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狐火と肩の霊 r+3356

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霊感など微塵もない私だが、先日ほんのりとした怖い体験をした。

あれは昨年の秋頃だったはずだ。夕暮れ時、近所のスーパーに買い物に出た帰りに、ふと思い出した。そういえば今日はいつも買っている雑誌の発売日ではないか。そこで私は本屋に立ち寄ることにした。本屋はスーパーに隣接するビルの最上階にあり、そこからスーパーへ直接つながる連絡通路もある構造だ。

雑誌を買い、本屋を出てスーパーへ向かう途中、その連絡通路で「すいません」と声をかけられた。振り向くと、そこに立っていたのは中年の女性。まったく見覚えのない人だったが、彼女はこう尋ねてきた。

「看護婦さんですか?」

私は即座に否定した。看護婦などではないし、職歴も一切関係ない。普通の会社員であり、転職やアルバイト経験すらない。しかし、彼女はさらに質問を重ねてきた。

「以前、看護婦をしていらっしゃいませんでしたか?」

その執拗さに困惑しつつも、再び「違います」と答えた。夕暮れ時で、周りにはそこそこの人がいた。誰かと間違えたのだろうと思ったが、彼女は納得しない様子だった。

「ご家族や身近な方にご不幸がありませんでしたか?」

そんな突拍子もない質問に「いいえ」と首を振ると、今度はこう聞かれた。

「女性の方で亡くなった方は?」

「……いません!」

私はさすがに苛立ちを感じた。これ以上話を続ける理由もないと思い、その場を去ろうとした。しかし彼女は立ちはだかり、突然私の背後を見つめた。そして一言。

「気づいていらっしゃらないんですか?」

「はあ?」

「あなたの肩に、女性が……」

意味がわからなかった。彼女が語るところによると、私の首に巻き付くようにして顔が潰れた女性の霊がいるらしい。その霊は自縛霊で、さらに良くないものだと断言する。加えて、水子の霊や動物霊まで私についていると次々と話し出した。

彼女自身もかつて同じような霊に取り憑かれ、除霊をしてもらった経験があるのだとか。それゆえに私を看護婦だと思ったという。話の締めくくりには、「あなたの足が見えない」とまで言われた。将来、事故で足を失う可能性があるというのだ。

そこまで言われて、私は「これは霊感商法か何かの勧誘ではないか」と疑った。しかし彼女は何も売りつけることなく、「早くお祓いを受けた方がいいですよ」とだけ言い残して立ち去った。怪訝に思いながらも、帰りにスーパーで粗塩を買ったのは言うまでもない。

この出来事以来、不安でパワーストーンを身につけたり、粗塩を枕元に置いて眠ったりしたが、幸いなことに怖い思いをすることは一度もなかった。ただ、ふと気になることがある。私の祖父の妹――つまり大叔母は、若い頃に脊髄にウイルスが入った影響で下半身が麻痺し、何十年も入院生活を送っている。彼女はよくこう言っていた。

「うちの家族の悪い部分はみんな私が持って行ってあげる。」

また、彼女は私をとても可愛がってくれた。だから中年女性が見た霊というのも、大叔母の深い思いや心配の現れだったのかもしれない、と思うことがある。

それにしても、自称霊感が強い友人には何も言われたことがない。そもそも、本当にそんな霊が憑いているのだとしても、まったくの他人に声をかけるものだろうか。それともよほど危険な霊だったのだろうか。

……だが、今のところ私に何の異変も起きていない。健康そのものだし、怪我や病気もない。不思議で仕方ないが、担がれたのならそれでいい。

ところで、この話にはもうひとつ、私が幼い頃に大叔母から聞いたエピソードがある。

怖いというより、不思議な田舎の風景といった趣きの話だ。

大叔母が若い頃、田舎の我が家は大家族で、敷地内に母屋のほかに別棟があった。別棟の一階は納屋で、二階が子供たちの寝室になっていた。夜のお手洗いは外にひとつだけ。街灯もほとんどない時代で、夜は真っ暗だったという。

ある夜のことだ。寝ていた大叔母が、妹に起こされた。妹は体が不自由で、松葉杖や這うようにして移動していたが、「お手洗いに行きたい。でも怖いから窓から見ていてほしい」と頼んできた。大叔母は渋々起き上がり、二階の窓を開けて妹の動きを見守った。

