中編 怪談 洒落にならない怖い話

靴を揃えない、便器の底から泡が出てくる

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俺が大学生の時に体験した怖い話をする

3 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2016/08/31(水) 10:46:14.98 ID:rz1ESM+h0.net

大学の友達の家での話。

何度も遊びに行ってて、気にもしていなかったけど、そいつの家では、ある不思議な事があった。

玄関に上がる際に「靴を揃えない」という決まりと、俺がそいつの家のトイレに入ると、便器の底から泡が出てくる事。

泡は、でかいのが一発の時もあれば、小さいのが連続の時もあった。

靴を揃えない決まりというのも、俺がそいつの家に初めて行った時に、「あ、一応靴は揃えないでおいて」と言われたから、勝手に俺がそう思っていただけなんだが。

4 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2016/08/31(水) 10:47:54.61 ID:rz1ESM+h0.net

ある時、間違って靴を揃えてしまった時があるんだけど、玄関から靴が消えていて、その友人が「あ、靴揃えた?ごめんごめん。ちょっと待ってて」と言って、二階から靴を持ってきた事があった。

そいつの部屋一階だし、そいつが上に持って行ったわけじゃ無いと思う。

可能性があるとしたらそいつの母親なんだけど、いい人だし、何となく聞けなかった。

普段屈託なく笑うそいつも、若干苦笑いしてて、不思議に思っていたんだけど、何かがあるわけでもなかったし、次の日も暇だったので、そいつの家に行った。

普段通り、ゲームなんかして遊んでて、何となく尿意を催してトイレに行ったら、いつもより出てくる泡の量が多かった。

最初泡が出てきた時から、排水溝に空気でも溜まってて、それがトイレに入った振動で出てきてんだろうと、俺は思っていた。

その時のも、たまたま量が多いだけなんだと、思った。

それからなんとなく、そいつが靴を揃えないようにと、俺に促す事が多くなってきた。

5 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2016/08/31(水) 10:52:01.76 ID:rz1ESM+h0.net

玄関に入る前と、靴を脱ぐ前という風に、俺ができるだけ間違えないようにしているような気がした。

親が宗教関係の人なのかなと少し怖くなって、ずっと気を付けていたんだけど、大学二年生になったある日、また靴を無意識に揃えてしまったらしく、玄関から靴が消えていた。

6 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2016/08/31(水) 10:52:50.63 ID:rz1ESM+h0.net

俺がやべえと思った矢先、友達も「まじか・・・どうすっかな・・・ちょっと待ってて」と言って、二階から靴を取ってきた。

その時の俺の靴は両方とも、絞った雑巾と同じくらい捻じれていた。

俺の靴は合成皮革で作られた、割と丈夫な靴だったので、機械で絞るくらいしないとそうはならない。

10 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2016/08/31(水) 11:08:21.18 ID:rz1ESM+h0.net

靴がおかしな事になった事に関して、俺はショックより恐怖の方がでかくて、正直脂汗が半端じゃなかった。

焦っている俺に友達は「まじごめん・・・弁償するから・・・。ちょっと外で話そう」と言った。

そいつの事も少し怖かったが、家から一刻も早く離れたかったから、そいつの言う通りに移動して、近所の公園で飲み物を飲みながら話を聞いた。

11 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2016/08/31(水) 11:09:55.90 ID:rz1ESM+h0.net

「信じてもらえるか分からないけど、あれやったのはウチの親じゃないんだよ」という話だった。

あれは、なる人とならない人が居て、今のところ家族はなっておらず、被害者数は、独立している兄の知り合いを含めると、今までに五~六人が同じような事になったらしい。

初めて靴の雑巾絞りが起きたのは、小学生の友達を家に呼んだ時で、その時はその子の親がイジメだと思って、怒鳴り込んできたらしい。

でも、両親とも何の事かわからず、その時はとりあえず弁償して事なきを得た。

被害にあった奴は、ことごとく家に来なくなった。

何度もお払いの人を呼んだらしいが、特に何もないと言われ、本当に原因は分からないとの事だ。

ちなみに消えた靴は、大抵ベランダに置いてあるとも言った。

12 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2016/08/31(水) 11:13:06.26 ID:rz1ESM+h0.net

それで仲が悪くなったわけではないが、それから三年生に上がってからも、そいつと遊ぶ時は外だった。

被害にあった他の友達同様、俺もそいつの家に入る事はもうないと思っていたが、冬にそいつとスケボーをしていた時、土砂降りの雨が降ってきて、真冬にパンツの中まで濡れた。

俺もそいつも寒すぎて体調的にやばくなりそうだったので、意を決してそいつの家に行った。

もちろん靴の事は忘れていなかったので、外でスケボー用シューズを脱いで入った。

13 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2016/08/31(水) 11:16:04.90 ID:rz1ESM+h0.net

暖を取り、落ち着いてきたあたりで、トイレに行きたくなった。

友達に伝えてトイレに入ると、便器がこれでもかというくらい泡立っていて、泡のはじける音と一緒に「ぉぅぇぅぅぅぃあ」「ぉゃぅぅぅぅぃあ」と、声みたいなものも聞こえた。

