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中編 ほんとにあった怖い話 事故・事件

【実話】山の防空壕で体験したこと【ゆっくり朗読】3157

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久しぶりに友人と酒を飲んでて思い出した話。

小さな事件だったけど、全国紙にも載ったし、ニュースにもなってたと思う。

登場人物(仮名)

哲夫 = リーダー格
茂 = 哲夫の幼馴染
富士男 = 大人しくて、頭がいい。
俺 = 忠彦

俺の地元は近年都市のベッドタウンとして開発されるまでは、結構寂れた村だった。

コンビニはおろか、自動販売機すらチャリで20分くらい走らないとないような田舎と言えば分りやすいと思う。

で、当然そんな田舎に娯楽施設なんかもないわけで、当時小学生だった俺たちは、家同士が近いこともあって、標高100m位の小さな山と、そのふもとにある公園で遊ぶのが日課となっていた。

かくれんぼや鬼ごっこはもちろん、公園のほとりにある池ではコイやフナ、ブルーギル、ブラックバスなど色々な魚が釣れるし、山に入ればクワガタやカブトが面白いように捕れる。

俺達以外にも小さな子を連れた母親たちが良く遊びに来ていたのを覚えている。

そんな中、茂が面白い話があるとニヤニヤしながら俺たちを集めたのは、梅雨明けの蒸し暑い日の事だった。

小学校のグループワークで地元の歴史について調べていた茂は、地元史の中から面白い記述を見つけていた。

いわく、俺たちの遊び場となっていた山はいくつかの古墳が残っており、戦時中はその古墳を利用して陸軍の演習場および武器や弾薬の倉庫、防空壕が存在していたというのだ。

陸軍・防空壕と聞いてドン引きする俺と富士男。

哲夫は興味をひかれたような顔をしていた。

「なぁ~、面白そうだろ!!でさ、明日この防空壕に行ってみないか??」

怖いもの知らずの茂は喜色満面。

怖がりな俺と富士男は断固として拒否したが、あろうことかリーダー格の哲夫が賛成してしまったために、やむなく俺たちは山中にあるという防空壕に行く事となってしまったのだ。

当日はうだるような暑さだった。

防空壕に行くのは心底嫌であったが、みんなを待たせるのも悪いと思って、学校から帰るとすぐに準備をして、山のふもとの公園へと向かった。

しかし、公園へ向かう途中に自転車のチェーンが外れてしまい、結局俺が公園につくころには哲夫・茂・富士男全員が少し怒ったような顔で俺を待っていた。

哲夫「なんだ忠彦。怖がって来ないかと思ったぞ」

茂「遅いよ、何してたんだ!」

富士男「……帰りたい」

「あ、ゴメン。自転車のチェーンが外れちゃってさ」

俺がそう言うと、哲夫が少し怪訝な顔をしたまま俺の自転車の側にかがみこんで、あっという間にチェーンをはめてしまった。

「うわっ、スゲー!ありがと!!」

「うん。それよりも、早く行こうぜ。ここ暑い」

哲夫の一声で俺達はいつも使っている小さなケモノ道から山に入った。

茂が言うには、目的の防空壕は山の中腹当たりにあるらしい。

いつも山をかけまわっていた俺達が見つけられなかったのだから、結構奥まった所にあるのだろうというのが茂の見解だった。

俺「暑いね」

茂「まぁな。でも、山の中は外と比べると涼しいよな」

富士男「日影だからね」

哲夫「あちー」

山に入っておよそ30分。学校での出来事やマンガの話をしているうちに茂が大きな声を出した。

茂「あっ、多分こっちだ!」

俺達の背丈と同じくらい伸びた草をかき分け、どこかでひろった木の枝で道を作って行く茂。

俺は一番後ろでみんなの後に続いた。

そしてしばらく歩いて行くと、茂が再び上機嫌に声を上げた。

茂「あったーーーーー!!」

哲夫「おぉ、本当にあったよ」

富士男「……うわー」

樹木の根もとに、その防空壕はひっそりと存在していた。

夏だというのになぜかその周辺はひんやりとした空気が立ち込め、俺は暑さとは別の嫌な汗を額にびっしょりかいていた。

正直俺には霊感なんかない。それでも、なんとなく嫌な感じがしたのだ。

割とマジに「帰ろうよ」と言うが、テンションの上がっている哲夫と茂は聞く耳を持たず、不安そうにしている富士男も、俺をちらっと見るだけで、雑草の生い茂る防空壕の暗い穴をジッと見つめている。

