母の実家は資産家なんだが、ある言い伝えがあった
ある男が悪い神様に「金持ちにしてほしい」と毎日毎日お願いした。
ある日、その神様が「子供と引き換えにするなら金もちにしてやる」と答えてくれた。
その時結婚すらしていなかった男は二つ返事で引き受けた。
その後、男はとんとん拍子に金持ちになった。
そして、以前から好意をもっていた女を嫁にもらい、幸せな毎日を送っていた。
ところが、幸せな日々は簡単に崩れさった。
最初の子は、目が真っ白な状態で生まれ、数日で死んでしまったのだ。
さらに、次の子は頭が無く人間の形すらしていなかった。
この時になり、男は神様との約束を思い出し、神様に何度も「もう金は要らないから子供を助けてほしい」とお願いするが、神様から返事はなかった。
やがて嫁は三人目を妊娠。
様子のおかしい夫に問い詰めたところ、夫は全てを白状した。
嫁は高名なお寺にいき、事情を話し、何とか子供を守ってほしいとお願いしたところ、子供を守るお地蔵様を祀る様にと勧められた。
そして、庭の一角にお地蔵様をたて、毎日毎日「子供を守ってください」とお願いした。
すると、五体満足で元気な男の子に恵まれた。
これでもう大丈夫、と安心していたが……
次に生まれた子は真っ白な子ですぐ死んでしまった。
二人は次から、妊娠するとお地蔵様を準備し、生まれるとすぐにお地蔵様にお願いするようになった。
その後生まれ子は皆丈夫に育ったため、本家では子供が生まれるとすぐお地蔵様を建てるのが慣わしとなった。
ちなみに、お地蔵様は本家筋の人間の分しかたてない。
死んだ場合、また、女の子は他所に嫁にいくとお地蔵様を撤去し、一番おくにある一番古く大きなお地蔵様に合併させる。
また、長男以外は跡取りではないが、分家筋の長になるためお地蔵様は残しておくが、その嫁やその子の分は建てない、という決まりがある。
現在は、跡継ぎである叔父(母の弟)とその男兄弟三人分 + 叔父の子三人分 + 叔父の長男の子ニ人の九体がある。
……の、はずなんだが、実は八体しかない。
祖父の代の話になる。
当時の長は曽祖父でかなりの暴君だったらしい。
女関係にだらしなく、複数の女と関係をもった。
そして、跡継ぎである祖父もかなりの暴君で、あちこちの女に手を出しつつ、身元のしっかりした女(俺の祖母)と結婚したが、祖母とはうまくいっていなかったようだ。
祖母が女の子(俺の母)を生み、さらに跡継ぎである男の子を生んだ後、二人はほとんど会話もしなくなった。
そして祖父は、以前から関係のあった元芸者を家の離れに住まわせるようになった。
その元芸者が妊娠し、もうすぐ出産という時期に、跡継ぎである長男が流行り病で死んでしまった。
直後に生まれたのが男の子であったために、曽祖父は激怒した。
芸者の子供を跡継ぎにするわけにはいかん、と。
そのため、生まれた子供の出生届は出されず、また、お地蔵様もつくられなかった。
2年後、祖母が男の子を生み、やっと元芸者の子は出生届が出された。
だが、何故かお地蔵様はつくられなかった。
恐らく、もう既に元気に育っていたから必要ないと判断されたのだろう。
実際、叔父はその後もすくすく何の問題もなく育った。
数十年後、祖母は、脳梗塞の後遺症で身体機能が残っているのに、杖で殴りつける等の暴力を篩うようになった祖父から逃げて熟年離婚した。
その後、ボケてわけのわからなくなった元芸者と祖父を勝手に入籍させ、祖父の死後に財産を掠め取るということまでしでかした。
でも、それはまた別の話。
話を元に戻す。
お地蔵様をつくられなかった叔父だが、実は叔父の子が全員アウトだった。
長女は耳が聞こえないうえ知的障害がある。
長男は内臓疾患に加えて骨形成不全症がある。
次男は脳に障害があり寝たきり。
本来お地蔵様がつくられないことで守られないのは叔父だったはず。
だが何故か叔父の子が全員障害をもっているのは、やはり何か影響があるんじゃないかと思うのだが、当然、そんなもの立証できるわけもない。
叔父の子も良い歳なんだが誰一人として結婚できず。
いや、結婚できないどころか、親の介護が必要な状態で、叔父の家は叔父の代で姿を消すことになる……
(了)
[出典:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1423664447]