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短編 怪談

訪ねてきた同級生【ゆっくり朗読】

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連休で実家の奈良に帰ったときの話。

元々過疎がすごい村出身で、中学のときとかクラスは一つで二十人満たないという、まあド田舎だったんだよ。

でも町の人とか、それだとクラスみんな仲良しとか高校のときや大学のときも言われるんだけど、全然そんなことない。

高校でバラバラになって連絡なんか取らない、というか取れないとかが現実なんだよね。

だからと言ったらいいわけになるんだけど、クラスメイトの顔なんて覚えてないのよ、割と本気で。

で、ここからが体験した話になるんだけど。

実家に帰ると姉ちゃんも帰ってきてた。

まあそれで他愛のない世間話とか、上司の嫌味とか言い合って盛り上がったりしてた。

昼くらいにおかんが「買い物行ってくる」と出ていった。

家で姉ちゃんと二人きりになって、すぐに玄関のチャイムが鳴った。

郵便かと思い、玄関に出たら男の人が立っていた。

「ひさしぶり」と声をかけられたんだよ。

俺もホントなさけないんだけど誰かわからず

「えーとどちら様で?」と言うと相手は

「中学の一緒だった柳田だ」といってきた。

俺も薄情な人間で、それでも誰だかわからない状態だったんだけど、だんだん思いだしてきたのよ。

中学のとき柳田と担任に怒られまくった日々を。

で俺もなんか変にテンションが上がって、柳田に

「久しぶりやなあ中入って話をしよう」と言って柳田を家にあげた。

姉ちゃんもなんか笑えるくらいテンション上がって、姉弟そろって柳田をおいて盛り上がってた。

ただなんていうか俺も姉ちゃんもなんか柳田が暗い…って感じたのよ。

ただでさえクラスでぎゃーぎゃー騒いでた方だったのに。

それとしゃべり方がおかしいのよ。

なんかロボットみたいに一言ずつわけて話しているみたいな感じで。

まるで一回使った言葉を使うなみたいなルールがあるみたいに。

はっきり言えば気味悪いみたいな印象は受けた。

まあそれでも昔話で盛り上がってたんだけど、近況を聞くと黙るんだよね。

ピタッと話が止まる。大学までの話は楽しそうに話すのに。

まあ不景気だし、あんま言わないほうがとみんな思うかもしれんが、普通それだったら友人の実家に来たりはせんだろ。

嫌でもそういう話になるわけだし。

それでだんだん話のネタがねえ…と心で思い出してたときまたチャイムが鳴ったのよ。

また俺が出て行ったら、うちの法事とかに来てくれてる和尚さん。

「やっほー、さしぶりやなあ」と立っていた。

旅行で北海道行ってきたからお土産、と言って蟹やらお菓子を持ってきたとのことだった。

そしたら急に和尚さんが「臭い」と言い出したのよ。

さすがに失礼やでと俺も言ったんだけど、和尚さんの顔がものすごいマジメな顔になってた。俺もびっくりしたくらいに。

すると和尚さんが「誰か来てるんか?」と聞いてきた。

普通に中学の同級生が来てると伝えると、何も言わずに家に上がりこんで来たのよ。

俺も???となったんだけど、数珠を取り出してて、ただ事じゃねえなと思い、柳田がいる部屋まで案内してたら姉ちゃんが泣きながら俺らのところに走ってきた。

「どうした!」と和尚さんと俺が言うと、姉ちゃんは

「柳田の顔が回った」

さすがに俺も「嘘でも面白くないで」と言ったんだけど姉ちゃんは「本当やって!」と泣きくずれてしまった。

そうこうとやってるうちに部屋について和尚さんがドアを開けた……

今でもというか頭に焼き付いてしまったよ。

首をひたすらゆらしてる柳田がいた。

もうゆらすってレベルじゃないくらい。本当にありえないスピードで。

俺も姉ちゃんも悲鳴をあげてしまった。

だってある程度首を動かしたら、今度は顔とか首をありえない方向に回すんだもん。

それこそエクソシストみたいに。

和尚さんを見ると普段法事とかで使うお経と違う何かをぶつぶつ言っていた。

そのおかげか知らんが柳田は俺らに襲い掛かってくることはなかった。

すこし俺も落ち着いたんだけど、そしたら今度は部屋から匂う異臭で気分が悪くなった。

これもすごくて、魚が腐ってもこんな匂いしねえぞ、と思ってしまうくらいな匂いだった。

俺は柳田を凝視したたんだが、なんか口元は動いているのは分かったんだけど、何言ってるのかは残念だがわからなかった。

というかそんな余裕がなかった。

でもなんか苦しんでる様には見えた。

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だんだん和尚さんのお経が効いたのか柳田が半透明になった。

もう驚きすぎて俺らも逆に冷静になってしまったんだが、そしたら柳田?から今度は話してる言葉が分かった。

女性に対するこれでもかというくらいの恨み節だった。

そしてそれは聞いたこともないような叫び声に変わった。

和尚さんが「耳ふさげ!」と怒鳴ってきたのであわてて耳をふさいだがもう意味がないくらいの絶叫だった。

絶叫で本当に耳が痛くて思わず伏せてしまったんだが、和尚さんに「もう大丈夫や」と言われ顔を上げるともう柳田はそこにはいなかった。

でも異臭はこれでもかというくらいに残っていたので、あれが幻覚とかではないというのも嫌でも分かったけどね。

姉ちゃんは和尚さんにあれは何ですか?とたずねると和尚さんは

「柳田君やったな、あれの名前。まあ柳田にしとこか」といい、ゆっくり話し始めた。

和尚さんいわく

「柳田は自殺したんだろう。それも首吊りで。それで死ぬ直前の形であんたらの前に出てきたんだろう」と。

「でもそうしたらさ、クラス全員に出るのか?」

と俺も真顔で和尚さんにいったら

「自殺するとき本当は自殺したくない、止めてほしいという気持ちが柳田にはあったんだろうな。その止めてほしい人に君がいたんだろうな」と。

そうこう話しているうちにおかんも帰ってきて、結局和尚さんも話しをあっさりきりあげてそれで帰ってしまった。

帰る間際に今日のことは気にするな、それと柳田のことはもう忘れろとのことだった。

おかんは「え~何あったんよ~」と言ってきたが、話す気にもなれんかった。

おかんには止められたが結局その日だけ実家に泊まり、次の日にはもう実家をでた。

姉ちゃんにいたってはその日のうちにだった。

これがこの連休中に体験したことです。

結局柳田のことは調べるのはやめました。なんかまた来るんじゃないかと思って。

でもあの首の振り方だけは少しではなく、かなりトラウマになりました。

こういう現象詳しい人はなんでもいいから教えてほしいです。

(了)

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