そうこうしているうちに、茂がリュックサックから懐中電灯を取り出した。

茂「よっし、それじゃあ入ってみようぜ!」

哲夫「おう!」

勇ましく防空壕の中に入っていく二人、俺と富士男は顔を見合わせるとしぶしぶ二人に続いた。

防空壕の中は外とは比べ物にならないくらい寒かった。

壁はびっしりとコケおおわれ、湿った空気とカビ臭さが不気味な雰囲気を強めている。

地面も湿っているのか、濡れた岩がぬるぬると滑って何度かこけそうになった。

茂がふざけて顔を照らしたり、懐中電灯を消したりするものだから、俺達はその都度茂に文句を言う。

異変が起きたのは入口から十数メートルほど進み、少し広い空間に出た時だった。

再び茂がふざけて懐中電灯を消した瞬間、光源は茂の持つ懐中電灯しかないのに壕の奥に淡い光が見えたのだ。

暗闇の中での光源ほど目立つ物はない。

俺を含めてその場にいる全員がその光に気付き、そして誰ひとりとして声を上げるような奴はいなかった。

後から聞いた話では、哲夫は外への亀裂があるのかとぼんやり考えていたらしく、茂についてはビビって腰を抜かしていたらしい。

異変は続く。初めは針の先程の光だった謎の光源は、チラチラと揺れるような動きを見せると、徐々にその大きさを変えて行った。

針の先から米粒のような大きさに、さらにテントウ虫、ピンポン玉、野球ボール、そしてその光が子犬ぐらいの大きさになった時、俺達は初めてやばい事になっていることに気付いた。

――あの光は近づいてきている。

あの光がどういった物かは知らない。ただ、とても怖かったのを覚えている。

俺達は一瞬でパニックになった。

われ先に出口に向かおうとするが、隣の友人の顔すら見えない暗闇にくわえて、足元が滑るせいでまともに先に進めない。

なおも、謎の光は俺達に近づいてくる。

先ほどまで子犬程度の大きさだった光はいまや、ドッヂボール程の大きさにまで成長していた。

「うわぁああぁぁぁあああああああ!!」

防空壕の中に響き渡る俺達の絶叫。

手当たり次第に、持っていた木の枝や落ちていた石を光に向けて投げつける。

そのいくつかは確実に当たっているはずなのに、それらが物に当たるような手ごたえはなかった。

それでも、何度もつまずき、ヒザをすりむきながら出口までたどり着いた俺達は、一目散に山のふもとまでかけ下りた。

俺「何だ、何だよあれ!!?」

哲夫「分んねーよ!! それより茂と富士男は!?」

哲夫の声に振り返ると、その場には俺と哲夫しかいなかった。

茂・富士男の自転車はまだ残っている事から考えても、二人はまだあの防空壕に残されてしまっているらしい。

……額から冷や汗が流れ落ちる。

俺「ど、どうすんだよ!あそこにまた戻るのか!?俺はもう嫌だぞ!!」

哲夫「俺だって嫌だよ!!でも、仕方ないだろ、あいつら二人置いとけねーよ!!」

走りだす哲夫。俺は笑うヒザをおさえて、哲夫の背中を追いかけた。

茂はすぐに見つかった。

樹の下の防空壕の入り口で、懐中電灯を持ったまま気絶していたのだ。軽く失禁していたようだが、ヒザや手のひらの傷以外、目立った外傷はないように見えた。

哲夫は茂を俺に任せると言うと、茂の手から懐中電灯を奪い、一人防空壕の中に消えて行った。

どのくらい時間がたっただろうか。実際には5分~10分程度だと思うが、一人待たされた俺が、心細さと恐怖から半泣きになりかけていた頃に、哲夫が防空壕の中からあわてた様子で飛び出して来た。

