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短編 ほんとにあった怖い話

寂れた旅館の点検【ゆっくり朗読】

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電気保安協会で働いてたときの話なんだけど。

280 :本当にあった怖い名無し:2019/01/27(日) 19:11:10.95 ID:GJPUhvYf0.net

一般家庭(低圧の電気設備)の点検で山の中にある寂れた旅館にいったんだ。
その旅館に付いたのが16時ちょい過ぎで時間的にも最後のお客さんで終わったら引き上げようと思ってた。
そのときの季節は夏だったんだけど山の中ってこともあってあたりは薄暗かった。
訪ねると女将らしき人が出てきてくれたので業務内容を説明して了解を得て点検を始めた。
その旅館は結構広くて女将に配電盤の場所を訊ねたんだけど女将は設備に疎いらしく分からないという答えが返ってきた。
当然、私も広すぎて分からないのでまず外に付いてる電気メーターのところで漏電を測定する事にした。
電気メーターを探して外を歩いてたら旅館は二つに別れてるのが分かった所謂、別館ってやつ。

電気メーターを見つけるのも一苦労でやっとのことでメーターを見つけた。
メーターは別館の壁に付いていた。
壁に付いてると言ってもぱっと見は分からなくて扉を開けると見える感じ。
その扉を開けた時だね、サーッと冷たい風が吹いた。
なんとなくイヤだなぁと思ってさっさと漏電の測定だけして戻ろうと考えてた。
漏電の測定をやってみたら電灯回路は異常なかったけど動力回路は漏電しているみたいだった。
扉を閉めて本館の方に戻ろうと別館を背にしたとき目線?と言っていいのだろうかなんか見られてる感じがして振り返った。

振り返った先には特に何かが居るわけではなかった。
ただ別館をよく見てみるとガラスが割れたり壁が剥がれてるのを確認できた。
正直使用している感じではなかった。
小走りで本館に戻って女将に動力回路が漏電しているからやはり配電盤を見る必要がある事を伝えた。
先の回答通り配電盤の場所は分からないとの事だった。
漏電の測定値が非常に大きかったので最悪、火災の可能性があると判断した私は女将に旅館内を回って配電盤を探してもいいですかと訊ねた。
すると女将は「いいですよ。でも、別館の方には行かないで下さいね。」との回答が返ってきた。

旅館は誰一人として客が居ないから廊下に灯りもついてなくて時間も時間だしかなり暗かった。
配電盤を探して旅館内を彷徨っていると大きな扉があった。
開けてみるとそこは本館と別館を繋ぐ渡り廊下だった。
渡り廊下をちょっと進とまた大きな扉……と言うか磁石でくっ付く仕切りがあってその仕切りは南京錠2つで強固に閉ざされてた。
仕切りは微妙に隙間が開いていて冷たい風がこちらに吹いているのが分かった。
私は配電盤がないのを確認したので戻ることにした。

女将が言っていた別館の方には行かないでとうこともあり早めに立ち去ろうと別館に背を向けたとき、先ほどの目線?視線?を感じた。
私はすぐに渡り廊下を出た。

情けない話しだけど、その時の私はもう怖くて祈るような気持ちで配電盤を探してた。
結局、動力回路の配電盤は本館の地下に行くための階段を降りた先にあった。
そこも薄暗くて怖かったけどもう勝手に電気つけて点検する事にした。
とにかく明るくしないとやばいと思ってた。
配電盤の点検の結果、動力回路の漏電箇所は別館動力(回路名)だと判明した。
この別館動力回路は別館に動力用の電気を送ってる回路なので当然別館にも配電盤があるのだ。
つまり別館に有るであろう動力配電盤を点検しなければならない。
私は女将に別館の配電盤が漏電しているので見せていただけないかと交渉した。

女将は「別館には配電盤はありませんし、私にはわかりません。」と言うなんともよく分からない答えが返ってきた。
女将は明らかに別館に行きたくない様子だった。
正直私も行きたくないけど火災になったら嫌だったので危険性を説明してなんとか見せていただけないかと交渉していると
「別館のことは主人じゃないと分からない」という答えに変わった。
そんな問答をしていると女将の旦那さんが返ってきた。
私は今の状況を説明した。
すると旦那さんは「別館に配電盤はあるが別館には入れたくない」とのことだった。
女将さんと同様に旦那さんも別館に行きたくない様子だった。

行きたくない理由なんて聞けないし聞きたくもなかった。
私は
「忙しいのであれば私がひとりで行きますから大まかな場所だけ教えていただけませんか?」と訊ねた。
すると女将と旦那さんから「1人ではダメだと」強い口調で返された。
次に旦那さんはこう切り出した。
「向こうは出るんだ。だからダメなんだ。」
何がでるのかは聞けなかった。

仕事モードの私は「出ても大丈夫です。」という意味不明の回答をしていた。
すると旦那さんは「それなら私と行こう」といった。
私は旦那さんと一緒に本館と別館を繋ぐ渡り廊下に行った。
本館と別館を分ける仕切りの南京錠を外す前に旦那さんから別館は老朽化が進んでいるので足元に気をつけることと何を見ても驚かないこについて念を押された。
いよいよ南京錠を外して仕切りを明けた時です、ものすごく冷たい空気が私に降りかかった。
明らかに別館は空気が違った。

