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『鏡越し』つまみ枝豆の恐怖体験

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10年くらい前。ある仕事で北陸の方に行きました。

その仕事というのは、テレビではなく営業で、ある大手メーカーの工場の休みの日のイベントでMC(司会)をするという仕事。

イベントはその会社の従業員や、その家族が楽しむ日で、モノマネの人が来たりしている。

工場は駅から車で3、40分行った所。工場が休みだったので、控え室替わりに、工場長の部屋に案内された。

「後で打ち合わせに来ますからゆっくりしていて下さい。何かあったらこの子に申し付けて下さい」

と担当の人に言われ、入り口の外に、若い男の子が残ってくれた。

その部屋でお弁当を食べて、まだ時間があるからトイレに行こうと思ってドアを開けた。

残ってくれていた男の子がいたので「トイレに」と言ったら

「じゃあご案内します」と言われ、フッと左の方を見るとすぐ部屋の隣にWCと書いてある文字が見えた。

「ここトイレだよねえ?」

「そうですけど、向こうに綺麗なトイレがありますからご案内します」

「小だからここでいいよ。使えない事ないよねえ?」

「たぶん使えると思いますけど。」

トイレに入るとちょっとタイルが白っちゃけていて古く、使っていないのかなと思いつつ一番手前の小用の便器で用を足した。

用を足している時に、人の気配を感じ、なんか人がいるように見えたので目線をちょっと横にずらすと、4つある小の便器の一番端に男の人が立っているのが見えた。

白いシャツに青いズボン。

いるわけないなあ、これは人じゃないと思って、用を足したらすぐに水を流し、便器から離れ、後ろを振り返ったらその人はいませんでした。

「あれー気のせいかな、気持ち悪いな」

と思って洗面台で水を出して手を洗っている時にパッと前の鏡を見ると、鏡越しに一番端の便器が見えた。

そこにさっきの男が写っていた。

「うわあ、いる!」

水道を止め急いで外に出た。

バタンとドアを閉めたら、さっきの案内役の男の子が待っていて、

「どうしました?」

「あのさー。だれか入った?」

「いや、入りませんよ。工場休みですし、僕ここにいましたので」

「中に人がいるんだよ。」

「やめて下さいよ。僕ここにいましたから」

「小用便器のとこに男がいたんだよ。見て」

男の子はおそるおそるドアを開けた。

「いませんでしたよ。やめて下さいよ」

「確かにいたんだよ。洗面台の鏡越しに霊が写る事があるから見て」

男の子は、いやいや部屋に入るやいなや、バタバタバタっと急いで戻ってきて言った。

「枝豆さん。あそこ、鏡、無いんですけど……」

(了)

 

恐怖箱叫怪 [ 神沼三平太 ]

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