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外にいたのは rw+4,777

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あれは、僕がまだ中学三年生だった頃だ。

元旦の夜だったことだけは、はっきり覚えている。

紅白が終わり、父は無言でテレビを消し、母は「いい初夢を見なさいね」と言った。弟は眠そうな目で僕の袖を引っ張り、「兄ちゃん、夜中に起きちゃだめだよ」と意味のわからないことを言った。

その時は笑って流した。

深夜、僕は心臓を掴まれたような衝撃で目を覚ました。

誰かに見られている、という感覚。

夢の内容は思い出せない。ただ、目が覚めた瞬間に「ここにいてはいけない」と強く思った。

喉が渇いていた。

リビングへ向かうと、光が漏れていた。

真夜中なのに、家族全員がテレビの前に並んで座っていた。

画面は無音。砂嵐とも違う、白い揺らぎだけが映っている。

窓がすべて開いていた。

真冬の空気が、刃物のように部屋を満たしている。

父も母も弟も、肩を寄せ合いながら、画面を見つめている。

誰も瞬きをしていない。

「何やってんだよ」

声が出た。

弟が、わずかに首を動かした。

「だって、外に……」

そこまで言って、弟は黙った。

泣き出すでもなく、ただ口を閉じた。

両親が立ち上がる。

ゆっくりと窓を閉める。

鍵をかける音が、一つずつ響く。

テレビが消える。

父が僕を見る。

無表情だった。

怒っているのか、怯えているのか、何もない。

母が弟の肩を抱く。

三人とも、僕を見ない。

「もう寝なさい」

誰が言ったのか、わからない。

僕は自室に戻った。

眠れなかった。

翌朝、その話をすると、両親は怪訝な顔をした。

「窓? 開けるわけないでしょ」

弟は何も言わない。

僕を見ると、視線を逸らした。

二月に入る頃から、背中と頭皮が焼けるように痒くなった。

皮膚科でも原因はわからない。

風呂上がり、弟が薬を塗りたいと言った。

背中を向けた瞬間、バチン、と強く叩かれた。

思わず怒鳴ると、弟は泣き出した。

声を出さずに、涙だけを流す。

顔から色が抜けていく。

父と母も同じだった。

三人が並んで、無表情のまま涙を流している。

口が動いている。

「……まだ……」

「……外に……」

聞き取れない。

その瞬間、視界が赤く染まった。

血の色ではなく、夕焼けのような赤。

やがて色は褪せ、古い写真のような茶色に変わる。

意識が落ちた。

目を覚ますと、知らない天井だった。

いや、知らないはずなのに、知っている。

親戚の家だ。

叔父が覗き込んでいる。

祖父母もいる。

僕の体は包帯だらけだった。

「大丈夫か」

何が、とは言われない。

「家は?」

と聞いた。

沈黙。

「家族は?」

祖母が顔を覆った。

叔父は、ゆっくりと言った。

「お前は外にいた」

それだけだった。

何があったのかは、誰も説明しない。

僕が尋ねると、視線を逸らす。

「覚えていないなら、それでいい」

祖父が言った。

けれど、僕は覚えている。

窓は開いていた。

家族はテレビを見ていた。

弟は「外に」と言った。

そして、僕は外に出た。

なぜだろう。

コンビニなら安全だ、と考えた。

誰に教えられたわけでもないのに。

背中の包帯が外されたとき、看護師が一瞬だけ手を止めた。

鏡を渡される。

背中の中央に、何もない部分があった。

痣の中に、綺麗な手のひらの形。

僕のより、少し小さい。

弟のものだと思った。

でも、指の数が、五本ではなかった気がする。

数え直そうとすると、祖母が鏡を取り上げた。

「もう見なくていい」

それから五年が経った。

家には戻っていない。

跡地には何も建っていない。

更地のままだ。

一度だけ、夜に立ち寄ったことがある。

風が吹いていた。

窓のないはずの場所から、冷気が流れてきた。

背中が痒くなる。

振り向くと、誰もいない。

帰ろうとすると、背後で音がした。

カチ、と。

鍵を閉める音。

振り返っても、何もない。

その時、ようやく気づいた。

あの夜、窓を閉めたのは父だった。

鍵をかけたのも。

では、外にいたのは誰だったのか。

弟が言いかけた言葉。

「だって、外に……」

あの時、家族はテレビを見ていたのではない。

窓の外を見ていた。

テレビの黒い画面に映っていたのは、

家の中ではなく、

外に立っている何かだったのかもしれない。

そして僕は、

それを見に、

外へ出た。

あれ以来、夢を見る。

真夜中、窓が一斉に開く音。

冷気が流れ込む。

家族が並んで座っている。

テレビは消えている。

黒い画面に、四人が映っている。

父、母、弟、

そして、もう一人。

その背中には、手の跡がない。

僕は今も、ときどき夜中に目を覚ます。

喉が渇く。

窓の鍵を確かめる。

全部閉まっている。

それでも安心できない。

外にいるのが、

まだ僕なのかどうか、

確かめる方法がないからだ。

[出典:64 :本当にあった怖い名無し:2014/06/27(金) 01:12:32.89 ID:YZIwNUmx0.net]

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