別館をライトで照らすと、あたりは廃墟同然で昔使っていたと思われる椅子やテーブルがそこら中に転がっていた。
旦那さんは汚い物を見せて申し訳ないと引きつった笑顔で言っていた。
また長居はしたくないから速めに行く、足元に気を付けてと私に言った。

別館に踏み入れてからは終始誰かに見られている感じがあった。
私は何か喋らないといけないと思って旦那さんと何かを喋ったが、あまりに怖くて内容は覚えていない。

別館の奥にある小さな部屋までやってきた。
部屋の入口には壊れたドアと陥没した床があった。
ここだと旦那さんが私に言った。
最初に旦那さんが部屋に入りその後、私も陥没した床を飛び越えてその部屋に入った。
入ると右側から視線を感じたため右側を見るとそこには女性の日本人形がかざってあった。
その人形は私をじーっと見ていた。
凄まじい視線を感じてここにはもういられないと思った。
私はすぐさま配電盤の蓋を開けてブレーカーに測定器を当てようとしたのだが手がふるえて思うようにできない。
私は「手間取ってすいません」と旦那さんを見ながらいった。
その時の旦那さんの顔はこわばり体はびっしりと汗を書いていた。
旦那さんはポロシャツ一枚みたいで上半身が透けて見えるほど汗をかいていた。

私は震える手で、なんとかブレーカーに測定器を当てて漏電している回路を探し出した。
私はこの3番目の回路が漏電しているのでなおしてくださいと震える声で旦那さんに伝えた。
旦那さんは「分かった、戻ろう」と言って私を先に部屋からだしてくれた。
部屋から出てもなお凄まじい視線を感じる。
明らかに近くに何かがいる。
旦那さんも部屋から出てきて早く戻ろうと私に言った。
私は頷いてもと来た道を戻った。

戻る最中も後ろにぴたっと何かがいる気配を感じていた。私は振り返って「それ」を見たら死んでしまうと思った。
来た道を進んでやっと渡り廊下まで戻ってきた。
旦那さんが本館と別館の仕切りを閉めて南京錠を2つかける音がした。
私はまだ振り返れないでいた。いまだに視線を感じていたのだ。
大きな扉を開けて渡り廊下から出た。
視線は感じなくなっていた。
会社から支給された携帯で時刻を確認すると18時28分だった。

戻ると女将が「大丈夫でしたか?何もありませんでしたか?」と心配そうに聞いてきた。
私は「何もありませんでした。でもやっぱり漏電はしてました。」と謎の受け答えをした。
すると女将は「良かったです」と何かを察したかのように答えた。
私も旦那さんと同様にものすごく汗をかいていた。
私はその後、漏電箇所改修依頼の書類を書いて判子をもらって電気屋さんに直してもらって下さいねとの趣旨を旦那さんと女将に伝えて帰った。
帰り際に女将と旦那さんから「ご苦労さま」と言ってポカリスエットをもらった。
ありがとうございます。お手数おかけしました。と伝えて帰路についた。
帰路についた私だが全く気分が晴れない。
落ち込んだ気分のまま自宅に到着した。

私は家に入れないでいた。
テレビ番組などでよく見る曰く付きの場所に行ったら「つれてきてしまう」というのが頭をよぎっていたのだ。
恥ずかしながら当時結婚していない私は実家にすんでいたので母に「今日はやばい所に行ってきた」と伝えた。
すると母が玄関から塩を持って出てきた。
私の母は直接そういったモノがみえる訳ではないのだが人より第六感が優れている方なので察してくれたんだと思う。
母は私と車に塩をまいてくれた。
私は安心して家に入った。
母はまず仏壇に手をあわせてこい、と私に言った。

私が仏壇に手を合わせ終わると「数珠はちゃんと持って行ったか?」と聞いてきた。
実は私が就職したときに危険な仕事というわけで、なぜか数珠を持たせてくれたのだ。
私はいつもそれを持ち歩いていた。
それが守ってくれたのだと私は思った。

4ヶ月後に旅館の女将から漏電箇所についての電話がきた。
この業務は漏電を発見すると、3~4ヶ月後に再度様子を確認しに行かなければならない。
私はまたあの旅館に行くことになるかと思いきや担当が外れて、私は行かなくていいことになった!

私は女将に担当が変わったから違う者が行くとのことと分かるように引き継ぎをしておくとの事を伝えた。
女将は同じ人は来ない方がいいと言っていた。私はその意味を理解しないように笑って流した。

ここからは担当(ここではAさんとする)が変わったのでAさんから聞いた話だが
Aさんが改修の様子を確認しに電気屋さんとあの部屋に行ったそうなんだが昼間でも薄暗くてかなり気持ち悪かったそうだ。
Aさんと電気屋さんも視線を感じたらしく電気屋さんはあんな場所には二度と行きたくないと言っていたそうな。

この話をAさんから聞いてやっぱあそこには何かがいるんだと思った。

私が体験した山奥の旅館の話。

終わり。

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