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短編 r+ 山にまつわる怖い話

杉の木の方々 r+2832

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昔、母方の実家の裏山でちょっと不思議な体験をしたことがある。

子供の頃、普通に野山を駆け回って遊ぶのが日常だった俺は、よく裏山の中腹にあるお気に入りの場所で遊んでいた。そこには開けた平地があり、立派な杉の木が三本そびえていた。その日は、いつものように木登りをして遊んでいるうちに、不意に眠気に襲われた。普段はそんなことはなかったのに、その日に限って、眠くてどうしようもなくなった。

山を降りるのも面倒だった俺は、足元に広がるクローバーの上に寝転び、うとうとしてしまった。少しだけ寝るつもりが、目が覚めた時には月明かりに照らされた静かな夜の世界が広がっていた。

周囲の異様な静けさと青白い風景に心細さを感じた俺は、急いで山を降りようと立ち上がった。だが、その時、不意に背後から声をかけられた。

「坊主、こんな時間に何をしてるんだい?」

驚いて振り返ると、初老の男性が二人立っていた。優しげな笑みを浮かべたその顔を見て、俺は少し安心し、これまでのいきさつを話した。

「坊主、よくこの辺りで遊んでいるね。藤井さんとこの孫か」と、二人はどうやら祖父母を知っている様子だった。一人が懐中電灯を貸してくれ、もう一人は笹の葉で包まれた何かを手渡してくれた。

「暗いだろうから、気をつけて帰るんだよ」と言われ、俺は礼を言って山を降りることにした。懐中電灯のおかげで真っ暗な山道も難なく進むことができ、ようやく母の実家にたどり着いた時には、家中が大騒ぎになっていた。俺が戻らないことで近所の人たちまで巻き込んだ捜索が始まる直前だったらしい。

山での出来事を家族に話し、借りた懐中電灯と笹の包みを見せた。父が包みを開くと、中から桜餅が三つ出てきた。祖父母と母はどこか複雑な表情をしていたが、その場では特に何も言わなかった。

後になって母に聞いてみると、彼女も子供の頃に同じような体験をしたという。違いは、懐中電灯ではなく、老人の一人が山を降りるのを手伝ってくれたこと。そして老人は三人いたということだった。さらに祖父母の話でも、似たような体験談が出てきた。

裏山は母方の実家が代々受け継いできた山で、杉の木も祖先が植えたものらしい。家族の話を総合した結論として、俺たちはその老人たちを「杉の木の方々」だと考えることにした。現実か幻かはわからないが、不思議と心温まる体験だった。

ちなみに、懐中電灯はその後行方不明になり、桜餅はありがたくいただいた。

信じるか信じないかは別として、ただ、思い出として胸に残る話だ。

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