短編 怪談

生首神社|大幽霊屋敷~浜村淳の実話怪談08

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第8話:生首神社

今日は、とっておきの恐いお話を皆さんにお届けしようとおもいます。

私の町には、古い神社があります。

入口には巨大な鳥居がそびえていて、その後ろには、大昔の人の名前らしきものが刻まれています。

よくはわかりませんが、とても古いものだということです。

そんな歴史の香りのする神社の近くに、私は住むことになったのです。

小学校5年生の時でした。

父のこの町への転勤がきっかけでした。

さて、神社の入口の鳥居を出発点として、一直線な道が境内まで続いております。

私は毎日の通勤の為、この道を通らなればならないのです。

恐怖は、いつもこの道で起きました。

申し遅れましたが、私は生まれつき”霊感”とういものがございます。

霊感を持つ人には、”幽霊”が見えてしまっても、平気な方もおられます。

しかし私はそうではありませんでした。

私にとって、霊とは見えてほしくないものなのです。

幼少の頃から、古い建物等には何か異様なものを感じていました。

そして初めて幽霊を見たのが、この町に移り住んで間もない頃でした。

父に手をひかれ、夏祭りにゆく途中でございました。

白い着物の女の人が、ずっと私の後ろをつけてきていたのです。

そして、私の前を急に通り越したかと思うと、その女の人はかき消すように消えてしまったのです。

それからというもの、私にとって、この神社の参道はとても恐い道になったのです。

中学にあがっても、クラブ活動もそこそこにして、日の落ちる前に帰宅いたしました。

なぜなら、霊の存在が本能的に分かる事があるからでございます。

今日は早く帰らないと見えてしまうと思うのです。

しかし私の友達からは、いろいろな指摘をうけました。

私は怖がりすぎだとか、それは精神的トラウマだとか。

でも私が仮に、そんな病気にかかっていたら、むしろ幸せです。

霊感を持つ者の恐怖は、そんなものじゃないのですから……

ある日、私は会社から急ぎ足で帰宅していました。

いつものように、駅に預けた自転車に鍵をさし、家に向かいます。

夜の8時半頃だったと思います。

私の住んでいる番地へいく人はあまりいません。

道は人通りも少なく、街灯が淋しげに、点いたり消えたりしておりました。

そんな街灯の下を通る度、私の顔の前を虫が遮って邪魔をします。

神社の鳥居をくぐり、参道を私は走り出しました。

「今日は……なんかいるな……」

そんな気がしてました。

この道の途中、右方向には竹林へ続く小さな道がでてまいります。

そこを5分ほど走ってゆけば、私の家に着くのでございます。

何も考えずに走っていれば、そこまではすぐなんですが、あの時は妙に長く感じました。

ルルウ、ルルウ……

そんな音をたてる自転車のライトをたよりに、竹林に向かっていたその時です。

だんだんと、自転車のペダルが重くなっている事に気付きました。

自転車のライトの音も、ずっと重くなっていきます。

私の全神経は、自転車の荷台にそそがれました。

「なんか……後ろに乗ってる……」

そのとき急に、中学校時代の友達の噂を思い出しました。

「神社で急に荷台が重くなったら、気をつけや。生首が乗っとるかもしれんから……」

人間、なにか本当に恐ろしい場面に遭遇した時、目をとじたくても、それができない時がありますよね。

そして、否応無しに、自分に恐怖を与えている存在を確認しようとする。

私の状態は、まさしくそれでした。

自転車をこぎながら、クルリと頭を後ろに向ける私。

「ククククククク……」

自転車の荷台の上で、何かが笑っています。

それは、老婆の生首でした。

首は、後ろ向きになって乗っかっていました。

髪の毛をふりみだしています。

首の切り口はとてもグロテスクです。

私が自転車をこぐたびに、その切り口から血がポタリポタリと地面に落ちていきます。

私は叫びたかったのですが、まともな声にならず、そのまま前を向きました。

「ふふふふふふ……」

何がおかしいのか、その生首はずっと不気味に笑っています。

数秒後、私の自転車は何かにぶつかってしまいました。

気が動転していたので、なにがどうなったのかわかりません。

「あいたたた……」

私は道に転倒しました。

私は何にぶつかったんだろうと思って、前方に目を向けました。

そこには、首なしの体が立っていたのです!!

「あわわ……」

私は腰を抜かしてしまいました。

するとどこから現れたのか、さっき荷台に乗っかっていた老婆の生首が、フワリフワリと宙を泳いできて、上空でピタリと止まりました。

血走った老婆の目が、こっちを見据えています。

そしてしばらくすると、首はゆっくりと腰を抜かしている私の方に飛んでくるのです。

「う……わぁあ!!」

私は何を思ったか、その首を手で払い落としてしまったのです!!

グチャッという音を立てて、首は地面に落ちました。

すると、じゃりっ、じゃりっ……と、草履の音を立てながら、首無しの身体は、首の方に歩いていきます。

そして、まるでボールを取り上げるように、その首を拾い上げたのです。

「くくくく……また来るからね……くくく……」

胸元あたりに抱えられている生首が、そう言います。

そして、かき消すようにその老婆は消えてしまったのです……

「なななななな……」

私はしばらく、その場で呆然としていました。

私はこの町に引っ越してきて以来、この町の歴史については全くといっていい程無知でありました。

しかしその後、町の老人に話を聞く機会があり、わかったことがあります。

戦後まもないころ、日本中どこでもそうだったように、この町でも食料の不足が深刻でした。

そこで口減らしのために、60歳をこえる老人たちは、多くが自らその命を絶ったといいます。

中には、本人が望まなくても、家族の手にかけられたお年寄りも多くいたそうです。

つまりそういった古い因習の残る町だったのでした。

早いもので、あれから一年経ちました。

しかし、「また、来るからね……」と叫ぶあの声は、まだ私の耳から離れないのです。

[出典:大幽霊屋敷~浜村淳の実話怪談~]

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