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短編 集落・田舎の怖い話

オラガンさん

更新日:

二〇年近く前、福岡の母方の田舎に帰った時の話。

65 名前:あなたのうしろに名無しさんが :03/07/02 07:53

母ちゃんの毎年恒例のお盆参りで、俺は母ちゃんと妹と三人で(親父は航海士で夏は南半球で過ごしてた)一週間位福岡の母ちゃんの実家である爺ちゃんの家に遊びにいった。

横浜生まれの俺は福岡のうだるような暑さとむせ返るような緑の匂いが大好きで、遊びに行くたび2歳上の従兄弟と虫取りだ、釣りだ、川で泳ぎだ、とちょこまか遊びまわってた。

ある日の午後、従兄弟が良いもの見せに連れてってやるといい、爺ちゃんちから暫く歩いた山の中腹にある寂れた神社に連れてかれた。

木が鬱蒼と生い茂ったその神社の裏手には古い井戸と三、四軒の廃墟になった民家があった。

民家へ続く道はしめ縄で閉ざされたが、従兄弟は構わずしめ縄を跨いで進み俺もそれについていった。

周辺はまだ昼過ぎなのに薄暗く、空気はひんやりして涼しかった。

民家はボロボロで荒れ放題。ガラスは割れまくりで雨戸は壊され正直言って内心気味が悪かった。

従兄弟は俺を引張りその内の一軒の軒下に通風孔をくぐって入り込んだ。

そして真っ暗な軒下へと俺を引っ張り込み、持ってきた蛍光灯付きの懐中電灯付け、その灯りを頼りに奥へ奥へと這っていった。

暫く進んだ軒下には週刊誌や色マンガが山積してあった。

従兄弟の言う良いものとはそれだった。

それから従兄弟と俺は時間を忘れて色マンガを読みふけった。

気がつくと軒下から見える景色は大分暗くなってた。

と、俺達が居る家の周りを歩いている人の気配がする。

従兄弟が「誰かおる」と俺に耳打した、そして蛍光灯を消すと軒下は真っ暗になった。

と、潜り込んだ通風孔から見える外の景色に、確かに家の周りを歩いてる人の足が見えた。

よく見ると裸足の足がびっこを引きながら家の周りを歩いてるのが見えた。

そしてその脇にギラギラひかるものが見えた。

刀のようだった。

従兄弟はヤバい!みたいな顔を見せて俺に「逃げよう」と呟いた。

軒下には出入り口になる通風孔が幾つかあって足は家の周りを左回りにグルグル廻ってた。

「(足が)通り過ぎたあと、あそこから走って逃げよう」と言う従兄弟の提案通り俺達が入ってきた通風孔に近づいた。

そして息を潜め、足が通り過ぎるのを待った。

足が通りすぎて暫くし先ず従兄弟が出て、俺も這い出ようとした。

慌てて出ようとした俺は両腕と頭を通風孔に差し込んだせいで体がつかえてもたついた。
足の主に捕まったら殺されるかもと思い心臓バクバクでつかえた体をあれこれ動かし、せまい通風孔からやっとの事で這い出た。

と、後ろに人の気配を感じ振り向くと、今自分が這い出たばかりの通風孔から白目で俺を睨む顔が見えた。

足の主は俺達が軒下に居る事に気付き、違う通風孔から俺達を追って這ってきたのだった。

白目の主はちょん髷を解いた侍だった(のように見えた)。

口は開け放しこちらを睨む白目からは幾筋にも血を流していた。

その目に睨みつけられた俺は体がすくみ、身動きできずにいると、白目の侍は頭と手をにゅうっと出し出てこようとした。

途端、「早く!」と従兄弟が叫び、俺の手を掴んで、文字通り脱兎のごとく駆け出した。

暫く「ズっズっ」とびっこを引く音をを後ろに聞きながら、鬱蒼とした薄暗い山道を足の速い従兄弟に手を引かれながら駆け下りた。

途中一度大きく転んで、従兄弟はアゴ、俺はひざから出血したのを覚えてる。

従兄弟はもう一方の手に掴んでた色本をぶちまけたが何冊かだけ持ち直しまた俺の手を掴んで駆け出した。

ほうほうの体で山を降り、爺ちゃんちまで逃げ帰ると、従兄弟は縁側から大声で居間で相撲を見ていた爺ちゃんを呼んだ。

事情を聞いた爺ちゃんは途中で大体察したのか、

「おい婆ちゃん、酒と塩を持ってこい。こいつがオラガンさんに見付かったぞ」

と婆ちゃんに向かって叫んだ。

台所で料理をしてた婆ちゃんは慌てて一升瓶と塩の入った甕を持ってきた。

そして爺ちゃんは従兄弟にバリカンを家からとって来るように伝えると、俺に服を脱ぐように言った。

言われた通りすっぽんぽんになった俺は裸のまま従兄弟が持って来たバリカンでボウズにされた。

そして日本酒を口に含むとぷはぁーっと俺の顔に吐きかけ手ぬぐいでごしごしとぬぐった。

そして水を汲んできて頭からかぶせるとごしごしと婆ちゃんに全身拭かれて、塩を全身にぱっぱとふられた。

婆ちゃんは俺の着ていた服と髪の毛を、従兄弟が持ち帰った色本と一緒に焼却炉で燃やすと家の中に入ってった。

「よし、これでよか。母ちゃんはアキ子(妹)を連れて福岡まで出ていっちょるからお前は今日はもう寝れ」といわれた。

怖いと言うよりも、大変な事をしてしまった、とか母ちゃんに怒られるのかな?と頭の中がグルグルしてた俺は言われるがままに婆ちゃんの敷いた布団に入って寝た。

翌朝早く起こされると予定を切上げ母ちゃんは俺と妹を連れて横浜の家に帰った。

俺は神社での出来事をいつ聞かれるかとビクビクしてた。

母ちゃんは事情を知っているようだったが結局俺には何も教えてくれなかった。

それから数日の間、夏休みが終る頃位まで?耳鳴りが続いたが、体調には別に異常は無かった。

夏休みが終る頃には耳鳴りもやんだ。

そして新学期が始まりボウズになった俺はクラスメイトに笑われた。

以上、あまり怖くないし(俺自身がそんなに怖くなかったし)、落ちも無いけど覚えてる限り本当の話です。方言や名称は適当ですが。

以前この板で見た某話(めくらの女の人が廃墟から首を出して云々)にそっくりなので自分でも驚いてます。

あとこの話は俺の体験ネタとしてよく人にも話して聞かせるので知り合いには俺が特定されちゃうかも。

それはやだなあ。

勿論翌年も福岡へ行ったが、以来その神社へは言ってない。

(了)

 


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