私は本家の土地の中に建てられた自宅で生活していましたが、夜になると本家で寝ていました。
97 : 2007/03/05(月) 00:56:00 ID:txoIzhls0
家の周りはというと、広い田園群や耕地で、その中を県道が走っていて、また小さな集落が点々とある田舎です。
2002年、あれは私が中学二年生の時、多摩川のタマちゃんが話題になっていた頃の話です。
祖父は猟犬を飼っています。
今でこそ祖父は猟をやめてその猟犬も本来の職を失ってしまいましたが、猟の為に祖父から躾や訓練を受けており、仕留めた獲物を獲りにゆき、滅多に吠えることの無い忠実な猟犬でした。
しかしある日を境に、夜中になるとその犬が何かに向かって吠え始めました。
私は懐中電灯を持って、犬小屋の周りを見に行きますが何もいません。
祖父も私も、犬は猫に向かって吠えているのではないか、と最初は思っていました。
しかし猫が発情期でもないのに、毎日庭に何をしに来るのかと疑問に思いっていました。
そんな日が毎日続いたある日、私はいつも通り本家の寝室で寝ていました。
明け方頃に目が覚めると、また犬が吠えています。
自宅に戻るときには一度庭を通らなければなりません。
そのときに犬が吠えている猫を脅かしてやろうと思い、ドアを出て犬小屋の方を見ました。
その瞬間、背筋が凍りつきました。
犬が吠えているのは猫などではなかったのです。
そう、テレビのドキュメンタリー特番に出てくる《宇宙人》のイメージそのものが立っていました。
《宇宙人》の短い足に対して腕は異様に長く、地面につきそうでした。
犬と同じくらいの頭の高さで目と鼻の先に立って、吠えられいるのにも関わらず《宇宙人》は微動だにしません。
私はというと固まったままその場に突っ立っています。
しばらくその状況が続くと《宇宙人》は私に見られたのに気付いたのか犬の横を通り、どこかへ去っていきました。
それが私の気配に気が付くのにはそう長くかからなかったようですが、私には長い時間に感じられました。
私は去っていくそれを見送り、その後もしばらく何が起こったのかわからないまま立っていました。
突然、ハッと気が付いた私は自宅に向かって全力で走っていました。
家では起きたばかりの両親が、血相を変えて家に飛び込んできた私を見て驚いています。
その後明るくなり、現場を確かめに行きましたが何の痕跡も残っていませんでした。
事の一部始終を両親や学校の友人などにも説明しましたが、寝起きの子供が暗い庭で見た怪物など、誰が本当に信じるでしょう。
そして、その夜から犬が吠えるのをパッタリとやめました。
今となってはあれが何だったのか知る術はありませんが、あのときの光景はしっかりと脳裏に焼きつき、今でも毎晩あの犬小屋の周りに何もいないか確認してしまいます……
(了)