短編 洒落にならない怖い話

幽霊船#1017

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これはもう亡くなった曾祖父に聞いたお話です。

曾祖父が亡くなる数ヶ月前、どうしたことか親戚を集めて色々な話を聞かせてくれたのです。

幽霊船ってお話御存じですか?

私の実家は鹿児島県のとある離島なんです。

凄く田舎でさらに曾祖父の時代ですから、電気とかもまだちゃんと通ってなかったような頃の話です。

なんだか私だけ知って誰にも話さずにいるのってなんだかなので、ここに書きこませていただきますね(なんだか記憶あやふやなところもありますが……)

ある日、曾祖父は知合いと漁に出たんです。嵐になりそうな日だったらしいです。

魚って嵐の前とかって海でじっとしてるから釣れやすいんですよ。

それで、どんどん釣れるのでどんどん沖に出て漁をしていたらしいのです。

知合いの船とはとっくに離れてしまって、もう見えなくなっていたみたいです。

そうしたら、急に風が強くなってきて海が荒れてきて、かなりやばい状態になったそうです(そのころはもちろん木舟です)

そろそろ帰らないとまじでやばい、と思って帰ろうとしたそうなんですが、魚がたくさん釣れるのに夢中で、島はかなり遠ざかっているのに気付かなかったそうです。

霧は濃くなってきたし波は荒れてくるし、かなり覚悟を決めたそうです。

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そうしたところ、霧の向こうから何やら大きな舟の影が見えたんです。

乗り移らせて貰えば助かる! そう咄嗟に思って、舟がこちらに近付いて来るのを待っていました。

当時木舟には水が入って来た時、すくって捨てるように杓子が備え付けられていたんです。

近付いてきた大きい舟の人が、上から杓子を渡すようにジェスチャーしました。

曾祖父は嫌な予感がして、咄嗟に杓子の底を割って、大きい舟に乗っている人に渡したんです。

そうしたら、その人は杓子で何回も曾祖父の舟に水をすくって入れようとするんです。

もちろん底が割ってあるので水は漏れます。

曾祖父は気が長くなる程、ずっと大きい舟の人たちに杓子で水を入れられていたそうです。

木舟って本当に小さいので、長い時間されるとやっぱり沈んでいくんでしょうね。

それから霧が晴れてきて、大きい舟はどんどんと遠くなっていきました。

曾祖父は必死に舟を島まで漕いで帰ったそうです。

沖ではみんな、もう曾祖父はダメだろうと思っていたみたいなので、かなり吃驚されたそうですが。

最後に曾祖父が言ったのは、

「あの幽霊舟に、一緒に漁にでた知合いが乗っているのが見えた。 そいつは帰ってこなかった」

それから数カ月して曾祖父は亡くなりました。

その後、日本昔話で幽霊船の話を見て凄くゾッとしましたよ。

本当かどうかは知らないのですけど、実家の島は毎年よく人が山で行方不明になったり、不思議なことが起こったりするみたいです。

(了)

 

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