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短編 山にまつわる怖い話 n+

不思議な山の体験

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俺の趣味は登山と写真撮影だ。

もちろん、富士山みたいな高山じゃなくて、もっと低い、けど景色が美しい場所が好きだ。ある日、俺は友人の隆と一緒に、田舎のちょっと高めの山に登ったんだ。その日は真夏日で、俺たちはカメラ片手に楽しく撮影してたんだけど、気づいたら日が早く暮れてしまった。おかしいくらいに早く。俺たちは山奥にいたんだけど、戻れなくなった。

隆が持っていた方位磁石も壊れて、クルクルと回るばかり。携帯も圏外で全く繋がらない。仕方なく、簡易キャンプセットと寝袋で一夜を明かすことにした。俺たちは草むらに座って、撮った写真を見ながら夜が明けるのを待っていたんだ。そのとき、前の草がガサリと揺れた。最初は風か虫か、小動物かと思ったけど、暗い森から出てきたのは、中学生くらいの男の子だった。

「なんでこんなところにいるんだ?」と隆が男の子に尋ねると、「お兄さんたちこそ、なんでこんなところにいるの?」と返してきた。俺たちは迷ったと説明すると、男の子は「撮影してたら遅くなって。君は地元の子?」と聞くと、男の子は「地元?いや、…うん、うん?地元やけど、うん」と少しおかしな返事をした。

その時点で夜中の10時を回っていたのに、山の奥に男の子がいるのは怪しいが、その子が普通の子に見えたから、俺たちは特に怪しむこともなかった。男の子は「俺、おじゃみ貰いにきたんや」と言ったが、意味が分からなかった。でも、彼が「帰るついでに連れてったるわ」と言ったので、俺たちは大人しくついていくことにした。

暗い山道を歩き続けていると、突然、景色がガラリと変わって、町中にいた。本当に一歩踏み出しただけで、まるでワープしたようだった。隆と顔を見合わせて混乱している間に、男の子はいつの間にか消えていた。自分たちがどこにいるのかも分からなかったので、とりあえず近くのコンビニに入って店員に場所を聞いた。すると、登山のために訪れた町の隣にいると言われた。

コンビニの店員は俺たちの話を信じてくれず、冗談だと思われた。それでも、タクシーで宿に戻って寝ることにした。帰宅してから、その山について調べたが、特に伝説や伝承は見つからなかった。結局、あの男の子の正体は分からないままだった。

それからも何度か同じ山に登ってみたが、あの男の子には二度と会えなかった。あれが一体何だったのか、今でも不思議で仕方がない。

その後も俺たちは何度かその山に足を運んだが、あの男の子には再び会うことはなかった。ところが、ある日、別の友人から奇妙な話を聞いた。彼も同じ山に登ったとき、夜になると同じように迷い、同じような中学生くらいの男の子に助けられたというのだ。俺たちの話をしていないのに、同じ体験をしたというのは偶然とは思えなかった。

不思議に思った俺は、再び山を訪れた。今回はしっかりとした装備を整え、GPSも持参して万全の態勢で挑んだ。山道を進むうちに、またあの男の子に会えるかもしれないという期待と不安が交錯した。しかし、今回も何事もなく、普通に登山を終えた。日が暮れる前に戻ることができ、宿に着いた。

だが、その夜、夢の中であの男の子が現れた。「お兄さん、また来たね」と笑いながら言う。「君は誰なんだ?」と問いかけると、男の子はただ「おじゃみを貰いにきただけ」と繰り返すばかりだった。そして、次の瞬間、俺は目を覚ました。夢だったのか現実だったのか、わからないまま朝を迎えた。

その後、山での出来事を調べ続けた俺は、ある古い民間伝承に行き着いた。山には「おじゃみ」という霊が存在し、迷った人々を助ける代わりにその人々の「時間」を少しずつ奪っていくというのだ。あの男の子が「おじゃみ」を貰いに来たと言った意味がようやく理解できた。彼は、迷った俺たちを助ける代わりに、少しずつ俺たちの時間を奪っていたのだ。

その伝承を知ってから、俺はもうその山には近づかなくなった。だが、友人の隆が一人で再びその山に登ったことを聞いたとき、彼が無事に戻ってくることを祈るしかなかった。彼もあの男の子に再び会うことがあるのだろうか。そして、その時、俺たちが失った時間はどうなるのだろうか。

隆が戻ってきたとき、彼は何事もなかったかのように普通に話していたが、その瞳の奥に微かな変化を感じた。彼も何かを見て、何かを感じ取っていたのだろう。しかし、隆はそのことについて何も語らなかった。俺たちの中で共有された秘密の一部として、それは静かに封印されていった。

その後も、俺たちは普通の生活を送り続けたが、時折、あの山のことを思い出すと、背筋が冷たくなることがあった。何度も振り返りたくなるような衝動に駆られたが、あの男の子がどこかで見ているのかもしれないと思うと、再びその山に足を踏み入れることはできなかった。

いつか、あの男の子の正体が明らかになる日が来るのだろうか。俺たちの失われた時間は、もう二度と戻ってこないのだろうか。そう思うと、心の中に奇妙な空洞が広がるのを感じた。

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