妹は何度も振り返り、大叔母が見ているか確認している。大叔母は手を振って、「見てるよ」と伝えながら、妹が無事にお手洗いに入るのを確認した。

それから窓の外をぼんやり眺めていた大叔母。星空が広がり、たまにフクロウの鳴き声が聞こえる。そんな静かな夜の田舎に、突然「ギャーン」という甲高い声が響いた。

狐だった。狐は、猫を叩きつけたような悲鳴のような声で鳴く。田舎では珍しくないが、真夜中に聞くとやはり不気味だ。妹が戻ってくるのを待ちながら、気がつくと大叔母は山のほうを見ていた。

その山は、晴れているはずなのに闇に包まれている。その中に、ぽつりと青白い火が灯った。驚いている間に、それは次々と増え、山全体が青い狐火で覆われていく。あまりに幻想的な光景に見入っていた大叔母だったが、階段を駆け上がってきた妹の形相に肝を冷やしたという。そしてそのまま二人で布団をかぶり、眠りについた。

狐火に特に実害はなかったそうだ。しかし、その山というのが、斜面に階段状のお墓が並ぶ小さな山だった。

ある時、母がその山の前に広がる田んぼの草刈りをしていた。昼間だというのに、誰もいないお墓から仏壇の鐘を鳴らす「チーン」という音が聞こえたという。青ざめた顔で帰ってきた母の話を聞き、私はその山の前を通学路にしていたことを思い出して震えた。

今でもその山や狐火を思い出すたび、背筋がぞっとする。

今回の話を思い出して気になった私は、実家に電話をしてみることにした。

受話器の向こうで母が出た。

「みんな元気よ」と答える母の声を聞いて、一安心。だが、これで完全に心配が消えるわけではなかった。母には前科がある。離れて暮らす私に余計な心配をかけまいと、胃の三分の一を摘出する手術を受けた際も、祖父の入院や手術の話も、すべて事後報告だったのだ。

そのため、父が帰宅する時間を見計らい、再び電話をかける。父は普段通りの様子で、特に問題はなさそうだった。「みんな元気だ」との言葉にようやく胸を撫で下ろす。

だが、そういえばと思い出したことがある。今回声をかけてきた中年女性が語った霊の話とはまったく違うが、私にはほんのりとした不思議な記憶がある。それは大叔母から聞いた昔話だ。

大叔母がまだ若い頃、我が家には母屋とは別に納屋があり、納屋の二階が子供たちの寝室になっていた。お手洗いは屋外にひとつだけ。真っ暗な夜にそこへ行くのは、子供にとって一大事だったという。

ある晩のこと、妹が大叔母を起こし、窓から見守ってほしいと頼んできた。妹は足が悪く、松葉杖や這うようにして移動していたため、心細かったのだろう。大叔母は仕方なく窓を開け、外のお手洗いに向かう妹の後ろ姿を見守る。

妹が無事にお手洗いに入ると、大叔母は窓の外に広がる星空を眺めながらぼんやりと考え事をしていた。そんな中、突然「ギャーン!」という不気味な声が響き渡った。狐だ。田舎では珍しくない存在とはいえ、深夜にその鳴き声を聞くとさすがに背筋が凍る。

不安を覚えながら山のほうを見ていた大叔母は、そこで奇妙なものを目撃する。晴れているはずの夜空が黒い闇に覆われ、その中で青白い光がぽつりと灯る。その光は次々と増え、やがて山全体が狐火で埋め尽くされた。

幻想的な光景に見惚れる一方で、急に階段を駆け上がってきた妹の気迫に驚き、布団をかぶって震えるように眠ったという。

この狐火に関する話には実害はなかったが、幼い私はこのエピソードを聞いて大叔母が語る山が通学路近くの墓地だと知り、恐怖に震えた。特に思い出すのは、母が田んぼの草刈りをしていたときの出来事だ。誰もいないはずの墓地から仏壇の鐘を鳴らすような音が響き、母が青い顔で家に帰ってきたのだ。

「ただの風の音だろう」と言い聞かせたが、同じ場所を通学路にしていた私は、何度思い出しても背筋が凍る思いだ。

[出典:549 :うしろの名無し :2001/07/25(水) 00:39]

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