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短編 山にまつわる怖い話

爺ちゃんと山菜採り【ゆっくり朗読】3010

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俺のじいちゃんは、生前 いわゆる“見える人”だったみたい。

みたいというのも、俺にはそんなのが全くなかったから、本当がどうか分からないから。

でも、大のじいちゃんっ子だった俺はよく二人で出かけてて、何度か不思議な経験をした。

そのうちの、一つの話。

俺がまだ小学生の時のこと。

その日俺とじいちゃんは、近くの山に山菜を採りに行ってた。

この野草は食べられるとか、このふきは美味しいとか、色々教えながら山菜を採ってた。

持ってきていた買い物袋いっぱいに山菜が採れて、帰り始めたのは夕方頃。

山を降りていたら、急にじいちゃんが俺の頭を抑えつけて下を向かせた。

俺が驚いて顔を上げようとしたら、じいちゃんが「動くな!目ば閉じとけ!」って怒鳴ってきた。

じいちゃんはすげえ優しくて怒られたこともなかったから、子供ながらにただごとじゃないってのがわかった。

頭を抑えつけるじいちゃんの手も震えてて、すげえ怖くなって俺もガクブル。

そしたら、山道の下の方から足音が聞こえてきた。

その足音が少し変わってて、靴で歩く音じゃなかった。

ぬちゃっ、ぬちゃっていう、不気味な音だった。

俺は怖くて必死に目を閉じてた。

よく聞いたら、じいちゃんも必死に呟いてた。

「この子はご勘弁下さい。この子はご勘弁下さい……」

まるでお経のようにずっとそう言ってた。

足音は徐々に近付いてきた。

でも、決して止まることなく上の方に消えていった。

足音が完全になくなったあとに目を開けたら、じいちゃんは疲れ切った顔してた。

でも俺の方を見たときには、いつものように優しく微笑んで、「帰るぞ」って一言だけ声をかけた。

結局その足音がなんだったのか、じいちゃんは教えてくれなかった。

ただ、一度じいちゃんが酔っ払ってたとき、口を滑らせたことがある。

「あそこの山に行ったときは肝が冷えた。ただ、そんときは満腹だったんだろう」

それを聞いて、凄まじくゾッとした。

少なくとも、獣か何かじゃないのは分かる。

あんな足音の動物なんていないだろうし。

それ以上は、怖くて聞かなかった。

でももし、その足音の主が空腹だったのなら、俺とじいちゃんはどうなってたんだろう……

886 :本当にあった怖い名無し:2016/04/23(土) 13:05:58.48 ID:eG9coNsf0.net

(了)

[出典:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1456148213/]

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