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短編 集落・田舎の怖い話

巫女さま【ゆっくり朗読】3400

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怖い話じゃないけど、ちょっと昔の不思議な体験の話をする。

404 :本当にあった怖い名無し:2015/01/04(日) 04:14:01.69 ID:HQEgLEy2O.net

俺が住んでる田舎にはちょっと変わった風習がある。

八月一日~五日の内で、雨が降っていない日の夜の八時~十一時の間に、
十三歳の子供が一人づつ神主に付き添われて、神社から山の中にあるご神木に御札を納めに行くっていう風習なんだけど、当然俺が十三歳の時にもそれをやった。

自分は八月の後半の生まれだったから、俺の時は中学のクラスメイトが十二人、一つ下の学年から八人の計二十人が参加してた。

夜中に神社に集められて、呼ばれた順に御札を収めに行って、終わったらそのまま親と一緒に帰るっていう段取りだった。

山の中って言っても、ほとんど神社の敷地内っていうぐらいの距離だった。

道もしっかり舗装されていたから、一人あたり五分程度しかかからないし、とんとん拍子で進んでいった。

でも八番目に呼ばれたクラスメイトの菜摘は帰らずに、神主に残るように言われた。

そのあと十三番目に呼ばれた一つ下の元治も残るように言われて、十六人目でやっと俺が呼ばれた。

とっとと終わらせて帰りたかったんで、呼ばれたらすぐに神主の所に行って、御札を渡されて、神主に付いて歩いてすぐにご神木までたどり着いたんだけど、俺は御札を納められずに立ち止まってしまった。

単刀直入に言うと……いた。一目見て幽霊だと思った。

ご神木の下に髪の長い女性が二人、両方とも巫女服を着ていて、片方は包帯みたいなモノで両目を隠して、もう片方は木彫りのお面みたいなモノを被っていた。

ごていねいに両方とも半透明で、おでこの左側から角のような突起物が生えていた。

二人が一度俺の方を見て、お互いに顔を見合わせてうなずきあったかと思うと、包帯で目隠しをしている方が俺の方に近付いてきた。

神主さんの方を見てもなにも言わず、黙ってじっと見守ってるだけだった。

幽霊の方に視線を戻すと、幽霊が両手を伸ばして俺の両頬に手を添えてきた。

触られたって感触はなかったけど、触れられてる部分はめっちゃ冷たかった。

ただ、このときなぜか直前まで感じてた幽霊に対する恐怖はなくなった。

「あんしんして おぼえていて 四十一まで ありがとう ごめんね」

幽霊が言った。

声が聞こえたわけでも、唇の動きから分かったわけでもないけど、そう言ったのが分かった。

その直後に幽霊は姿を消した。

神主さんの方を見たら神主さんがうなずいてた。

そのまま神主さんが御札を納めるように言ったので、その通りにして神社に戻った。

そのあと俺も帰らずに残るように言われた。

多分菜摘と元治も俺と同じものを見たんだと思って菜摘に話しかけた。

「もしかしてお前も見たの?」

菜摘は俺の言葉にバッと顔を上げて

「……うん、怖かった」

って言った。

「あーうん、俺も最初は怖かったけど途中からなんか怖くなくなったわ。近付いてきた時よく見たら凄く綺麗な髪だったし」

そうちょっとおちゃらけて返したら、菜摘がびっくりしたような顔をして

「え、私の時は近づいて来なかったけど……」

なんて事を言った。

もしかして違うものを見たのかと思って、お面の巫女と包帯の巫女を見たんじゃないのかと聞いたら

「私の時はお面の巫女さんだけだった、おでこの左側に角が生えてる巫女さん」

と説明してくれた。

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なんか変だなと思って元治にも聞こうとしたら神主さんに呼ばれた。

二十人全員終わったらしい。

ちなみに残ってたのは俺と菜摘と元治とそれぞれの両親だけだった。

それで神主さんが俺の両親に

「息子さんは巫女様に気に入られました」

と言ってから詳しい事を話し始めた。

神主さんの話を要約すると、あの幽霊は土地の守り神みたいなモノで悪いものではない。その姿から巫女様や鬼神様(きしんさま)と呼ばれているらしい。

由来は不明。記録によれば、江戸時代の頃にはすでに守り神として祀られていたらしい。

江戸時代の頃には巫女様は四人いたが現在は二人しかいないらしい。

巫女様は全員何らかの形で目を隠している、理由は不明。

今日の事はこの土地の子供に巫女様にあいさつさせるためのモノで、巫女様はあいさつにきた子供を事故などから護ってくれるらしい。

巫女様が姿を現すのは七月後半~八月中盤の間だけ。なぜ十三歳かは不明。昔からそう定められていたらしい。

時々巫女様の姿を見ることが出来る子供がいる、なぜ見えるのかは不明。親兄弟でも見える見えないがあるらしい(実際に俺の父と兄は見えなかったらしい)

さらにはどの巫女様が見えるかも人によって違う。

見える子供の中で巫女様に非常に気に入られる子供がまれにいるらしく、巫女様はその子の魂に寄り添う、つまりは守護霊みたいなモノになり、その子が死ぬと巫女様も一緒に成仏するのか、寄り添った巫女様は戻っては来ないらしい。

巫女様が寄り添っている限り事故や病気で死ぬことはまずないし、悪霊等も寄り付かない。ただし巫女様に寄り添われたモノは短命になる。

俺が聞いた巫女様の言葉の意味は詳しくは分からない、ただ四十一ってのは恐らく数え歳の事。その歳になったら何か起こる、多分死ぬ。

俺に寄り添った巫女様はいなくなるから、残りの巫女様は一人。

巫女様に寄り添われた俺はあまり長期間この土地を離れてはいけないらしい。(一週間程度の旅行とかなら問題ないらしい)

以上が俺が子供の頃に体験した不思議な話。

ただ年末に兄夫婦が帰ってきた時、五歳になる甥っ子が俺の部屋で角の生えた幽霊を見たとか言い出した。

もしかしたらこの子があのお面の巫女様に気に入られたりするのかね……

(了)

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