短編 怪談

野宿【ゆっくり朗読】3900

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私は趣味で長距離サイクリングをしています。

801 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:2001/06/27(水) 15:24

ある時、私は某山の峠ドライブインの駐車場で野宿をするはめになってしまいました。

本来峠を越えた先で宿を予約していたのですが、予定を誤ってしまったのです。

まぁ、こういう時のために寝袋も用意してあったので問題は無いと思っていました。

ドライブインは当然閉店しており、峠と言っても僻地で走り屋などは居ず、通りかかる車もまれでした。

夜の静けさの中、寝袋に潜りこんで眠り始めました。

ふと何かが聞こえたような気がして目がさめました。

何時頃なのか、周囲はまだ真暗です。

耳をすませてみると、何と遠くで男性の叫ぶ声がかすかに聞こえるのです。

『・・・・・!・・・・・・・・・!・・・・・!』

悲鳴のようなものではなく、何かの言葉を繰り返し言っているようですが、遠過ぎて何を言っているか判別できません。

最初は正直かなり恐怖を感じましたが、かなり山奥だし、近くには有名なハイキングコースもある。

もしかしたら遭難者が助けを求めているのかもしれない。

そう思った私は、大声で返しました。

「どーーうーーしーーまーーしーーたーーー?!」

しかし、こちらの声が届いているのかいないのか、変わらぬ感じで男性は叫び続けています。

『・・・・・!・・・・!・・・・!・・・・・!・・・・!』

やはり遠過ぎるので判別できませんが、さっきより近くに聞こえるような気がしました。

もしかしたら私の声に気づいているのかも。

「だーーいーーじょーーうーーぶーーでーーすーーかーー?!」

「みーーちーーはーーちーーかーーいーーでーーすーーよーーー!」

私は繰り返し彼に向かって声をかけました。

『・・・・・!・・・・!て・・・・!・・・・・!え・・・・!』

さっきよりさらに声が近くなってきました。

かすかに叫びが声になって伝わってきますが、まだ何を言っているのかまではわかりません。

私はさらに呼びかけました。

「けーーがーーはーーあーーりーーまーーせーーんーーかーー?!」

途端、相手の声が止みました。

しばらく待って耳をすませてみても、何も聞こえてきません。

どうしたのだろう。

もしや暗い中を夢中で進んで何かあったのでは?

心配になった私はもう一度声をかけようと、大きく息を吸いこんだ、その時

『お・・・・・!・・・・!て・・・・!・・・・!い・・・・・・!・・・・・!え・・・・!』

声が聞こえ始めました。

ただ、その声は先ほどまでと全く逆方向、私の背後から聞こえてきたのです!

「・・・?!」

私は一瞬わけがわからなくなりました。

あっけに取られている間にも声は繰り返し叫んでいます。

距離はずいぶん近くなっています。

何を叫んでいるのか判別できるほどに。

『おーー!いーー!てーー!かーー!なーー!いーー!でぇーーー!』

次の瞬間、私は寝袋をそこに放置したまま、全速力で自転車を漕いで峠を下り始めました・・・

以上です。

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