雑巾の記憶が強すぎて、泡の事など忘れていた俺は、ビビりすぎて漏らしそうになって、勝手にそいつの家の風呂場で用を足した。

風呂場から戻る時はトイレの前を通るんだけど、その時にはトイレは収まっていた。

14 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2016/08/31(水) 11:18:08.51 ID:rz1ESM+h0.net

謝る事も込みで、その話をそいつにした。

しかし、信じてはくれるけど、どうやらトイレの泡の事は知らなかったらしい。

そいつも怖くなったのか、トイレに行けないと言い出した。

しかもいつの間にか雨が大雪に変わっていて、電車も車も止まって帰れなくなった。

失礼な話だが、正直そいつの家に居るのが嫌すぎて、歩いて帰ろうかなとも考えたが、マジで無理だと気づき、やめた。

そいつの家の車・・・と考えたところで、そいつの両親から「帰れないので会社に泊まる」と連絡が来た。

で、結局二人で泊る事に決定。

泣きそうだった俺を心配して友達が「食塩でも盛り塩って出来んのかな」と言い出し、リビングから瓶詰の塩を持ってきて、醤油用の小皿に盛り始めた。

15 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2016/08/31(水) 11:20:30.20 ID:rz1ESM+h0.net

完成した中途半端な盛り食塩は、玄関、トイレ、そいつの部屋の入口に二つずつ、計六つ置かれた。

置き方はスマホで調べた。

気休めだったが、馬鹿な俺はなんとなく安心して、夕方くらいに寝た。

で、夜中に起きた。

寝ぼけている暇もなく、俺は恐怖で目が冴え、すぐ横で寝ている友達を起こした。

友達は寝たばかりのようで眠そうだったが、俺の事を思い出したのかすぐ起きた。

「なんかあった!?」と言われ、俺が否定すると安心したのか、良かったと言ってくれた。

ほんと良い奴だと思う。

で、そいつは「デカい方してくる」と言って、そのままトイレに行ったんだが、数秒後、ダッシュで戻ってきて扉を思いっきり閉めた。

16 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2016/08/31(水) 11:23:29.32 ID:rz1ESM+h0.net

俺は、走ってきた音と扉が開いた瞬間、心臓が止まりそうになったが、ぎりぎり耐えた。

話を聞くと、外で叫んでいる奴がいるとの事。

俺たちは、夕方寝た時からつけっぱなしだったテレビを消し、耳を凝らすと、

「やああああいああああっあ!!!!!」

「やあああああいだあああああ!!」

もう一度心臓が止まりかけた。

俺はそいつの声を聞いた事があった。

トイレの中から聞こえた声のイントネーションに限りなく近かった。

怖い事が続き、我慢出来なくなった俺は、泣いて友達に「死にたくない、助けて」と言った。

友達も「まじかよぉ・・・」と泣きそうだった。

17 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2016/08/31(水) 11:29:28.78 ID:rz1ESM+h0.net

その時は一生、出れないんじゃないかと思った。

で、俺も友達も気づいたら朝だった。

どうやら寝たらしい、というか、恐怖で気絶したんじゃないかと思っている。

で、その時には声も止み、雪もそこそこ溶け、そいつの母親が帰ってきた少し後に、すんすん泣きそうになりながら「お邪魔しました」と言って、遂に家を出た。

友達は「これから遊ぶ時は、お前んちの近くにしよう」と、若干泣きそうだった。

玄関を出たところで、雪に埋もれたであろう俺の靴を探したが、見つからない。

あいつの影が脳裏を掠めて、悪寒が走った。

たぶん夜に外で叫んでいたあいつは、また俺の靴に何かしたのだろうと思った。

18 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2016/08/31(水) 11:34:16.67 ID:rz1ESM+h0.net

友達は慌ててベランダに走ったが、「無いよ」と言った。

見つからないのも怖いので、少し辺りを捜し、やっと見つけ出した。

それは、丸い氷の塊に包まれた、二つの布とゴムのスクラップボールだった。

俺の固いスケボー用シューズは、雑巾絞りの時よりも強い力で、雪と一緒に、子供用野球ボールくらいの大きさに固められていた。

それで本当に帰り始める際、その塊は、向こうでお払いに持って行ってみるという事で、預けた。

家までは、そいつとそいつの母親が車に乗せてくれた。

途中何度か吐きそうだったけど、なんとか家に帰った。

礼を言って別れ、自分の部屋のベッドに横たわると、ほとんど眠っていたはずなのに、疲れ果てて自室で寝た。

夜に起きて、昼夜逆転かなとか思っていたら、そいつから電話がかかってきた。

「ああ、もう落ち着いた?何もない?」と言われ、大丈夫だよと返したら「そっか、ならよかった。あ・・・」と途中で言葉を切った。

19 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2016/08/31(水) 11:37:50.30 ID:rz1ESM+h0.net

それからしばらく経って、そいつとウチの近くで遊んでいる時に、その時の話になった。

怖かったなーなんて話をするくらい、俺が回復したのを見てか、そいつが言った。

「今更になって言うんだけど、というか、すぐには言えなくて黙ってたんだけど、あの時、靴ボールが、透明な何かで固まってたじゃん?あれ、盛り塩に使った塩の塊だった」

(了)

怖い本(1) [ 平山夢明 ]

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