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短編 怪談

ハナシバ#1075

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僕が高校生の時の話です。

夏休みに、友人の門倉の家に泊まりに行きました。

たしか時間は夜の十一時ぐらいだったと思います。

門倉の家に着くと、門倉が深刻な顔をして迎え入れてくれました。

僕が「どしたの?」と聞くと、門倉は首をかしげながら

「まぁちょっと来て」と。

それで、なんだろ?と思いながらついていくと、門倉の弟の部屋の前で立ち止まりました。

門倉がドアをノックしたら、中から

「うわぁぁ!……誰?!」

門倉がドアを開けると中には、門倉の弟アキラと、その友人が五人程。

輪になって固まったまま僕ら二人を見つめてます。

なぜか輪の真ん中には木の枝が見えます。

全員僕の中学時代の後輩でした。

その異様な雰囲気に興味がわき、「おまいらどしたの?」と僕。

アキラ達に詳しく聞いてみると、寺に胆だめしに行ってて見たと言うのです。

見たのは六人全員。

六人で寺の中を携帯の明かりを頼りに散策して、さぁ帰るぞって時に、一人が、「うわっ!うわぁぁぁ!!」

と絶叫、残りの奴がそいつの見てる方をみると、道の真横の壁の上に『兵隊さん』が立ってたそうです。

しかも一人だけだと思ったら、その横にズラーっと足だけが列んでたんだそうです。

最初は僕もこいつらふざけてるんだな?とか思いながら聞いてました。

が、涙ながらに語る彼らを見て、嘘じゃ無いのか?と思ってた矢先にどこからともなく

『ザッザッザッザッザッザッザッザッザッ……ザッ』

全員キョロキョロ

なんだ?今の音?!

おまいらも聞こえたのか?!

と言いたそうな顔

しかしすぐに

『ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ……ザッ!!』

その場にいた全員が凍りつきました。

二回目ははっきり廊下側から聞こえたんです。

六人は耳を塞いで、口々に

『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……』

念仏の様にわめいてます。

僕もしっかり話を聞いた後だったんで半泣きです。

『ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ。!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!』

何がなんだかよくわからないまま、とにかく僕も門倉も手を合わせて祈りました。

こいつらを許してやってください!

勘弁してやってください。

『ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ。!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!……』

……音が消えた?

ふと目をあけると門倉も含め全員呆然。

後輩の一人がポツリと

「取り返しにきたんだ……」

といいながら視線を下げてます。

そう、輪の真ん中にあった枝が無くなってたんです。

誰かが隠した様子もありません。

ただ忽然と消えてたんです。

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そこで初めて僕が枝について聞きました。

一人がふざけて持って帰ってきた枝なんだそうです。

寺には戦死者を奉った10メートルくらいの大きなお墓があります。

そこに奉ってあった『はなしば』(お墓に供える花無しの木)を一本抜いて、それを振り回したり、その辺りの木を叩いたりしながら寺を歩いてたんだそうです。

そしたら!との事でした……

結局そのあと、全員が一つの部屋に寝る事になったんですが、とてもじゃないけど僕も眠れませんでした。

朝になり、夜の恐怖も薄らいできたのか、僕と門倉は腹ごしらえにコンビニに行く事にしました。

オニギリをかじりながら、やっぱり話題は昨日の夜の事。

あれは絶対マジだったよね?

とか言う話になった時に、門倉が

「行ってみるか……?」

僕も怖がりだと言われるのがイヤだったので行く事に賛成。

さっそく行ってみると、やっぱり気持ち悪い。

でも一人じゃないのが心強くて、ついにその大きなお墓の前まで……

あぁ、そういえばあれか……と『はなしば』に目をやると……

あったんです。

葉っぱのついてない枝が一本まじってました。

間違いありません。

それを見て妙に納得して、二人そろって手を合わせて帰ってきました。

(了)

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