短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

死相の本#1133

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『死相の本』って聞いたことある?

自分は一度、見たことあります。

広辞苑ぐらいの厚さで、果てしなくいろんな人の生前の顔と死後の顔が並んでるだけの本。

右ページに生きていた頃の顔写真、左には死んだ後の顔写真……

どーやってそんな本が作られたのか知りませんが、占い関係のトップシークレット本で、毎日それをめくっていると、人が死ぬ前に顔に出るという『死相』がわかるようになるということでした。

それを見せてくれたのは自分が通っていた塾の先生。

その先生、学校を出て塾の講師のアルバイトを何年かやって、バリ島に白魔術習いに行くといったきり行方知れずです。

1980年初頭、その先生に聞いた話……

仮にその先生をAと呼びます。

Aが大学の頃、その死相の本を手に入れ、毎日眺めて暮らしていたそうです。

授業にも出ずオカルトにはまってたそうですが、山に登るのが好きで、山岳部にだけはちょくちょく顔を出していたとのこと。

で、ある日、冬山に行くことになり駅で待ち合わせ、集合しているメンバー達の顔を見たとき、初めて死相というものがわかったそうです。

当然、Aは皆の顔に死相が出ていると言って必死に止めたのですが、バーカと一笑にふされ、Aを置き去りに4人のメンバーは山へ向かいました。

2~3日して下宿でTVを観ていると、○○大学山岳部遭難というニュースが流れ、その遭難したメンバーの一人として、Aの名も読み上げられたていたということです。

びっくりして大学に電話を入れ、OBとともに捜索隊に参加することになり、いつもその山に登る時にベースにしていた○○市に駆けつけたそうです。

天候不順のため捜索は翌日ということで、手持ち無沙汰になったAは、いつも山から戻った時に馴染みにしていた喫茶店へ行ったそうです。

すると、遭難したはずのメンバーがその喫茶店にいて、なんだ助かったのかあと喜びあっていると、メンバーの一人がそれまで読んでいた新聞をテーブルに置き、

「おまえ、死相が出てるぞ」

とポツリと言ったそうです。

ドキッとしたAは、奥のトイレに駆け込み鏡を見たそうですが、それらしきものは見えません。

で、トイレを出ると、そこにいたはずのメンバー達がいませんでした。

びっくりして、喫茶店のマスターに「みんなはどうしたの?」と尋ねましたが要領を得ず。

マスター曰く、Aが急に入って来て誰もいないのに一人でしゃべり、トイレへ駆け込んだとのこと。

確かにこのテーブルに、と思いテーブルの上にあった新聞に目をやると……

そこには山岳部のメンバー達の遭難記事があり、小さな顔写真が5枚並び、その一番下にあったAの写真以外、ほかのメンバーの顔写真にはすべて死相が出ていたそうです。

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