哲夫「富士男がいない!!」

俺「何で!?」

哲夫「分らん!すれ違いになったのかもしらん。取りあえず茂を運ぼう」

茂の腕を俺達の肩に回して、山を下る。二人掛かりとはいえ、完全に気絶してしまっている茂を抱えながら山を下るのはとてもつらかった。

茂が目を覚ましたのはちょうど山を下りきり、自転車置き場にたどりついた時だった。

「ひぃ!!」と口のはしを震わせて辺りを見渡した茂は、そこに哲夫と俺がいることに気付くと安堵して崩れ落ちた。

哲夫「おい、茂大丈夫か?」

茂「…………」

俺「ケガ、痛くない?」

茂「……首が」

哲夫「首が痛いのか?」

茂は相当疲れきっているようで、まともに答えることは出来なかった。ただ、しきりに首をなでていたのが印象的だった。

要領を得ない茂から視線を外し、ふと俺達の自転車を見ると、富士男の自転車が無くなっていた。

俺「なぁ、富士男の自転車」

哲夫「なんだよ、先に帰ったのか」

俺「くそ、あいつ。俺怖いのがまんして残ったのに」

とりあえず、茂をこのまま放っておくことは出来ないし、富士男も無事だという事が分った俺達は、茂を支えるようにしてそれぞれの自宅へと戻った。

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事件が起きたのはこの日からちょうど三日後、防空壕に行ったあの日のように蒸し暑い土曜の昼のことだった。

その日、俺はちょうど家族との買い物で朝から隣町のジャスコに行っていた。誕生日が近いこともあって、プレゼントを買ってもらう事になっていたのだ。

新作のゲームを買ってもらい、回転寿司を食べて、俺はとても幸せな気分にひたっていた。

その帰り道、あの山の上空にヘリコプターが何台も飛んでいるのを目撃した。

何度も言うが、小さな町だ。何もないのにヘリコプターがあんなに集まるはずがない。

俺の嫌な予感は最悪の形で的中することとなる。

あの日以来、学校を休んでいた茂と富士男。

哲夫と俺は、あんなことがあったんだから心配だけど、仕方がないだろうとそれほど気にしてはいなかった。

家に帰り着いたとたんに、鳴り響く電話の着信音。あわてて出ると哲夫だった。

哲夫「やっと出た!おい、ヤバい事になった!!」

俺「は?どうしたんだよ、ヘリコプターがたくさん飛んでるのは見たけど、何か事件でも起きたのか?」

哲夫「茂が刺された!!」

俺「…………え?」

哲夫「俺もさっき父さんから聞いたんだ!あの公園で茂が誰かに刺されたんだってよ!!なぁ、忠彦どうしよう、茂が死ぬかもしれん!!!」

電話越しで涙声になっている哲夫。俺はただポカンと電話を持って突っ立っていた。

と、同じように携帯電話で誰かと話していた母親は、俺のその様子を見ると、さっと電話を取り上げた。

そして、

「哲夫君?ごめんなさいね。忠彦とてもショックだったみたいで、ちょっと今お話出来ないみたいだから、またあとで、お電話してくれるかな?」

と一言二言話すと、電話を切って俺を抱きしめた。

「ショックだとは思うけど、ちゃんとしなさい。今警察が犯人を探しているから、今日は外に出ちゃだめよ」

「…………」

母は俺にそういうと、電話を取り出してまたどこかに掛け始めた。

茫然自失という言葉があれほど身にしみて分る体験はないだろう。全身の血液が足元から流れ出し、目の奥がカァっと熱くなる感覚。

自分が立っている地面が揺らいでいるみたいで、まともに立っている事すらままならなかった。

これは後日聞いた話であるが、茂の傷は異常なほどひどかったらしい。

全身を数十か所突き刺され、手や腕にも、刺されるのを防いだ時に刻まれた傷が無数にあったらしい。

そして、憎むべき犯人はその日のうちに捕まってしまった。

あまりにもあっけなく、ある意味すがすがしいほどあっさりと。

病院に搬送された茂が証言したのだ。

それまで報道されていた犯人の特徴である、自転車に乗った男などではなく、自分を刺したのは、友人の富士男であると。

事件は急展開を迎えた。その証言のもと、緊急逮捕された富士男。

小学生が級友を刺したという凶悪な事件性から、マスコミや新聞社が連日茂や富士男の家に押しかけ、芸能人の出待ちのように俺や哲夫の家の周りにも、カメラや記者が張り付いたのだ。

