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短編 ほんのり怖い話

【芯まで冷える感じの怖い話】じわじわと壊れていく【ゆっくり朗読】5140-0107

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霊的な現象は一切含まないし、実際に怖いと感じていたのは、私だけかもしれない。

297 :名無しの記憶:2014/07/29(火) 16:39:46.50 ID:wn7G+ogm0.net

創作も脚色もせず、事実だけを書きます。

長い時間が経過したので、もう書いてもいいかなと思ったのと、誰かに聞いて欲しくなり書き込む事にしました。

以下、名前は全て仮名です。

当時、私は二十代前半で、とある会社の入社二年目の気楽な独身男で、ここでは本田と名乗る事にします。

一年先輩の三上さん(男)とコンビで一つの業務を回していた。

三上・本田コンビに限らず、他のコンビの仕事量も増え負担が重くなっていた為、中途採用を行いそれぞれのコンビに一人ずつ つける事になった。

我々についた新人は森下さんという女性で年齢は私の一、二歳下。

森下さんは明るくノリのいい性格で、三人で週に何度も飲みに行くようになっていった。

身長が165㎝位あり、足が細くて長くスタイル抜群、かといって痩せすぎではなく芸能人でいえば佐藤江梨子のような感じ。

他のコンビからは羨ましがられていたし、私も初めはまんざらでもなかったが……

ある夜、三人で飲み過ぎてしまい私と森下さんは終電がなくなってしまった。

三上さん宅だけ、間に合うので酔った勢いで三人で三上さん宅に向かう事になった。

一応、森下さんには他の手段も提案したが、全く気にならないらしく、

「三上さんち泊めて~」とあっけらかんとしたもの。

三上さんの家は男の一人暮らしの家にしては小奇麗な1LDKで、三人とも上手いこと寝れそうなスペースを作ってすぐに寝っころがった。

かなり飲んだにも関わらず、私は何かの物音で目を覚ました。

すると……三上さんと森下さんがロマンチックな行為の真っ最中。

「えぇっ!?」と、思わず声をあげると、森下さんがこちらをみてニッコリと笑った。

三上さんは照れたような困ったような顔をしているのだが、森下さんは全然、笑顔。

あまりに普通なので、私もハハハ、と笑って再び寝た。

翌朝 私が二人に おはよ、と声をかけると、森下さんは、

「えへへ やっちゃったー。本田さんもくるかと思ったけど来なかったですねー」と明るく言い放った。

その後、三上さんと二人になった時、聞きたい事は山ほどありますよ~と、私はニヤニヤしながら近寄り、顛末を聞いた。

以下、三上さんの談。

「いや、誘ってきたのはマジで向こうからなんだって。私、胸けっこう大きいんですよ~。あと形もキレイなんですよ~。自慢の胸なんだからぁ。とか言ってくるんだよ? その状況で、へぇそうなんだ。じゃ、おやすみ とか言える? むしろ失礼じゃねぇ?ヤラされたって感じなの!マジだって!」

と、まぁこんな感じだったそうな。

全面的に信用できたし、そんなトコだろうと思っていたので驚きもしなかった。

ただ、私は森下さんに 妙な違和感というか居心地の悪さを感じていた。

頭のネジがどこか少し緩んでいるような、0.1次元ズレた世界で生きているような。

ただ単にロマンティック好きという感じじゃないのだ。

どこか感情が欠けている、と言えば近いだろうか。

その後も三人でよく飲みに行っていたし、三上さんは何度か関係を持っていたが、担当替えがあり、森下さんから別の者に変わった。

担当替えの後の三上さんの言葉。

「なんかさーあの娘、一緒に住もうとか、結婚をほのめかすような発言とかしてきてさー。人前で平気でヤる女と結婚なんかするかっつーの」

まぁ、ある意味 非常に男らしい発言をしていた。

私が意外だったのは、彼女が結婚などを求めているという事だった。

そんな願望があるようにはとても見えないのだが……

予想通り、森下さんの男性遍歴は加速していった。

私が仲良くしていた後輩とも頻繁に関係していたのだが、少し慣れてくると一緒に住もう、結婚したいと言い出すようで、その後輩もうんざりして連絡を取らないようにした、と言っていた。

