短編 洒落にならない怖い話

異形のピンクマウス(ヒギョウさま関連)

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ヒギョウ様って話知ってる?

あれって鶏(ひよこ)だけの話なのかな?

爬虫類やらでかい昆虫にロマンを感じるタチだった。

男には割りとわかってもらえるんじゃないかと思う。

実家で暮らしていた頃は家族から苦情が来そうなので控えていたが、一人暮らしを始めることになってからはバイト代で生体を何種か飼う様になった。

特に蛇蜥蜴が好きで餌としてよくピンクマウスも買っていた。

ねずみ好きの人がいたら申し訳ないが、ピンクマウスっていうのは毛の生えてないねずみの生まれたての子供のことだ。

最初のうちは冷凍のものなどを買っていたのだけれど、バイトの身にはなかなか高いものであったし、爬虫類飼いは結構餌用生体の繁殖も同時にしている場合が多いらしく、自分もマウスの繁殖をしようと思い立った。

ねずみ算式なんて言葉もあるし、所詮餌なので住環境にもさほど気を配る必要もない。

大き目の衣装ケースにハムスターの番(つがい)を買って来て餌と水を与えた。

本当はマウスがよかったが、売っていなかったのでハムスターで妥協した結果だ。

簡単に増えたよ。

共食いや近親交配は日常茶飯事だったけどあまり気にしてなかったしね。

餌は野菜くずなんかを適当に放り込んでおくだけだったし、金も手間もかからないいい餌だった。

『チーチー、ガサガサ』

いつもなにかしら音がしているハムスターの繁殖箱だったけれど、ある日の昼飯時。
(飯を食おうとコンロの前に立っていたのだからおよそ十二時と思う)

『ギーギー!!』って、激しいねずみの悲鳴みたいなもんが聞こえてびっくりした。

何事かと覗き込むと、産まれたてのピンクマウスが一匹だけもそもそ、おがくずの中を這っていた。

一度に何匹もの子供を産むハムスターなのに一匹だけ産まれた?

他のは成体に食われてそのときの声がさっきの?

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なんとはなしに、一匹だけ床材に埋もれてるのをピンセットでつまみ出してみたら、変だった。

マズルというのだろうか、口が出っ張っておらずまったくの平面で人間みたいな唇のついた口で、その口からボイスチェンジャーにかけたみたいというか、昔テレビのUFO特集でみた宇宙人の声みたいというか、とにかく奇妙に甲高い声で

『ぉあああぁぉ……ぁぁぁぉあ』

みたいな変な声がしてた。

あまりにも気持ち悪くて、ピンセットを掴んでいる指に無意識に力を入れてしまったらしく、そのピンクのうねうねは

『ぁ』

って言ったっきり、動かなくなってしまった。

もう見るのも嫌で、ビニール袋に突っ込んでアパートのゴミ捨て場に即捨てにいったよ。

それが数ヶ月前の話。

近親交配も盛んだったし、奇形が生まれるのも不思議ではなかったかもしれないけど、なんだか妙に気になっていた。

それでヒギョウ様の話を知って不安になっているところなんだ。

なにか特別な供養が必要だったのではないかって。

ハムスターの繁殖はもうやめたよ……

(了)

[出典:http://toro.open2ch.net/test/read.cgi/occult/1396473868]

 

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