学校では緊急集会が開かれ、俺達のクラスにはその後、副担任という形で心理カウンセラーの教師が配属されることとなった。

富士男の家族は当然、地元にとどまれるはずなどなく、なかば夜逃げのように引っ越ししていった。

小さな町で起きた大きな事件。

富士男が茂を刺した原因は、世間ではイジメだと囁かれていたが、俺達はあの防空壕での出来事こそが原因ではないかとにらんでいる。

茂が富士男をイジメているような素振りを見せたことなど一度もなかったし、あの日以降の富士男の行動には不可解な点がいくつかあるのだ。

一つ目、なぜ茂をめった刺しにしたのか。

二つ目、俺達に気付かれずにどうやって山を降り、自宅に戻ったのか。

三つ目、なぜそのあと、家族に理由すら話さず学校を休み、俺達からの電話に出なかったのか。

そして最後に、茂の事件の当日、なぜ俺や哲夫に「今日一緒に遊ばないか?」という内容の電話を掛けて来たのか。

ちなみに茂は生きている。

一時は危ない状態だったらしいのだが、一命は取り留めた。

一番初めに話した久しぶりに酒を飲んだ友人というのも、この茂である。

少しだけ傷痕を見せてもらったが、マンガのように全身傷だらけという事はなく、ほとんど気付かないレベルの物だった。

ただ一つ、ネクタイの襟元に隠された首元の傷を除いて。

そして、これからがこの話をしようと思った原因なのだが、あの日防空壕で俺達が見た光の正体についてである。

元々俺達の地元は、血で汚れた刀を河の水で洗ったという事から地名が付いた土地があるほど、血の多く流れた土地である。

そして、あの小さな山にあった横穴(防空壕)は古墳というよりも首塚であったのではないかというのが俺達の見解である。

事実そのような記述のある文献も存在していた。

茂が見たという光の正体。

それは、様々な動物と落ち武者のような男の顔がごちゃ混ぜになった、生首だけの異形の怪物だったらしい。

茂が刺される直前に見た富士男の顔は、普段の人好きのする富士男の顔ではなく、異常につりあがった目と、だらしなく開きよだれを垂らす口元、腐った獣のような臭い。

どれを取っても、あの時に防空壕で見た怪物の顔そのものだったそうである。

それがなぜ富士男に取憑いたのか、その生首の怪物は一体何者で、あの後はどうなったのか。

全てはあの防空壕の闇の中である。

長々とごめんなさい。事実なので、地元の人がいたら分かるかもしれません。

福岡県小六男児同級生殺人未遂事件

2001年6月9日午後1時20分ごろ、福岡県小郡市干潟の城山公園で「子どもがけがをしている」と119番通報があった。

近くのT小6年、A君(11)が、刃物で背中などを刺されており、重傷。

小郡署が捜査していたところ、一緒にいた同級生の男児(11)がA君を刺したことを認めたため、殺人未遂容疑で補導した。

同署は、同級生を久留米児童相談所に身柄付きで通告する方針。
調べでは、同級生は当初「A君と2人で公園で野球をしていた。A君が打ったボールが遠くに飛んだため探しに行き、戻るとA君が血を流して倒れていた。40歳くらいの男が黄色の自転車で逃げていた」と説明していた。

しかし、A君が「同級生にやられた」と警官に話したため、同級生を追及したところ、涙を流しながら「自分が刺した」と認めた。

現場に落ちていた包丁(刃渡り18センチ)は「自宅から持ってきた」と話しているという。

調べに対し、同級生は「以前からA君にいじめられていた。きょうも、A君が自分の家に来て呼び出されたので、包丁を持っていった」と話しており、同署で裏付けを急いでいる。

A君は小郡市の病院から同県久留米市の久留米大病院に転送されて治療を受けているが、命に別条はない模様。

同病院によると、背中や脇腹など13カ所を刺され、一部は肺に達していた。ほかに頭部などに切り傷もあった。
意識はあるが、精神的ショックが大きいという。
現場の公園は県道沿いで池や田に囲まれ、周囲に民家などはない。

加害者男児は久留米児童相談所から、家裁ではなく児童福祉施設に送られた。11歳であることや、被害者が死亡しなかったことを考慮したとみられ、少年審判は開かれなかった。

男児は補導された当時「いじめられていた」と供述したが、その後の警察や市教委の調べでは、いじめの事実は何一つ確認されなかった。

被害者の両親は「本当のことを知りたい」と思い、何度か男児の状況などを尋ねたが、児童相談所は「守秘義務がある」の一点張り。今でも、地域住民の中には「いじめが原因」と思い込んでいる人も多い。

加害者の家族は事件後に引っ越して、行方は分からない。母親はうわさで、加害者が施設を出たことを知ったが、その言葉には不満と不安が入り混じる。

(了)

[出典:毎日新聞]

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