しておられなかったので、車に同乗させてもらい村を後にしました。
駐在の住所を聞いておいたそうです。
彼は家に帰ってからちょっとしてから駐在に手紙を書いたのですが、その返信がすぐに来たそうです。
「あの船は、その後二日停泊し、その後、朝見てみるといなくなっていた。その間に村人の8人がいなくなった」
その後、第二信が彼から来て、それには「その後、いなくなった人々の着物の一部が海岸に打ち上げられた」と。
駐在は、心中ではないか?とも書いていました。

「ふしぎなこともあるもんよ。ひとがあがいにたくさんいっぺんにおらんなるとはのう。 日本もええ船があるんやけん、あのおかしな船をしらべたらよかったやけど」

日本の行政府は迷信を取り除こうと努力していましたが、そのような事件を伴う(根拠のある?)迷信は根絶やしにはできなかったそうです。

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