短編 集落・田舎の怖い話

ささら【ゆっくり朗読】3200

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うちの実家は、東北の田舎なんだが、旧暦の正月に『ささら』っていうお祭りがある。

祭事に詳しい人なら地区まで特定できそうだから明記はしないが、そのくらい田舎だっていう話。

俺も子供の頃に屋根裏部屋とか物置とか探検するの好きでその小部屋も知っていた。
(木造で隙間多いので明るいから怖くは無い)

居間の隣に、襖を隔てて、親戚集まった時に宴会する様な応接間が有る。

その隣に仏壇や昔の調度品、旧家によく有る母親の子供の頃に買った人形とか母の兄弟の五月人形とかが、うっすらとホコリを被って置かれてる様な部屋がある。

その部屋の押入れの奥に、その小部屋が有る……

もう何年も昔に、母方の親が相次いで亡くなって家を手放す時に、俺の母の兄である叔父から聞いた話。

先に言っておくと母方の祖父もその叔父も酒癖が悪くて、親戚筋では有名だった。

酒のせいで口滑らせたんだと思う。

あの部屋ってのは、この辺の部落の旧家には何箇所か有って、その昔『夜這い』の風習とかが残ってる頃の名残だという。

戦前から子不足に悩んでた付近の住民が、あの小部屋で逢引して、なんとか子供を増やそうとしていたらしい。

そんな中、ある家系に池沼の娘ばかり生まれる様になって、近くの神社の家が「これは祟だ」とか言い出した。

それで娘を引き取って、巫女として養ってたらしいんだが、戦後の貧しさから、その池沼の姉妹達に客取らせて金貰ってたらしい。

そんな忌まわしい稼業に使われてたのが例の小部屋だった。

神主は祈祷だと言って、宵の口に巫女を旧家に行かせる。

その家の人間は巫女を小部屋に通し、順に客を招きいれて相手をさせて金を取り、その幾らかが神主の所に入る事になる。

『ささら』というのは、その巫女が孕んだ水子を慰める意味も有るらしい。

叔父は、

「俺はこの事を、自分の息子には話さない。俺はここから離れるし、お前の母親も嫁に行った。事実上、この土地で五百扇の家を継ぐのはお前になるから話すんだ」

と、ぐでぐでになりながら言ってた。

叔父も子供の頃に巫女が客取ってるとこ盗み見た事が有るようだから、

「その頃はまだ、分家した家系に池沼の娘が生まれてたんだろう」

と言っていた。

ちなみにその部落の神社は、叔父が中学出る前に火事で無くなった。

今はその家がどうなったかは誰も知らない……

(了)

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