石じじいの話です。
922 :本当にあった怖い名無し:2019/08/25(日) 23:49:17.03 ID:VFFUuAkN0.net
石さがしの旅で出会った人から聞いた話だそうです。
ある農家の男性の家に泊めてもらったとき、そこの主人はこんな話をしてくれました。
あるところに、目の見えない少年がいました。
笛がとても上手で、いろいろな曲が吹け、また即興もこなしたそうです。
彼には姉がいました。彼女は、とても美人ですぐれた歌い手でした。
その姉弟には親が無く、門付けをして流浪していました。
また、縫い針を仕入れて、それを訪問販売して糊口をしのいでいました。
歌舞音曲の好きな両親だったので、姉には歌や三味線を、弟には笛を習わせたのだそうです。
両親が流行病で死んだ後、借金のかたで家と三味線を取り上げられてしま、故郷を離れてこじき(ママ)となりました。
美人の姉には、養女にしたいという申し出も多くありましたが、
彼女は弟と一緒でなければいやだといい、そのような場合には必ず断られたのです。
ある村の祭りで、すこしお金を稼いだ日の午後、姉は土地の金持ちの家に呼ばれていきました。
そのようなことはしばしばあったのです。
その男の子は、村はずれの神社で待つことになりました。
しかし、夕方になっても姉は帰ってこない。
心細く彼は待ちましたが、姉は夜遅くに帰ってきました。
姉は、美味しいご飯をくれました。
それから、また厳しい流浪の生活が始まったのです。
生活はかなり厳しく、ときには山の中で生活している人々に助けてもらい、彼らとともに生活したこともあったそうです。
ある日、そのような人々と農村を門付けをして歩いているとき、大きな農家の家族から、孤児院(ママ)に入ってはどうか?
そうしたければ我々が世話をしてやるが、とすすめられました。
いっしょに住んでいた流浪の人々も、お前はまだ小さいのだから、それが良いだろう、とすすめます。
めくら(ママ)でも、修行をすれば検校にもなれるのだ、と。
男の子は、お姉さんと一緒じゃなければ嫌だ、と言いはりした。
姉とはなれ離れにはなりたくなかったからです。
そのとき、まわりの人々が言いました。
「おまえ、何を言ってるんだ。お前は一人じゃないか?姉などいないぞ」
男の子は、たいそう混乱して取り乱しましたが、やはり姉はいなかったのです。
彼は失望して、もう人生をあきらめて、孤児院に入ることを承知しました。
「よう、そがいなことをくわしゅうに知っとりんさるのう?」とじじいが尋ねましたら、
「そのめくらの男の子が私の祖父なのです」
彼は、じじいに笛を見せてくれたそうです。