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短編 ほんとにあった怖い話

某国で酒を飲んでいた【ゆっくり朗読】

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輸入雑貨の卸をしているSさんから聞いた話

777 :本当にあった怖い名無し:2021/09/04(土) 00:29:24.91 ID:zE+nEMKK0.net

Sさんは自分の知人で、ほぼ実話というか、聞いたとおりの内容です。

触れないほうがいいかとも思ったんですが、Sさんのひととなりを説明すると、
若いころは、あるところの正式な組員になってまして、懲役、刑務所暮らしも経験しています。

今はカタギなんですけど、日本ではカラシ色のスーツに雪駄、金縁眼鏡で、金のブレスをつけてます。

ところが仕事で東南アジアに行ったときには、地味な、どっから見ても現地の貧乏人という格好で、
髪も脂ぎった黒に染めなおして、すっかりまぎれ込んでしまってるんです。

学歴とかはわかりませんが、東南アジアの現地語を数か国語、日常会話程度できます。

自分とはインドネシアで知り合ったんです。

某国でのことです。

午後からSさんは屋台に出かけ、イスでココナッツミルクをアルコールで割ったものを飲んでいると、
通りでドガーンという音がして、ふり向いて見ると、通行人が宙に舞っていました。

せまい通りを無茶なスピードで飛ばしてきた車に轢かれたんですね。

その人は布のアーケドの上で一回バウンドし、さらに地面に落ちて激しく転がり、やっと回転が止まってうつ伏せのままになりました。

血は流れていなかったんですが、ピクリとも動きません。
30代くらいの男でした。

轢き逃げではなく、車は停まって(トヨタだったそうです)小金持ちそうなやつが降りてきましたが、
被害者を介抱するなどのそぶりはまったく見せず、壁にもたれて携帯で話し始めました。
で、動き出したのは屋台村のSさんのそばで飲んでいたやつらです。

倒れている人のところに数人が駆け寄ると、うつぶせのものを仰向けにし、なおかつ一人が上半身を抱き起こし、揺さぶり始めました。

Sさんは、「あちゃー、あんだけ頭打ってるのに動かすなよ」と思いましたが、
そういうときはかかわらないことが最善の選択なので、だまって見ていました。

そしたら、白目を剥いている被害者に平手打ちをするわ、無理やり口をこじ開けて水か酒!を飲ませようとするわで、
「こりゃ、黙ってれば助かるかもしれないものを、こいつらが殺してるよな」と思ったそうです。

ま、現地人は善意でやってたんでしょうけども。

そのうちに派手なマークの入った救急車が来ました。

が、救急隊員が降りてくる前に加害者の男が駆け寄って、運転席に向かって何やら言い、救急車は引き返しちゃったんです。

これは、その救急車はおそらく目撃してた通行人が呼んだもので、私設のというか、大病院に付属してて、契約者しか助けにこないやつ。

つまり有料だし、車体に入ったマークの高級病院に搬送されることになります。

加害者の男はそれを嫌って返したんでしょう。

それから10分ほど見ていても、警察も公営の救急車も到着せず、
その間、被害者はまったく動かず、加害者は見下ろしながら煙草を吸い出しました。

「これはアカンだろうな」さすがに胸が悪くなってきて、Sさんはそこの屋台を離れて、もう一つ奥の通りに入って飲み直しました。

10時頃まで飲んで、そのとき根城にしてたビジネスホテルに戻りました。

安ホテルですが、これは有名な大ホテルであっても、従業員が悪いやつと結託している場合もあるので、危険の度合いはそう変わりません。

Sさんは貧乏旅行者を装って、あらゆることを値切ったりして、悪いやつにマークされないようにしてたんです。

それと、2日か3日かでホテルも変えていました。

さらにベッドの下には知人宅に預けてあった、その国では非常に珍しい(野球をやる人は超希少)ケース入りの金属バットを転がしておきまして。

何かあったらそれでぶん殴ろうというわけです。

鍵をかけた上に、ドアの前に旅行バックを置いて、12時過ぎに寝たんですが、
夜中に目が覚めて、そしたら体が動かなかったそうです。

最初に考えたのは、縛りあげられたとか、クスリを飲まされたってことですが、そのわりには体は痛くない。

薄目が開いて、電気はつけっぱなしにしてたので自分の体が見えましたが、おかしな様子はない。

それで、「これは金縛りというやつか?」と初めて考えがいきました。

それまで経験したことはなかったそうです。

とにかく指先に少しずつ力を入れて、なんとか脱出しようとしていると、足元のほうのクローゼットの中がカタカタいい始めました。

それでも、「幽霊だったら怖くはない。何にもできねえからな」と言ってました。

むしろ、隣の部屋とかから穴を開けて侵入されることを怖れてたそうです。

ま、そのくらいでないと東南アジアを渡り歩くのはできませんが。

やがて、両開きのクローゼットがバーンと開いて、中にはSさんの上着しかかかっていないのが見えました。

扉はバタンバタン、バタンバタン、何度も何度も強く開閉して、Sさんのほうに風が漂ってきたそうです。

生臭い血のニオイがしました。

「あ、もしかしてさっきの事故のやつか。血は出てなかったけどな」と思いましたが、
Sさんには恨まれる心あたりはまったくなかったので、心の中で、「俺は何の関係もねえだろ、車のやつと介抱した野次馬を恨めよ。俺、関係ナシ」こう何度も唱えました。

体はやっと指が動き始め、右手の肘も曲げることができたそうです。

Sさんは「これはもしや、昔の組時代の俺を恨んでるやつかもしれない」

そうも考えたので「ありゃしかたねえことだった。お互い様で恨むのは筋違い」

そのうち、体が動く感じがしたので、「俺を舐めるな、クソ野郎!!」と絶叫してベッドの上に跳ね起きました。

そのとたん、クローゼットの扉がバターンと閉まりました。

Sさんはベッドの下から金属バットを引っ張りだすと、持ったままクローゼットを開けて中を確かめ、
そのときは何もおかしな物は見つからなかったので、
クローゼットの前で、「舐めるんじゃねえ、コノヤロウ!」と叫びながら、何度も何度もバットを振り回したそうです。

そのうちに他の部屋から苦情がいったのか従業員が来まして、
Sさんは着替えてホテルのロビーに行き、そこで朝まで過ごしたということでした。

で、8時ころにチェックアウトしたんですが、そのときクローゼットをしっかり調べると、
一番下の引き出しに、ホコリにくるまった小さな頭蓋骨、たぶんネズミの仔のものがあったそうです。

結局、クローゼットが夜中に開閉した原因はわからずじまいでした。

こういう話を聞かされまして、Sさんは、
「ずっとヤバイ橋を渡って、海外も何度も行って、不可思議なことはこれだけ。やっぱホテルの客か従業員が、何かたくらんでた可能性が一番高いよな」と言ってました。

(了)

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