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短編 心霊 工事現場の怖い話

建築現場の怪談【ゆっくり朗読】

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自分の弟は以前ビル工事現場で働いていた事があった。

311: 本当にあった怖い名無し 2015/09/05(土) 20:34:53.71 ID:+fIta7zLO.net

ある現場での事。

その現場は着工当時から妙な事故やボヤや停電等のトラブルが多く、進捗が思わしくない現場だったので、日が暮れても作業をしていたらしい。

工事現場では建材運搬用のリフトを使う事がよくあり、その現場でも簡易エレベータの様な作りのものが使われていた。

事故防止の為リフトの下には絶対に入るな、という事がどこの現場でも鉄則ならしいのだが、ある日、作業員の一人がうっかりリフトの真下に入ったところへ、建材を満載したリフトが落下してくる事故があった。

大惨事になった。

あたりは血の海になり、リフトの下敷きになった者がもう生きてはいない事は誰の目にも明らかだったが、とにかく救急車を呼び警察にも連絡した。

目の前のとんでもない光景に、何人かの者が卒倒、もしくは卒倒しかけたり気分が悪くなったりと、これもまた救急病院搬送になった。

現場は警察によって一時封鎖され、作業はすっかり止まってしまった。

警察の調べによれば、事故の原因は老朽化していたリフトに積載量オーバーの建材を積んだ為らしかった。

その現場には複数の建築会社が入っていたが、現場検証等が終わって作業が再開され、弟が顔を出した時には、自分から辞めたり、会社に現場異動を申請したりで何人かが来なくなり、代わりの人員が補充されて顔ぶれが変わっていた。

特に卒倒、卒倒しかけた者のたいがいは辞めたり他の現場に移っていたらしい。

しかしその中で吉住さんという若い男性は、事故当時卒倒したものの変わらずに出て来ていた。

作業をはじめてしばらくした頃、誰かが大声で騒いでいるので見に行くと、吉住さんが同僚に何かを必死に言っていた。

どうしたんだ、と弟がたずねると、吉住さんは、ここのあたり一面に血の手形がべたべたとついている、と周りの壁を指さして今にも泣き出しそうな様子で言った。

血の手形など他の者には見えなかったが、その騒ぎに吉住さんの現場上司は吉住さんをとりあえず帰宅させる事にした。

上司が今日はもういいから荷物を取って来いと言い、吉住さんが自分の鞄を取りに行こうとしたら……吉住さんはひぃっ、と悲鳴をあげ

「そこに目茶苦茶な人がいる!」

と現場の隅を指してその場でまたも卒倒してしまった。

吉住さんは運び込まれた病院で、"精神状態が不安定" だという事で、しばらく入院する事になった。

そしてそのまま、現場に出てくる事は無かったらしい。

しかし、以降、血の手形や目茶苦茶な人、を見たのは吉住さんだけにとどまらず、後日、弟も壁につけられた手形を見てしまった。

弟が壁面に向かって作業をしていて、少し目を離した後、また壁面に向き合うと、そこにはぺたぺたと赤黒い手形が出現していた。

弟と同じ会社の同僚は、作業中背後で誰かがぶつぶつと小声で何かを言っているので振り向くと、そこに"目茶苦茶"なとしか言い様のない姿の者が立っていて、文字通り腰を抜かしたらしい。

同僚によれば、それはあちこちのパーツが歪んで変形しているが、血塗れの作業着らしきものを着ているのでかろうじて人間だとわかる、ガラクタを細かく踏みつぶして、それをミンチと泥でこねた様な人の形をしたもの、だったという。

他、怪我人こそ出なかったものの、その現場では新しく設置されたリフトが再び落下事故を起こしたり、何度もボヤが出たり、突如停電になったりとろくでもない事が相変わらず頻発して、気味が悪い事と仕事にならない事があいまってどんどん人がいなくなり、納期と進捗の遅れと人手不足に現場責任者たちは頭をかかえていた。

しかしその中で弟も他の現場への異動を会社から言い渡され、内心ありがたい気分で現場を移った。

しばらくしてから、その現場に残った同僚の一人に話を聞くと、弟たちが他へ移ってからもおかしな事がよく起こり、配電盤が火元のボヤを再度起こしてまたも作業が出来なくなったので、弟の建築会社はその現場からとうとう撤退してしまったらしい。

