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短編 r+ ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間

学校行けますよね rcw+7,022-0107

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学生時代に聞かされたその話を、私は今でも妙な心のざわつきを伴って思い出す。

はっきり怖い、と言い切れるわけではない。幽霊を見たとか、呪われたとか、そういう話ではないのに、思い出すたび、不快感が残る。

語ったのは、同じ学科にいた女子学生だった。仮にAとしておく。
Aは人前で話すのが得意なタイプではなかった。声は小さく、抑揚も乏しい。冗談を交えるでもなく、聞き手の反応をうかがう様子もない。ただ事実を並べるだけ、という話し方だった。その淡々とした調子が、かえって内容を現実の出来事として押しつけてくる。

Aが高校生だった頃、通っていた学校は川沿いの細い県道を抜けた先にあった。片側一車線で、歩道も曖昧な道だ。朝は通学の自転車と通勤の車が重なり、危ないと感じる場面はいくらでもあったという。だが、Aにとってはそれが日常で、特別に警戒するような場所ではなかった。

最初の事故は春だった。
駐車場の出口から車が顔を出し、Aと目が合った。互いに一瞬、どうするか迷う間があり、運転席の男が軽く手を上げた。先に行け、という合図に見えた。Aはペダルを踏み出した。同時に、車も動いた。

次の瞬間、衝撃があった。
自転車ごと弾かれ、地面に転がった。膝が擦り切れて血がにじみ、制服が汚れた。頭がぼんやりして、痛みよりも状況が理解できなかった。

男は車から降りてこなかった。窓越しにこちらを見て、軽く頭を下げるような仕草をした。そして、言った。

「大丈夫ですか。学校、行けますよね」

その言い方が、妙に自然だったという。心配しているようでもあり、確認しているだけのようでもあり、命令にも聞こえなかった。Aはなぜか「行けます」と答えていた。男はそれを聞くと、それ以上何も言わず車を出した。

Aはそのまま学校へ行った。
保健室で消毒を受け、友人に事故の話をしたが、誰もそのやり取りを不思議だとは言わなかった。A自身も、後になってから言葉の違和感を思い返しただけで、その場では深く考えなかった。

半年ほど経った夏、二度目の事故が起きた。
同じ道だった。今度は横から来たバイクにはねられ、道路の中央に投げ出された。視界が揺れ、音が遠くなる中で、ヘルメットをかぶったままの運転手が近づいてきた。

「大丈夫ですよね。学校、行けますよね」

同じ言葉だった。
声の調子も、間の取り方も、どこか似ていたという。Aはまた「行けます」と答えた。バイクの運転手はそれ以上何も言わず、周囲が集まり始める前に去っていった。

二度目で、Aはようやくおかしいと思った。
事故の仕方は違う。相手も車とバイクで別だ。それなのに、なぜ同じ言葉なのか。なぜ自分は毎回、考える前に同じ返事をしてしまうのか。恐怖というより、理解できない気持ち悪さが残った。

それ以来、Aはその道を避けるようになった。

秋のある朝、別のルートで学校へ向かっていると、人だかりに出くわした。
近づくと、制服姿の後輩が路上に倒れていた。自転車が横倒しになり、周囲には通行人が集まっていた。その中に、立ったまま動かない男がいた。

男は倒れた後輩に向かって、穏やかな声で言っていた。

「大丈夫ですよね。学校、行けますよね」

Aは、その声を聞いた瞬間、体の奥が冷えたという。
振り返りたくないと思ったのに、目が離せなかった。顔はよく見えなかった。ただ、その言い方だけで、はっきり分かった。二度事故に遭った時と、同じ声だった。

誰かが警察を呼び、通行人の中にいた医師が応急処置を始めた。男は取り囲まれても逃げず、ただ薄く笑って立っていたという。

後日、Aは警察から話を聞かされた。
同様の事故は以前から何件もあり、被害者はいずれも登校中の学生だったという。運転手がかける言葉は、決まって同じだった。

ただ、記録は妙に食い違っていた。
車だと言う者もいれば、バイクだったと言う者もいる。色や形の証言も揃わない。免許証の住所は空き家で、近隣の住民は誰もその男を知らなかった。

結局、男の行方は分からなかった。

話を終えたAは、少し間を置いてから言った。
事故そのものより、今でも気になることがある、と。

朝、通勤途中で信号待ちをしていると、ふと耳の奥で、あの言葉が聞こえることがあるという。誰かが言ったような気もするし、自分の頭の中で再生されただけのような気もする。

「学校、行けますよね」

その瞬間、身体が一歩前に出そうになる。
行き先がどこであれ、行かなければならない気がしてしまう。
Aはそこで話を止めた。それ以上は、言葉にしなかった。

私も、それ以上は聞かなかった。
ただ今でも、朝の道端で事故の現場を見かけると、反射的に思ってしまう。
倒れている人間に、誰かが近づいていないか。
そして、その誰かが、何を言おうとしているのかを。

その声が、自分に向けられていないことを祈りながら。

[出典:http://kohada.open2ch.net/test/read.cgi/kankon/1418642426/]

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