一年半くらい経った頃だろうか、森下さんは別の事業所への異動がきまった。

私は内心 いい機会だと思っていた。

彼女について、その事業所では 悪い噂がたちすぎていた。

しばらくして……

森下さんがいった事業所にいる同期入社の仲間と飲みに行った。

その時聞いた森下さんの近況だが、社員の一人と結婚前提で付き合っているというのだ。

その相手は西本さんといい、私も知っている上司だった。

以下、その時の会話の一部。

本田「西本さんて、実家、裕福で育ちの良い感じだったよね……?森下で大丈夫なのかな?」

同期「いや、かなりモメてるみたい。しかもあの苗字がさ…… 西本さんの親はかなり気にしてるみたいだぜ。しかもあの娘、こっちでも色々やらかしてるからさ。西本さんも知ってると思うんだけどな」

……と、まぁこんな感じで周囲は水面下で注目していたのだが、めでたく結婚する事になったのだ。

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その結婚から数か月が経つ頃、こんな話が聞こえてきた。

西本さんが、ふさぎ込んでいたり、怒りっぽくなったりと情緒不安定で周囲が困っているらしいのだ。

「あぁ……西本さん、全部は消化しきれないまま結婚したのかな……」

と、気の毒だったし、西本さんの下で働いてる人は とばっちりを受けているわけだし、なんだかんだで森下さんの影響力は絶大なのかもしれない。

そんな中、森下さんが妊娠したのをきっかけに退職するというニュースが入ってきた。

おそらく誰もが、これで西本さんも平穏を取り戻してくれるだろうと期待したし、何よりもおめでたい話なので祝福して送り出した。

森下さんを嫌う女性社員は多かったが、奔放で過激な彼女を慕う女性社員も数人いて、彼女等は退職後の森下さんとよく会っているようだった。

その一人、沢田さんは、私のすぐ近くの机で勤務しているのだが、ある日、聞いて欲しい話があると言う。

妙にかしこまった沢田さんが意を決したように話し始めた内容は、思いもよらぬものだった。

森下さんは妊娠などしていない。

ゆっくりとだが確実に正気を失いつつあったので、会社で何か大きなトラブルを起こしたり奇異の目で見られる前に西本さんが退職させた。

何人かが退職後も頻繁に会いに行っていたのは正気を取り戻す手伝いが出来れば、と思っての事だったようだ。

本田「しかし、正気を失うってのは、どういう状態なの?病名は?」

沢田「むりやり分類すれば、病名もつくようですが、個人差の激しい分野で人それぞれだそうです。記憶をよくなくしちゃうんですけど、記憶の無い時間は、何をしでかすか分からないみたいです」

本田「そうなんだ……西本さん一人じゃ見きれないよね。森下さんの両親は?手伝ってくれないのかな?」

沢田「それが……両親はもう亡くなってます。実は……森下さんのお母さんも、よく分からない症状が出て、森下さんが小さい頃から寝たきりになってたらしいんです。それで西本さんの実家は結婚に大反対してたんです。でも、西本さんは精神の病は遺伝なんかしないって言って押し切って結婚されたんです。それが……こんな事になってしまって……」

沢田さんは泣きながら話を続けている。

私はぼんやりと森下さんを思い出していた。

大勢の男性と次々に関係を持ち、一緒に住もう、結婚しようとお願いする。

自分が母と同じような状態になる前に……?

そこまで考えていたのかどうかは分からないが、猛烈に怖くて寂しくて、誰にも相談できなかったのだろう。

しかし西本さんには感服した。

全て承知の上だったのだ。

森下さんも隠すこと無く打ち明けていたのだ。

その事が少しだけ救いだった。

だが……後天的な精神疾患なら遺伝などしないだろうが、先天的な脳の問題だったらどうなんだろうか。

その後、西本さんは辞職した。

夫婦二人の携帯は解約されたようで、電話もメールも出来なくなった。

もっと親しい関係の人は新しい連絡先を知っているのかもしれないが、私の周りには知る者はいなかった。

その後、沢田さんも辞職したので、私が知っているのはここまでだ……

(了)

[出典:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1440824523]

 

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