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絶対行ってはいけない小島【ゆっくり朗読】5433-1229

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私は二十三歳で、海女歴二年のあまちゃんです。

泳ぐのが好き、結構儲かる、という理由でこの仕事をしてますが、不思議な体験をした事があります。

海女になりたての頃、付いてた人に「絶対行ってはいけない」と言われてる場所がありました。

その場所は離れ小島のような所で、岸から距離にして300m位だと思います。

他の海女も絶対そこの小島には行きません。

私は勝手な思い込みで、そこの小島に行く途中で結構潮の流れの速い所があり、海女って結構年寄りが多いので、危ないから行ってはいけない、と言う事だと思ってました。

仕事は潮の満ち引きにもよりますが、ほとんど午前中で終わります。

しかしこの日は、体調もよくまだまだ潜れそうだったので、午後も一人で潜ってました。

そして波も穏やかだった為、ふとあの小島にいってみようかなーと思いました。

潮が速いと思い込んでいたのですが、そんな事もなく、あっさりその小島に到着しました。

なぁんだ楽勝じゃん、などと独り言をいいながら潜ってみると、普段人が来ない為か、もう大きなアワビ、サザエがゴロゴロしてます。

アワビなんて30センチ位、サザエもほとんど20センチ。

もう夢のような光景です。

なに~ここ宝島じゃん、などと思いながら捕りまくっていると、小島の海底のほうに、ぐるりと綱が巻いてありました。

ちょっと気味が悪くなり小島に上がると、小島の側面には数体のお地蔵様が彫ってありました。

なぁに~ここ、なんかヤバイとこぉ?、なんて思ってると、声がしました。

「……ちゃ…」

えっ?何っ?ちゃって……

その声はだんだんハッキリと聞こえて来ました。

「お……ぇちゃん」

「おねぇちゃん」

後ろを見ると、十歳位の男の子が立たっています。

えっ?何処から来たのと思いつつ、かなりビビッた顔してたと思います。

しかし何かが変だ……

話しかけようにも怖くて声が出ませんし、海に囲まれた小島なのに洋服着てるし、しかも濡れてないし……

 

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ヤバイと思った時、男の子は言いました。

「おねぇちゃん何処から来たの?」

私は怖くて叫びたいんだけど、声が出ないで口をパクパクするだけ……

男の子はどんどん話を進めます。

「僕さぁーお家帰りたいんだけど、どう帰ればいいか分かんないし、足も痛いし、頭も痛い、お腹もすいたし喉も渇いたし……助けてよおねぇちゃん」

いままで普通の姿だった男の子が、しゃべった内容に変化していきます。

足が痛いと言うと足が血まみれに……

頭が痛いと言うと顔が血まみれに……

お腹がすいたと言うとガリガリに痩せて……

喉が渇いたと言うと老人のように変化しました……

……ヤバイ絶対ヤバイ!神様ーナンマイダーなどと唱えると、ブチッと音がして自由になりました。

転げるように海に入ると、普段とは違いどんどんどんどん海底に沈んで行きます。

と言うより、引き込まれる感じです。

何よこれーっ!

海って言うのは、黙ってても浮くんですよ、普段は。

実際、浮くよりは潜る方が大変なのに……

結局、海底まで引き込まれました。

すると、そこには小さな洞穴みたいなものがあり、そこに水中眼鏡をした骨の遺体がありました。

恐らくさっき見た少年だなと、直感で分かりました。

そして少し悲しい気持ちになったとたん、ふぅーと吸い込まれる力が弱まり、浮き始めました。

水面まで出ると冷静さを取り戻し、岸まで泳いで帰りました。

岸に着いてからは、あの小島で採ったアワビとサザエを買い取り業者に置いて、すぐ警察に遺体を発見した事を届け出ました。

そしてまた業者のところに戻ると人が集まってきて、

「凄いね~今日は大漁じゃん」などともてはやされました。

そして受け取った金額は、自分でもビックリするほどの額でした。

なんか嬉しいやら悲しいやら……複雑な気持ちで帰路につくきました。

そしてその夜、『あの小島に行ってはいけないよ』と教えてくれたおばさんが来ました。

あがってもらいお茶を出すと、おばさんはこう言いました。

「あんた、あの小島にいったんだって。まったく、あんなに行っちゃいけないって言ったのに、まぁ無事に帰ってきたからいいけどさ……ところで、遺体を発見したのは聞いたけど、他に何か見なかったかい?」

私は経験した事を全て話しました。

すると、「やっぱりかい……」と言いました。

そして、おばさんが話してくれた話はこうです。

終戦後のある夏、男の子三人が海水浴をしていました。

波が高かったせいか男の子達は流されて、あの小島に辿り着いたのです。

しかし、波が高いせいで、なかなか救助の船を出せません。

そして、小島を飲み込む程の波が来て、男の子三人はまた海に……

それを見かねた一人の漁師が船を出しました。

漁師は男の子を一人助け二人助け、三人目を助けようとした時、船が小島に激突して沈没。

男の子三人と漁師は次の日、遺体で発見されたそうです。

海底に巻いてある綱と小島の側面のお地蔵様は、その時のものらしいです。

そしておばさんも昔、その小島の上で遊んでる男の子を見たことがあるそうです。

次の日、警察は捜索したけども、遺体は発見できなかったそうです。

その年のお盆の波の静かな日。

少し怖かったけど、おばさんと二人で船を出し、その小島に線香とお供え物をあげに行きました。

帰りの船でふと、

「ありがとう。おねぇちゃん」

と言う声が聞こえたような、気がしました。

(了)

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