短編 山にまつわる怖い話

戻ってきた箸【ゆっくり朗読】2103

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小学5年生の時、夏休みに昆虫取りに、一人でテント担いで福井南部の山に入ったんだ。

747 :あなたのうしろに名無しさんが…:03/12/11 08:19

標高800メートルぐらいのそんな高くない山で、中腹ちょっと上ぐらいまできれいな沢があるところだった。

マイマイカブリからオニヤンマまで色々とって、夕方飯食い終わって沢で食器洗ってたら、箸流しちゃったのね。

まあフォークあるしいいか、とか思いながら他のもん洗ってたら、上流から流しちゃった箸が流れてきたんだ。

そこの沢は、高度にしてはかなりゆるい流れのなんだけど、逆流したりループになってるような流れじゃないのね。

念のため確認しながら歩いてみたんだけど、やっぱり普通に流れてるし。

戻って木の枝とか流してみたんだが、やっぱ戻ってこないんだ。

プラスチックだと静電気でも起きるんだろうか、とかひらめいて、もう一回お箸を流してみようと思って、箸持って沢に近づいた瞬間、

「おいおい、いっかいしかかえしてやらんぞ?」

って、野太いというか、チェロの音みたいな声がはっきり聞こえた。

笑い混じりで非常にフレンドリーな感じで、地元のイントネーションだった。

前は沢だし、後ろは砂利と藪と木の葉だらけの獣道だから、少なくとも半径100メートルぐらいには人がいなかったはず。

今思えば不思議なんだが、その時は、そうか、返してもらえないんじゃ、明日ラーメン食べる時困るな。とか思って素直にやめたよ。

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