短編 怪談

ビデオクリーニングテープ【ゆっくり朗読】

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私の友人Rの話です。

彼の父親は車の修理工で、Rが生まれたときに家を購入しました。Rは一人っ子で、その家で普通に育ちました。そして、中学時代に私たちのグループに加わりました。

ある日、Rが放課後にヨドバシカメラに行こうと提案しました。私たちの私立中学からはよく通る道だったので、珍しくはありませんでした。彼は最近、ビデオの画質が悪いと言っていて、クリーニングテープとCDを買いに行きました。

翌日、何故かRは学校に来ませんでした。授業中に彼にメールを送ると、「すぐに行く」と返信がありました。昼休みにRが暗い顔をして学校にやってきました。

私たちが元気に声をかけると、Rは重々しく話し始めました。「実は昨日、クリーニングテープを使ったんだ。普通、何も映らないはずなんだけど、映ったんだよ…」

「冗談だろ!そんなの教師に通用するわけないじゃん」と私たちは笑いました。

「信じなくてもいいよ」とRは言いながら話を続けました。「新品だったから、ビデオデッキに入れて再生したんだ。すると、突然明るい画面が映し出された。それで、見覚えのある風景が映ったんだ。どこか分かる?」

周りは静かに話を聞いていました。

「俺の家のリビングだよ。家具の配置も全て同じだった。そして、見たこともない子供が映ったんだ。オレンジャーのおもちゃで遊んでいる。誰もいない部屋で、黙々とね。その子供は、昔の俺に似てもいないし、全く見たことがない子だった。それで、1分くらいすると、子供がカメラの方を振り向いた瞬間にテープが終わったんだ」

Rの話によると、その後、異常にお腹が空いて、いつもはあまり食べないのにたくさん食べて、ソファーで寝てしまったそうです。頭痛でなかなか起きられず、学校に遅れました。

ビデオに映った少年はソファーの上で遊んでいたそうです。

これは言いたくなかったのですが、Rはもうこの世にいません。バイク事故で亡くなりました。友人だったのにこんなことを言うと、Rは怒るかなと思いますが、あえて言います。もちろん、ビデオとは関係ないと思います。

後日談

Rの不思議な話から数週間が経過しました。その間、私たちの中には、彼の話が現実か幻想かについて様々な議論が交わされました。しかし、Rがこの世を去ってからは、その話に対する見方が変わりました。それはもはやただの不思議話ではなく、何か深い意味を持つものに思えてきたのです。

その頃、私は偶然Rの家の近くを通りかかりました。彼の家は以前と変わらず静かで、何も変わっていないように見えました。しかし、なぜかその家に異様な引力を感じ、思わず中を覗いてしまいました。

家の中は空っぽで、誰もいないようでしたが、リビングの窓から見える家具の配置はRが話していた通りでした。その瞬間、私の背筋に冷たいものが走りました。まるでRの話が現実になったかのように。

数日後、Rの両親に会う機会がありました。彼らはRの死を悼んでいましたが、彼の話について尋ねると、驚くべきことに、彼らも同じような体験をしていたことを知りました。彼らによると、Rが亡くなる前に、家のビデオカメラが勝手に動き出し、不可解な映像を撮影していたそうです。

その映像には、Rが小さい頃遊んでいたのと同じオレンジャーのおもちゃで遊ぶ、見知らぬ子供の姿が映っていました。彼らはそれを見て、Rが何かを伝えようとしているのではないかと感じたと言います。

この話を聞いて、私はRの話がただの作り話ではなかったことを悟りました。それは何か超自然的な現象、あるいはRがこの世を去る前に私たちに伝えたかったメッセージかもしれません。

Rが亡くなってからも、彼の話は私たちの心に深く刻まれ、忘れられないミステリーとして残り続けています。

追伸

この物語を語ってから数ヶ月が経ちましたが、Rの存在と彼の話は私たちの心から消えることはありませんでした。彼の不思議な体験は、私たちの間で語り継がれる都市伝説のようになり、時には新たな詳細が加えられ、時には謎が深まるばかりでした。

それからというもの、私たちはRの家の近くを通る度に、あの不思議な映像のことを思い出し、ふと立ち止まっては空っぽの家を眺めることがあります。家は静かで、何も変わっていないように見えますが、私たちにはあの家が何かを語りかけているように感じられます。

また、Rの両親との接触以来、彼らはRの思い出と共に生き、彼の失われた存在を受け入れることに専念しているようです。彼らは、Rが彼らに何かを伝えたかったという信念を持ち続けています。

私たちの中には、Rの話が超自然的な現象を示唆していると信じる者もいれば、単なる偶然や幻想だと考える者もいます。しかし、どのような解釈をしようとも、Rの話は私たちの心に深く根付いており、彼の記憶を永遠に保つことを決意しています。

結局のところ、Rの話は私たちにとって、友情とは何か、そして失われたものに対する哀悼の意味を再考させる機会を与えてくれました。それは、忘れられない思い出として、私たちの心に残り続けることでしょう。

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