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短編 洒落にならない怖い話

鬼爺婆

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俺が小学六年の頃、両親が離婚した。

そこから高校生までは親父と祖父母、そして親父が再婚した義母と暮らしていて十五歳下の異母兄妹が出来た。

高二の時、大嫌いだった親父の元を離れて母親に引き取られた。

親父がいない時、たまに祖父母に顔見せに行っていて十八歳下の異母兄弟が出来たのを知った。

そのうち祖父が認知症になって亡くなり、間もなく祖母も認知症になってしまった。

それから十年近く親父に会うこともなかった。

そして数年前、俺が一人暮らしをしているアパートに突然義母が訪ねてきた。

正直驚いた。

同じ市内に住んでいるのだから居場所なんか調べればすぐわかると思うが、今さら俺に何の用があるのか。

玄関先で何かとたずねると義母は助けて欲しいと言う。

金かと思ったが親父は会社の社長だ。俺なんかより金に困る事などないはずだ。

仕方ないと思いながら部屋に上げ話を聞くと、俺に申し訳ないだの親父の代わりに謝りたいだの言い出した。

両親の離婚の原因は親父の浮気で、相手は再婚した義母だった。しかし俺は義母を恨んでもないしどうでも良かった。むしろ古傷に触られる様でイライラした。

「それだけなら帰ってもらえますか?」

もう聞きたくなかった俺は義母にそう言った。

すると義母は泣きそうな顔で妹と弟を助けてほしいと言う。

意味が分からない。臓器提供か何かかと聞いたが違った。

義母から聞いた話をまとめると、祖母が亡くなってから家に祖父母の霊が出るようになった。

最初は月に一度あるかないか程度で、恐ろしかったが何かしてくるわけでもなく放置していた。

しかし、月日がたつごとに現れる頻度が多くなり祖父母の形相も変わって来た。

無表情だった顔は般若の様に歪み、普通だった服もいつの間にか死装束になった。

お寺に供養をお願いしたが全く効果がなかった。

そして数ヶ月前、寝ている弟が泣き出したので様子を見に行くと、今度は妹の部屋から苦しそうにうめく声が聞こえた。

あわてて部屋に入ると、もう人か獣か分からないまでに変ぼうしたそれが妹の首を絞めていたそうだ。

義母が必死に引き剥がそうとすると消えた。

親父にも話したが視えない親父に「馬鹿な事を」と一蹴された。

それ以降、霊は妹と弟が寝ている時に近くに出るようになってしまった。

そしてもうひとつ、弟の落書き帳を何気なく見ていた義母はあるページに俺の名前が書いてあるのを見つけた。

弟は俺のことを知らない。

まあまあ珍しい名前なので偶然書いたとは考えにくいし、弟が赤ん坊の時に新築の家を建て引っ越したので俺の名前が書いてある物も家にない。

弟に聞くと、夜中に誰かがこの名前をつぶやくらしい。

「おまえは蔵人(俺の名前)じゃない。蔵人はどこだ」と。

このままでは子供が殺されると思った義母は俺の住所を調べて来たのだった。

一度、家に来てくれと泣きつく義母の頼みを俺は断った。それは親父に会いたくないから。

すぐ殴る傲慢で嫌味な、しかし外面だけは良い親父は成人するまでいつか殺してやろうと思う程嫌いだったからだ。

しかし、妹や弟に罪はない。

「墓参りには行きますよ」

そういってお墓の場所と連絡先を聞いて義母に帰ってもらった。

次の休みに祖父母の墓にお参りに行った。

俺の母親とは折り合いが悪く、親父とも仲が悪かった祖父母だったが、初孫の俺は可愛がってくれた優しいじいちゃんとばあちゃんだった。

線香をあげ手を併せると涙が出た。

帰ろうと水をくんだ桶や柄杓を片付けていると、目の前で線香がボキッと折れた。

風のせいと思ったが嫌な感じがして、俺の顔は青ざめていたのかも知れない。

お寺に借りた桶を返しに行くと、お寺のお坊さんが、どこのお参りですか?と声を掛けてきた。

名前を聞くと、ちょっと上がってお茶でも飲んで行きなさいと言われ、さっきの線香の事もあったので素直にいただく事にした。

お茶を飲みながら色々聞かれた。

義母が何度か供養を頼んだので、お坊さんも気にかけていたらしい。

俺は義母に聞いた事をそのまま話した。お坊さんは否定も肯定もせず、そうでしたかと言って帰りにお守りをひとつくれた。義母に電話して墓参りに行ったとだけ伝えた。

その夜、夢に祖父母が出てきた。

襤褸の白い着物を着て乱れた白髪、目はらんらんとし、口は大きく裂けるその姿はまるで鬼だった。

俺は子供で、どこかに隠れていて、祖父母は俺を探している様だった。そのうち、どこからか

「見つけた……」

「違う……」

「死ね……死ね……」

と言う低い声と子供の泣き声が聞こえて来て目が覚めた。

汗で体が冷え、震えが止まらなかった。

翌日仕事を休み、坊さんになった同級生に連絡して会うと全部話した。

そいつは霊感持ちで、高野山からスカウトされて坊さんになったという奴だった。

彼は黙って聞いて、話が終わるとぽつりぽつりと言った。

祖父母は俺の事が可愛くて仕方がなく、もう会えないのが心残りのまま亡くなったんだろう。それは霊になった後も続いてだんだん心残りが怨みに変わり狂っていったのかも。

異母姉弟が死ねば、跡取りの俺が帰ってくると思ってるのかも知れないが、もうまともな理屈も思考も出来ないからただ祟るだけの鬼になったんだと思うと。

俺はどうしたらいいんだ?と聞くと

「おまえは大丈夫。血は繋がってるが母親の家系に入った時から母方の先祖に守られているから。でも妹と弟は知らん」

それは……と言うと彼はちょっと黙ってこう言った。

「なぁ……触らぬ神に祟りなしって言うだろ?」

俺が黙ると、彼は気休めかも知れないが経を上げておくと言ってくれた。

その後、仕事の都合で引っ越した俺に変わった事はなく義母と連絡も取っていない。

(了)

[出典:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1401894692/]

 

怪談社(終の章) [ 伊計翼 ]

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