ネットで有名な怖い話・都市伝説・不思議な話 ランキング

怖いお話.net【厳選まとめ】

短編 r+ 洒落にならない怖い話

あの女 r+5231

更新日:

Sponsord Link

正夢や予知夢のような不思議な夢を、よく見る人がいる。実際、私もその一人だ。

昔から、そういう種類の夢に限って、やけに気になってしまう。何というか、妙にリアルで、生々しい感触が残るのだ。

たとえば、今年、歯がボロボロに崩れ落ちる夢を何度も見た。血の味や肉の感触があまりにも現実的で、気になったから夢占いを調べてみたら、「近親者が亡くなる」という暗示だと書かれていた。

その後、姉が亡くなる夢を見てしまった。夢の中で、あまりのリアルさに泣きながら目を覚ました。それも調べてみると、「夢で死んだ人の近親者が亡くなる」という予知夢だとされている。歯の夢のこともあって、何かが起こるのではと心がざわついた。そしてその後、祖母が亡くなった。

さらに、3月には友人が亡くなる夢を見た。これも泣きながら目覚めたものだ。まさかと思いつつ過ごしていたら、先月、その友人と会う予定だった日に連絡が入り、「おばあさんが亡くなった」と言われた。夢占いの暗示が現実になっていくようで、奇妙な気分だった。

他にも、夢で忘れていた探し物の場所を見つけ、次の日、母がそれを本当に発見したことがある。あるいは、黒猫がなついてくる夢を見た翌日に、家の前で黒猫が死んでいたこともあった。

こうした不思議な夢をたくさん見てきたが、大学に入ってからは「多重夢」と呼ばれるものを見る機会が増えた。夢の中でさらに夢を見ている――そんな感覚だ。ここでは、その多重夢のひとつについて話したい。


夢の中で、私はどこかにかかる長い橋を走っていた。橋が直線状にいくつも連なり、そのどれもが果てしなく続いている。何かから逃げていることを知りつつ、これは夢だと理解していた。

最初の橋を渡り終えると、また次の橋が現れた。そこで、木の板に書かれた看板を見つける。そこにはこう書いてあった。

「死なないと渡れません。突き刺し」

その瞬間、背後から何者かに木の棒のようなもので刺された。お腹から噴き出す血。その鉄臭い匂いと、痛みが生々しく、これは夢だと思いながらも、どうしようもなく苦しかった。「早く目を覚まさないと……!」と必死に願う中、ふっと目が覚めた。

安堵する間もなく、自分がまた橋の上を走っていることに気づいた。そして、やはり背後には何かが追ってくる。

次の橋にも同じように看板があった。

「死なないと渡れません。操り人形」

気味の悪い文字列に戸惑っていると、いつの間にか体に無数の糸が絡みついていた。指が勝手に動き、やがてその糸によって操られながら、指や腕、脚が次々と切り離され、最後には頭が落ちた。

そこでまた目が覚めた――はずだった。だが、再び橋の上で走っている自分に気づく。同じ繰り返しだ。次の橋では、また看板が現れる。

「死なないと渡れません。繰り抜き」

背後から聞こえてきたのは、か細い女の声。「返してー」と悲痛な響きで訴えている。その声に背後を振り向くと、目のない女がスプーンを持って立っていた。

女の「返してー」という言葉に恐怖を覚え、逃げ出そうとするも、逃げられない。スプーンを振り上げた女が迫ってきたその瞬間、妙な感覚が胸を刺した。

「この女を知っている」

目がなくても、その姿も声も明らかに自分のものだった。

そして気づいた。何度も何度も殺されていたのは、自分自身。だが、殺していたのもまた自分だった。


目が覚めた後も、あの夢の感触が消えない。あの女は私だった。では、私を殺していた私は一体何者だったのか? そして「返して」と訴えていたその声は、何を取り戻したかったのか――。

この夢と関係があるのかは分からないが、翌日から私の目に炎症が起き、眼帯をする羽目になっている。関係ない、よな……?

(了)

Sponsored Link

Sponsored Link

-短編, r+, 洒落にならない怖い話

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2025 All Rights Reserved.