現場からはお祓いをという声も出たが受け入れられず、代わりに誰かが個人で御札を貼ったりしていたが、御札はどれもが貼られたまま焼け焦げたり、赤黒い手形が付いたり、いつの間にか床に落ちて泥靴で踏みにじられていたりと、散々な事になっていた。

弟はその現場へ二度と行く事はなかったが、その現場は結局途中で工事を取りやめて、サラ地に戻した後駐車場になったらしい。

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この工事現場で働いていた頃、弟は会社の寮に入っていた。

しかしそこは寮とは名ばかりの、随分老朽化した木造モルタルの建物だったらしい。

寮には二、三人が共同で寝起きをしている小部屋もあったが、大体の住人は二階の大部屋で寝起きしていた。

大部屋というのは六畳二つと四畳半一つの間の襖を開け放ってひとつの大間にしてある部屋で、多い時にはそこで十人以上の者が寝ていた。

その大部屋の一角に、誰も寝たがらない場所があった。

そこに布団を敷いて寝ると必ず"出る"というので。

出入りの激しい寮であったので、怪異の詳細を知る者はあまりいなかったが、大部屋にいる者たちはその場所には荷物さえ置かず、布団を敷く事もなかったらしい。

弟が寮に来た時、先住者からまずはその話を聞かされ、そしてその話に周りの同僚たちが
「そういやお前、霊感あったよな?」といらぬ事を言った。

霊感がある、とはいっても弟は時々金縛りにあったり妙なものを見たりする程度でしかない。

しかし皆が勝手に盛り上がり、その場所にはどんなものが出るのか、弟が確かめる事になってしまった。

もちろん弟は断ったが、先輩が

「俺が隣りに寝て、何かあったら助けてやるから」

と言い、先輩命令でその場所に寝る事になってしまった。

その夜。

同僚たちがくだんの場所に早々と布団を敷き、愚弟もよせばいいのにそこに横になった。

床に入った時には何も感じなかったという。

夜中。弟はぽかりと目を開けた。

はじめ何故目が覚めたのかわからず、あたりを見回そうとした。

そして自分がすでに金縛り状態になっていて、動くのは唯一目玉だけであるのに気付いた。

驚きながら自分の足元の白壁をふと見ると、壁に人影があった。

しかし、それは何故か逆さ吊りになっている様な上下逆の姿をしていた。

(なんだ?) と見ていると

ざわざわ

ぞわぞわ

という音がしている事に気付いた。

それは自分が見ている逆さ吊りの影から聞こえていた。

影の髪らしきだらりと長い部分が風に揺れている様に、ぞわりぞわりと音をたててうごめいていた。

弟は息をのんだ。

その時。

不意に何者かの手が弟の両足首を掴み、揺れうごめいている影の方に引っ張りだした。

その力は物凄いもので、弟は必死に手を振り払おうともがいたが身体は金縛り状態のままで思う様に動かず、声をあげ様としたが声すら出なかった。

もがきながら周りを見ると、助けてやると言っていた先輩は背を向けて眠っていた。

手はぐいぐいと影の方へ、壁の方へと身体を引き込んでゆく。

弟は自分の足がすでに壁にめり込んでいる様な気がした。

そこで記憶は途切れていた。

次に目を覚ますとすでに朝になっていて、周りの者は起き出して身支度をしていた。

何だったんだ、あれ?

夢?

弟は呆然としながら半身を起こした。

そこへ同僚たちが朝飯だから早く起きろと言いに来て、そのうちの一人が、

「ゆうべはお前がえらくうなされててうるさかった、やっぱり出たのか? 」

と言った。

それに弟が

「うん、夢だか何だかわからないけど……」

と言いながら布団をめくると、弟の両足首に赤い手形があった。

その手形に、寮内は朝からひと騒動になった。

以後、もちろん弟がその場所で寝る事はなかった。他の者たちも。

後で先輩が言うには、弟がうなされているのに目を覚ますと、弟の足元の壁で黒いものがうごめいていたので怖くなり背を向けてしまったという。

先輩はすまん、と手を合わせ後日昼をおごってくれた。

手形はしばらく消えず、手形のついているところが風呂に入っていても異様に冷たく感じて気味が悪く、寝る時はうちの親が持たせていたお守りを足首にして寝ていたという。

それから何日かした朝、手形は消えていた。

そしてお守りも。

弟は布団をはたいて探したが、お守りはとうとう出てこなかったらしい。

壁に現れた逆さ吊りの影については結局何もわからず、それから一年程で弟は寮を出たので後の事は知らない……

(了)

[出典:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1440010353]

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