もう十数年前の話。その頃山梨に友達が住んでいて結構しょっちゅう遊びに行ってたんだ。
その時はまだ、オウム真理教が怪しいとは言われてたけど摘発される前だったんで、いわゆるサティアンとかもそこらじゅうにあった頃の話。
その時すでに自分たちの間では「あそこはキチガイ集団」って認識だったんだけど、怖いもの見たさであちこちの施設を見て回ってたんだ。
もちろん有名どころの第九サティアンとかは地元の人もみんな知ってたし点在する施設も大体わかってた。
でも、関係があるのかないのかわからないけど見るからに怪しい倉庫っぽい建物があったりして、そんなところを見て回ってたときの事。
車に乗り込み移動し始めたら、さっきの倉庫っぽい建物から一台のバンが出てきて自分たちの後に付いてきたんだ。
最初は「やべ~、付けられてるよ(笑)」とか言ってたんだけど、あんまりずっと付いてくるんで、地元の友達の道案内で、本来なら絶対通らない道筋で走ろうって事になったんだ。
つまり何度も曲がって元来た方角に戻ってみたんだ。そうすれば、もし後ろの車に目的地があるなら絶対にどこかで別れるはず。もしそれでも付いてくるなら目的は自分達ってことだ。
結果、バンはついてきた。
「やべえ、マジでつけられてる……」
あせってきた事もあり制限速度をかなりオーバーしてるにもかかわらずだ。
友達は「マズイよマズイよ……」と言いながらガクブルしてるし。本格的にまずい状況になってきたのでどうすれば良いか必死に考えたすえ
「とりあえず振り切ろう」ということになった。
友達に、道がアップダウンしていて民家が密集しているところはないか?と聞くと少し考えた後
「ここからもう少しいったところにある!」と言う返事。
そこからすぐさま急加速をして、パトカーや他の車が来ないことを祈りつつ爆走を続けた。
不意を突いたのが幸いしたのかバンが一時的に離れていく。
バンが見えなくなったそのすきに、車を他人の家の庭に入れ道路からは見えない位置に素早く隠した。(友達は営業職だったためこの辺の家に詳しかった)
そしてバンが猛スピードで通り抜けて行った事を確認してから大急ぎで今来た道を戻り、さらに心配だったのでかなり大回りをしてから友達のアパートに帰った。
そのしばらく後で起きたオウム事件後の報道番組を見ていたら、あの時の倉庫が映ってた。
おれはこの判断で間違ってなかったと思う。
後々奴らの毒ガスの開発した時期とかを聞いたら、その頃すでに携帯できる奴を所持してたらしいから。もし止まって車を降りてたらどうなってたか……
この頃はまだそんなに携帯は普及してなかったからもちろん自分たちは持ってなかった。
車はたまたま代車だったので、地元に帰ってから友達の車屋に返すとき事情を説明して(そのときの車の名義はその店だった)速攻処分してもらった。