短編 洒落にならない怖い話

突然失踪した兄の友達【ゆっくり朗読】4746-1231

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兄の友達の話

802: 本当にあった怖い名無し 2009/08/10(月) 01:29:11 ID:0NUEM5QHO

わたしと三つ離れてる兄は、当時短大生で、その友達も同じ短大生。

二人は親友だった。

二年前の正月、その友達が家に泊まりにきた。

わたしも少し話をしたが、その時の印象はたしか「明るい人……それになんか優しそうな人だなあ」とかそんな感じだった気がする。

あと、笑顔が素敵だったのを覚えてる。

夜もずっと兄と話をしていて、「うるさいよ、寝れない」と思わず兄にメールを送った記憶がある。

それくらいにぎやかな人で、何かを思いつめているような人には見えなかった。

次の日の夕方頃、その友達は電車で自分の家に帰って行った。

はずだった。

数時間後、辺りも真っ暗になり、わたしは夕飯を食べたあと部屋でごろごろしていた。

すると居間からドタバタという騒がしい音が聞こえてきた。

「ゴキブリでもでたのー?」

などと言いながら興味本位で居間に行ってみると、兄は涙目で携帯をいじり、母は家の電話で焦っている様子で誰かと会話をし、父は落ち着かない様子で自分の携帯を片手にどこかに電話していた。

え、なんだなんだ、と電話を終えた母に問いかけた。

すると母は涙を目に溜めながら、

「兄ちゃんの友達、まだ家に帰ってないんだって」と言った。

わたしの家と兄の友達の家は電車を利用しても二十分もかからないような所にあるのに。

わたしは心配になりながらもどうすることもできず、その日はもう家族と何も話さずにベッドに潜り込んだ。

それからも兄の友達の携帯にはつながらないし、(失踪後、携帯はアドレス変更されていた)手紙も何も残していないし、とにかくなんでいなくなったのか全くわからないままに約一年が過ぎた。

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ある夜母にその友達の母親から電話が来た。

電話口に出るやいなや母の表情が一変した。

深刻な顔で小声で何かを話していた。

その途中で、母の顔が恐怖に染まった表情に変わったのをわたしは忘れられない

。受話器を置き、こちらを向いて涙を流しながら、母は静かに

「兄ちゃんの友達、N県の山の中で白骨化して見つかったって」

身元が判明した理由は、人骨のそばにあったカバンの中に入っていた学生証だったらしい。

正直ゾッとした。

わたしの住んでいるのはA県。どうしてそんな遠くまで行ったの?なぜ山の中なの?もしかして連れ去られたの?

自分の意志でいなくなったのなら、どうして失踪前日にわたしにあんな笑顔を見せたの?どうしてあんなに楽しそうに話をしていたの?

もう頭の中がぐちゃぐちゃで、何よりも身近な人がそんなことになってしまったというショックが大きく、いなくなるのがわかっていたら、何をしてでも止めたのに。

どうして話をしたときにわからなかったのか。

いなくなった時に私も探すのを手伝えば良かった。

何もできなかった自分に腹が立ちすぎて寝込んでしまい、二日間ほど何も食べる気が起きなかった。

家族みんなもそうだった。

兄なんかは部屋から何日も出てこれなかったし、父母も無理矢理ご飯を喉に通している感じだった。

こっちのほうではニュースにはならなかった。なぜかは聞かなかったけど。

(了)

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